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検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?
「ナチスは良いこともした」という言説は,国内外で定期的に議論の的になり続けている.アウトバーンを建設した,失業率を低下させた,福祉政策を行った――功績とされがちな事象をとりあげ,ナチズム研究の蓄積をもとに事実性や文脈を検証.歴史修正主義が影響力を持つなか,多角的な視点で歴史を考察することの大切さを訴える.
検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?
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検証ナチスは「良いこと」もしたのか?
2024/09/04 16:46
最高の入門書
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kazuki - この投稿者のレビュー一覧を見る
レビュータイトルの通り、最高の入門書と言って差し支えない良書だった。
よくネット上で言われがちな「ナチスは良い事、先進的な事も行った」などの意見を、歴史学の知見からジャンルごとに一つ一つ丁寧に否定することで、ナチス肯定の余地をなくしている。特にネット上でよく行われがちな悪の相対化・過失相殺といった問題にも切り込んでいる。
内容の濃さとは反対に、この本は岩波ブックレットから出版されているためあくまで入門書であり、実際厚みもそこまでではない。故に、無知な人間でも気軽に手に取って読み通し、正しい理解を得られるという意味でも極めて優れた1冊だ。
ロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ問題など、世界各地で今尚凄惨な出来事が続く中で、この本は我々がどう生きていくべきかを示す貴重な材料の1つであるといえるだろう。
検証ナチスは「良いこと」もしたのか?
2024/03/08 23:37
「歴史学からみて ナチスに評価できる点はあるか?」帯より。
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:やまだち - この投稿者のレビュー一覧を見る
2024年紀伊國屋じんぶん大賞第1位になった話題の書ということで手に取りました。
ネタバレがあります。
コンテンツは以下の通りです。
1.はじめに
2.第一章 ナチズムとは?
3.第二章 ヒトラーはいかにして権力を握ったのか?
4.第三章 ドイツ人は熱狂的にナチ体制を支持していたのか?
5.第四章 経済回復はナチスのおかげ?
6.第五章 ナチスは労働者の味方だったのか?
7.第六章 手厚い家族支援?
8.第七章 先進的な環境保護者政策?
9.第八章 健康帝国ナチス?
10.おわりに
11.ブックガイド
「『ナチスは良いこともした』などという主張がいかに不正確で一画的であるかがよく理解できる」、ナチズム研究の入門書です。
ナチスが行ったとされる「良いこと」の事例を取り上げひとつひとつ検証し、「これは正しくない」と間違いを指摘しています。このような本が出ること自体、残念な世の中になっているのだと悲観的になりました。
そしてなぜ「ナチスは良いこともした」という主張がなされるのか。そんな根本的なことにも言及していて興味深かったです。
「おわりに」にこんな一文があります。
P.112「『反ポリコレ』の欲求に呑み込まれた者を説得するのは無理だとしても、しっかりとした知識をもつ第三者の数を増やしていけば、それは歴史修正主義的な風潮に対する社会の免疫を強化することにつながるだろう。」と。
悲しいかな、これだけ説明を尽くしても理解されない現実と、それでも研究者としての使命を果たさんとした思いが読み取れました。
「はじめに」で述べている「トンネル視線」に陥ってはいないか。そう自分に問いかけ、多角的な視点の大切さを痛感した一冊でした。
検証ナチスは「良いこと」もしたのか?
2023/12/27 17:21
歴史の連なりから事項を評価する
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近、「ナチスも良いことをした」「悪い面だけでなく良い面も見るべきだ」といった言説が近年、SNSや本、ネット上に散見される。
一見、妥当に思えるこうした主張は、本当にそうなのだろうか?
本書は二人のドイツ史研究者が、経済、労働、家族支援、環境保護などなど各論と総論で、ナチスの政策を丁寧に解説し、そうした言説を否定していく。
「両面を見る」「良いところは評価する」といった視点は、気をつけなければ、もう一方の悪い面(ナチスの場合は数あるが、ホロコーストなど加害の側面)を見落としてしまうことにもつながる。
過去の犯罪に目を背ける歴史修正にもつながりかねない。
「良いこと」とされる事柄を表面で捉えるのではなく、その目的や文脈を踏まえて評価しなければ、過去に目をつぶることになりますよ、ということを訴えた本だと思った。