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原爆詩集
著者 峠三吉
広島,長崎に投下された原子爆弾によって命を奪われた人や,全世界の原子爆弾を憎悪する人々に捧げられた詩集.「ちちをかえせ ははをかえせ」で始まる「序」は,反核運動の旗幟としてひるがえる.自らの被爆体験をもとに,戦争や原爆に対する激しい抗議と平和への強い決意を訴える言葉の記念碑.(解説=大江健三郎,アーサー・ビナード)
原爆詩集
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2024/08/06 17:41
有名な詩だけでない、詩人の思いを読む
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
峠三吉。1917年(大正6年)2月生まれ。
詩人である。
28歳の、1945年(昭和20年)8月6日の朝、広島に原爆が落とされた朝、彼は爆心地から3キロ離れた自宅から市の中心部に向かっていた途中で被ばくする。
それから8年後の1953年(昭和28年)、病気回復のための治療中に亡くなる。
36歳の若さであった。
峠三吉といえば、「ちちをかえせ ははをかえせ」で始まり、「へいわをかえせ」で終わる、8行の短詩がよく知られている。
この詩に限れば、現在広島の平和記念公園にその詩碑があるし、学校の教科書などで読む機会も多いはずで、原爆文学の核ともいえる作品である。
しかし、この有名な詩は、彼が1952年に自費出版した『原爆詩集』の「序」の1篇に過ぎない。
詩集に収められたほかの作品も読まなければ、実は峠三吉という詩人が私たちに伝えようとした誠のことがわからないだろう。
特に、おそらくは被ばくして間もない広島の惨状を描いた作品の多くは、彼の哀しみや絶望が詩篇にあふれでてくる。
「あの閃光が忘れえようか/瞬時に街頭の三万は消え/圧しつぶされた暗闇の底で/五万の悲鳴は絶え」(「八月六日」より)
「からだが/燃えている/背中から突き倒した/熱風が/袖で肩で/火になって」(「死」より)
「何故こんな目に遭わねばならぬのか/なぜこんなめにあわねばならぬのか」(「仮繃帯所にて」より)
被ばくから79年。峠三吉の哀しみや無念は消えただろうか。
私たちに課されていることは、峠三吉がこの詩集にこめた思いを「あとがき」まで含め、通読することでしかない。