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7件
神々の明治維新 神仏分離と廃仏毀釈
著者 安丸良夫
維新政権が打ちだした神仏分離の政策と、仏教や民俗信仰などに対して全国に猛威をふるった熱狂的な排斥運動は、変革期にありがちな一時的な逸脱にすぎないように見える。が、その過程を経て日本人の精神史的伝統は一大転換をとげた。日本人の精神構造を深く規定している明治初年の国家と宗教をめぐる問題状況を克明に描き出す。
神々の明治維新 神仏分離と廃仏毀釈
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神々の明治維新 神仏分離と廃仏毀釈
2021/04/17 08:41
読み直したくなる名著
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
言わずと知れた、安丸良夫氏の名著。
ときどき、世の中の流れと自分の内面のバランスが取れてないな、などと感じた時に読み返す。
「無自覚のうちにそのなかに住むことを強要してくる習俗的なものが圧倒的に優勢でそこからはみだすとおちつかなくなり、ついにはほとんど神経症的な不安にさえとりつかれてしまうところに私たちの社会の過剰同調的な特質があるのである」
という、「はじめに」の一文に救われる気がするのである。
神々の明治維新 神仏分離と廃仏毀釈
2022/12/17 17:28
神々の明治維新
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本近代国家成立時に起こった「廃仏毀釈」について詳しく論じている。単純に神道を復興し、仏教を排斥するというものではないという点を指摘しつつ、この運動が江戸時代後期にすでに起こりつつあり、その理由が末寺を廃する事でその祭祀にかかる費用を他の事に使いたいという藩の思惑があったことも指摘している。
神々の明治維新 神仏分離と廃仏毀釈
2008/06/18 15:00
不可視のインフラとしての仏教
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:けんいち - この投稿者のレビュー一覧を見る
廃仏毀釈とは、明治期の「近代化=西洋化」において、その対極にある仏教を可視的な形で排除しようとした動きであり、それは政治史であると同時に宗教史であり、また同時に民衆史の1コマでもあったはずなのだが、今改めて振り返ってみるならば、それは実は「現代史」ですらある。というのも、今や、明確な宗教意識や歴史感覚ぬきに、それでも人は仏壇を飾り墓を守り、お盆やお彼岸を口にするのだから。そう、仏教は、廃仏毀釈においてダメージを受けたにせよ、むしろそのことによって「潜勢力」として不可視の領域へと溶け込み、今や近代、現代社会のインフラとして不可欠の要件と貸している。その単著については、本書で著者が次のように述べている。
《宗門改めと寺請制度が、キリシタン問題がすでに現実の政治課題でなくなった一六七〇年代に、かえって制度として整備されるのは、その民衆支配の手段としての性格をものがたる事実である。一六世紀末まで、政治権力としばしば争った仏教は、その民衆掌握力のゆえに、このようにしてかえって、権力体系の一環にくみこまれた。仏教は、国教ともいうべき地位を占め、鎌倉仏教がきり拓いた民衆化と土着化の方向は、権力の庇護を背景として決定的になった。》
そこに、民衆の仏教を求める心性が重なる形で、その影響力は定まったという。一時期、「近代化=西洋化」の文脈から否認された仏教は、しかしそれによって禊ぎを終えたかのようにして、先進国家であるこの国に根深く安住している。そのことのメリット・デメリットを考える前に、こうしたインフラをひとまずはそれとして可視化してみることが必要だろう。本書は、そのためのはじめの一歩としてたいへん重要である。