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8件
ホメロスイリアス
著者 松平千秋訳
一○年にわたるトロイア戦争の末期,物語は,激情家で心優しいギリシア軍第一の勇将アキレウスと王アガメムノンの,火を吐くような舌戦で始まる.トロイア軍の総大将ヘクトル,アキレウスの親友パトロクロス,その敵討ちに奮戦するアキレウスら,勇者たちの騎士道的な戦いと死を描いた大英雄叙事詩.格調高く明快な新訳.
ホメロス イリアス 下
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イリアス 上
2002/06/06 23:52
今読んでも生き生きとしていて感動的
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:APRICOT - この投稿者のレビュー一覧を見る
読んだ事はなくても、名前を知らない人はいないだろう。ギリシア神話のトロイア戦争をテーマにした、約3000年前の大昔の叙事詩で、西洋文学の原点。話のタネ程度にしか期待していなかったのだが、読んでみて驚いた。とてもおもしろいのだ。確かに読みやすいとは言えないし、欠点を挙げればきりがない。それでも、今読んでも生き生きとしていて、感動的である。
ホメーロスはギリシアの詩人で、物語は当然ギリシア寄り。にもかかわらず、敵方のトロイアを“悪の枢軸”とは描いていない。それどころか、ギリシアの英雄たちが若干ステロタイプなのに対して、トロイア側の人々(第1王子で総大将のヘクトール、その妻アンドロマケー、戦争の原因を作った王子パリスと絶世の美女ヘレネー、老王プリアモス等)の方が、生き生きとしていて人間的に感じられる。だからこそ本書は、滅び行くものを悼む悲劇として心に響き、はるかなる時と場所を越えて読み継がれているのだと思う。
なお本書は、トロイア戦争の最初から最後までを描いたものではない。ギリシア側の主役の英雄アキレウスと総大将アガメムノンとの、戦争の途中での仲違いという、中途半端と思える箇所から始まっている。また、戦争の遠因である3人の女神の美しさ比べ(パリスの審判)や、直接の原因であるパリスとヘレネーの駆け落ちは、当然知っているものとされているので、それらの予備知識がないと辛いかもしれない。何らかの予習をお勧めする。私が使ったのは、ブルフィンチの「ギリシア・ローマ神話」だが、トロイア戦争の全容に加えて、「イーリアス」はここから始まると、アキレウスとアガメムノンの仲違いの背景の説明もあり、おかげで非常にわかりやすくなった。
本書には、戦争の終結部分(アキレウスの死、トロイアの木馬、トロイアの陥落)も描かれていない。読む前は正直なところ不満に感じた。だが、クライマックスのアキレウスとヘクトールの対決は最高に盛り上がったし、またフィナーレのヘクトールの葬送には、トロイアの滅亡を暗示する、しんみりとした味わいがあった。だまし討ちという盛り上がりに欠けるアキレウスの死や、陥落の血なまぐさい殺戮よりも、本書の終わらせ方の方がずっと良い、と今では思っている。
なお、木馬のエピソードが詳しく書かれているのは、トロイアの戦士アイネイアースの戦後の冒険を描いた、ウェルギリウスの「アエネーイス」である。また、トロイア戦争の全容を簡単に知りたければ、サトクリフの「トロイアの黒い船団」も役に立つ。ご参考までに。
イリアス 上
2005/09/23 11:16
2700年前のダイナミクスを感じてみませんか?
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:phi - この投稿者のレビュー一覧を見る
非常に愉しめました。初めは登場人物の,独特の呼称に戸惑いましたが,それに慣れると,巧く物語の流れに乗ることが出来ました。文体は特有のもの──比喩の多用など──で,その好みが分かれる所だ,と思いますが,私は,すっと入り込むことが出来ました。これには,訳の助けが大きかった,と思います。他の訳を読んでいませんので,比較は出来ませんが,松平氏のこれは,口頭詩の雰囲気を,良く出していて,巧い,と感じました。後,訳注の所々に,ヒューモアが見られる点も良かったですね。
「ホメロス伝」は彼に対して特別な興味を持っている人には面白いかも知れません──と言った程度のものです。本当に,お負け,と言った感じですね。■
イリアス 下
2023/08/18 12:21
英雄が動く
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:藤和 - この投稿者のレビュー一覧を見る
下巻になってようやくアキレウスが動き始めて、事態が急転する。
神々も加わった戦闘シーンは勢いと迫力があっていい。
その迫力のあとに来る人情が味わい深い。