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7件
社会的共通資本
著者 宇沢弘文著
ゆたかな経済生活を営み,すぐれた文化を展開し,人間的に魅力ある社会を安定的に維持する―このことを可能にする社会的装置が「社会的共用資本」である.その考え方や役割を,経済学史のなかの位置づけ,農業,都市,医療,教育といった具体的テーマに即して明示.混乱と混迷の現代を切り拓く展望を開いていく,著者の思索の結晶.
社会的共通資本
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社会的共通資本
2012/02/02 04:10
この経済学者に続け
10人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
世界的な経済学者である著者の思索の集大成ともいえるのが「社会的共通資本」である。
社会的共通資本とは何か。本書より。
『社会的共通資本は自然環境、社会的インフラストラクチャー、制度資本の三つの大きな範疇にわけて考えることができる。大気、森林、河川、水、土壌などの自然環境、道路、交通機関、上下水道、電力・ガスなどの社会的インフラストラクチャー、そして教育、医療、司法、金融制度などの制度資本が社会的共通資本の重要な構成要素である。』
都市も農村も、つまりわれわれの社会というものは、これらの様々な社会的共通資本を積み重ねて構成されている。
われわれが住みよい社会をつくるということは、これらの社会資本の個々のパーツを大切にし、これらをいかに最適に組み合わせることができるかにかかっている。どれもおろそかにできない。
『ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を安定的に維持する-このことを可能にする社会的装置が「社会的共通資本」である。』
『ゆたかな社会とは、すべての人々が、その先天的、後天的資質と能力とを十分に生かし、それぞれのもっている夢とアスピレーションが最大限に実現できるような仕事にたずさわり、その私的、社会的貢献に相応しい所得を得て、幸福で、安定的な家庭を営み、できるだけ多様な社会的接触をもち、文化的水準の高い一生をおくることができるような社会である。』
しかし、いまの社会が、決して「すべての人々」にとっての「ゆたかな社会」と言える状態にないことは自明である。
われわれは、これまできちんと本当の「ゆたかな社会」をつくる努力を怠らずにきたと言えるのか。
自然環境。まず一番に、今の社会がこれまで最もないがしろにしてきたと言えるのがこれであろう。急激な都市化にともなう自然環境の破壊は説明するまでもない。いまの人間社会が成立しているのは、ただ単に、この地球が持つ奥深い生命力・キャパシティーのおかげ。そして、それも今や危うい。
そして社会的インフラストラクチャー。先の自然環境に敵対させることなく本当に必要なインフラ整備が厳選され、なされてきたと言えるのか。誰のためのインフラ整備だったのか、問われて窮するものが、この国にはたくさん残っている。
最後に制度資本。教育・医療が荒廃してきていることも言うまでもない。制度資本を国民のために整える役目を持つ為政者達は、もともと目的とする方向が違っていたようだ。一部の特権階級のためだけの制度資本が整えられていく。それは金融制度もしかり。いま多くの労働者が誤った金融政策のため、苦しんでいる。この国に、国民に目線をあわせた政治はない。
この社会的共通資本の思想を考えてみたとき、この国が進んでいく方向が明確になる。
国民のために声をあげてくれている、この老練な経済学者に続かなければならない。
社会的共通資本
2019/01/29 06:19
社会制度
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
哲学をわかりやすく馴染みやすいものにモノとしてくれる。おかしな制度の疑問を持ち解決するヒントとなる考え方ができる。
社会的共通資本
2019/04/10 22:02
興味深い内容でした。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一見、『社会的共通資本』って言われても、なんのこっちゃ?となるでしょうが、人が普通に生活していく上で安定を維持出来るようにする為の仕組みの事であり、事例で言うなら様々なインフラや行政制度の事を指しているという内容です。
その内容について農村の観点から、都市の観点から、学校教育の観点から、金融制度の観点から、地球環境の観点から述べられています。
本書のタイトルのイメージに比して大変判り易く書かれてありますので、一読の価値があります。