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2件
漱石書簡集
著者 三好行雄編
漱石の手紙を読むとこの類まれな人物のあらゆる心の動きがその温もりとともに伝わって来るように感ずる.全集版におさめられた二二五六通の手紙から友人の正岡子規,妻の鏡子,弟子の寺田寅彦・小宮豊隆などに宛てた一五八通を選んで注解を付した.漱石を知るための基本資料であるばかりか,それ自身が見事な作品である.
漱石書簡集
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漱石書簡集
2002/07/27 14:58
誠実な思いと真摯な言葉
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:呑如来 - この投稿者のレビュー一覧を見る
漱石ほど真摯に人と人との関係や国の将来を考えている小説家は現在の日本ではどこにも見当たらない。一般人の間でも"癒し"がブームになって以来、「ダメな自分もそのままでいいんだ」という妙な開き直りが横行してしまい、自分自身を客観的に分析し、悪いところは改善していこうとする克己心すら失われているようだ。
そんなとき、漱石の残した言葉を読むと、本当の意味での優しさとにふっと手を触れられたような感じがして、心が洗われる。
気に入らない事、癪に触る事、憤慨すべき事は塵芥のごとく沢山あります。
それを清めることは人間の力で出来ません。それと戦うよりも、それを赦すことが人間
として立派なものならば、出来るだけそちらの方の修養をお互いにしたいと思います
が、どうでしょう。私は年に合わせて気の若い方ですが、近来ようやくそっちの方角に
足を向け出しました。
(大正四年六月十五日付・武者小路実篤宛て書簡)
このような言葉の深さは、いつの時代になっても変わることはないだろう。
漱石書簡集
2022/02/02 07:36
率直な人柄
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:HR - この投稿者のレビュー一覧を見る
最初のほうは候文が読みづらくて唸りながら読み進めたが、漱石が中年になるころの手紙からグッと面白くなった。
他人の日記や手紙を読むのは、基本的には下品な楽しみだと思うのだが、個人的な文章ゆえに思ったことを率直に書いてるものが多く、結局公けの文章よりも面白く感じてしまう。優しい面でも手厳しい面でもとにかく率直な書簡が多かった(言い方を変えると歯に衣着せぬ)。
エッセイとしてすごくよかった『硝子戸の中』以上に書き手の人柄が強く出ていて、特に中年になってからある意味開きなおった漱石が、自分より若い人たちに送った励ましの手紙がとてもよかった。他人が他人に向けて書いた「真心」を盗み読みできるというのは、反則っぽいけどありがたいことだと思ったりした。
漱石書簡集
2023/04/24 06:19
こぼれて顧みられることのない塵芥のような
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マーブル - この投稿者のレビュー一覧を見る
家族の証言。やり取りした書簡。これらは創作された作品を語る上では直接的な参考にはなりにくいのかもしれない。ことに、ここに集められた書簡は、テーマも相手も、明らかな選択の理由も明示されず、時代ごとに並べられているだけである。創作物を創り上げる過程から言ってみればそれらは、像の周りにこぼれて顧みられることのない塵芥のような物。 しかし、漱石自身を知ろうとするのなら、これらの書簡は貴重な資料となり得る。その性格、相手との関係性、世間との往来。そしてその変遷。情熱も苦しみも激しかった若き姿から老成していく姿。