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彼岸過迄
著者 夏目漱石著
いくつかの短篇を連ねることで一篇の長篇を構成するという漱石年来の方法を具体化した作.その中心をなすのは須永と千代子の物語だが,ライヴァルの高木に対する須永の嫉妬を漱石は比類ない深さにまで掘り下げることに成功している.この激しい情念こそは漱石文学にとっての新しい課題であった. (解説・注 石崎 等)
彼岸過迄
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2020/10/03 15:56
彼岸過迄
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
夏目漱石は短編を集めて一つの長編のようにできないかと考えて、この作品を書いたという。実際、いくつかの章は独立して出版されたこともあるらしい。
この作品は占いで言われたお告げがステッキであることに気づく場面や、「停留所」で松本が来る停留所を当てる際にステッキを倒して、それが倒れた方の停留所にいくという趣向に無理があると思われたのか、低い評価もあるようだ。
就職を拒否しながらも、結構な暮らしをする様子は『それから』の代助に似ているし、ズバズバといく女と煮えきらず悩む男という構図は『三四郎』などにも似ている。しかしそれらの作品と決定的に違うのは、須永は母とつながりがあるのか、という問題である。父が亡くなった今、唯一自分と関わりがあるのは母だけなのだが、その母が実の母か分からないという孤独感にさいなまれる須永の様子はなんとも言えない。