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8件
知的生産の技術
著者 梅棹忠夫著
学校では知識は教えるけれど知識の獲得のしかたはあまり教えてくれない.メモのとり方,カードの利用法,原稿の書き方など基本的技術の訓練不足が研究能力の低下をもたらすと考える著者は,長年にわたる模索の体験と共同討論の中から確信をえて,創造的な知的生産を行なうための実践的技術についての提案を試みる.
知的生産の技術
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知的生産の技術
2000/10/13 16:43
古さを感じさせない1冊
13人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:dakara - この投稿者のレビュー一覧を見る
言わずと知れた「京大式カード」による知的生産法を世に知らしめた1冊です。いま手元にあるこの本を見ると、初版第1刷が1969年になっています。いまから30年以上も前ということになります。確かにいまの技術から見ると「笑える」ような話も出ていますが(カナモジ・タイプライターのはなしなど)、決して古さを感じない、すごい本です。学校では知識の教育はするけれども、じゃあ知識をいかにして身につけるか、という「ハウツー」のことは一切教えてくれない、という問題意識から本書はスタートします。そしておなじみの京大式カードやこざね法などの解説があります。また読書や手紙、文章の書き方など知的生産にかかわるあらゆることの方法が綴られています。大学時代にはじめて出会いましたが、いまでも愛読書で1年に1回は目を通すようにしています。そして毎回、新しい発見がある本です。
知的生産の技術
2004/05/02 18:48
文章の問題は、情報工学の問題としてかんがえたほうがいい
8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:k-kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
言わずもがなの天下の名著である。しかし、さすがにハード面では違和感を感じるようになった。本文中で繰り返し言及される「カード」方式にしても、パソコン全盛の現代では、すでに陳腐化しているかもしれない。もっとも、ハードは日進月歩である。シート・フィルム状の液晶ディスプレイも既に試作に成功していると聞いている。近い将来には、完全に電子化された「京大型カード」の実現も夢ではないだろう。
一方、ソフト面の提言はちっとも古くはない。「情報」という切り口で、人間の知的活動をとらえているからであろう。情報というのは、知恵、思想、かんがえ、報道、叙述など、ひろく解釈していいという。知的生産というのは、頭をはたらかせて、あたらしいことがら——情報——を、ひとにわかるかたちで提出すること。文章をかくというのは、情報伝達行動である。文章の問題は、情報工学の問題としてかんがえたほうがいいのではないかと。
再読して、文章のわかりやすさに改めて感心した。例えば、自身の提案する文章法に「こざね法」というのがある。名刺サイズの小さな紙きれ(こざね)に、みじかい文章をどんどんかいてゆき、つながりのある紙きれをいっしょにならべ、端をかさねてホッチキスでとめる。こうして一つの思想/文章をまとめる方法である。これをこう説明する。
「こざね法というのは、いわば、頭のなかのうごきを、紙きれのかたちで、そとにとりだしたものだということができる。それはちょうど、ソロバンのようなものである。ソロバンによる計算法は、けっきょくは暗算なのだが、頭のなかのうごきを、頭のそとでシミュレートしてみせるのが、ソロバンの玉である。こざね法は思想のソロバン術で、一枚一枚のこざねは、ソロバン玉にあたる」
実にわかりやすい、具体的イメージがすぐ浮かんでくる文章ではないか。
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知的生産の技術
2020/06/19 20:01
時代を経ても大事な要素
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ファイリングの話から原稿用紙、最後には文章の書き方に至る迄、実に興味深く記されています。文体に平仮名表記が多く、特徴的だなと感じて読み進めていくと、タイプライターの話の後にそれに関する記述がしっかりとありました。
現代に於いてはパソコン(ひと昔前ならワープロ)があり、本書にあるようなジレンマは幾分解消されるのでしょうが、やはり本書での内容は身につまされるものです。