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フォックス家の殺人
中国で華々しい戦果をあげライツヴィルに凱旋したデイヴィー・フォックスは悩んでいた。妻を殺したいという病的な意識が心を支配していたのだ。それもすべて12年前の殺人事件が原因だった。デイヴィーの心の傷を癒やすため、エラリイはその推理力を武器に過去に起こった殺人の謎に挑んでゆく!
フォックス家の殺人
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紙の本フォックス家の殺人
2004/04/15 08:12
しみじみと胸に広がってくる余韻がありました。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風(KAZE) - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終えて、しみじみと胸の中に広がる味わいに浸りました。
それはどこから来るものであったか。
第一番目。
フォックス家の人たちがそれぞれに、自分にとってかけがえなく
大切だと思う人への愛情に貫かれていたこと、
そこから12年前の殺人事件の真実を明らかにしようとしたこと、
その姿に打たれました。
父親が息子の幸せを願う気持ち、妻が夫を愛する気持ち。
その祈るような思いがひしひしと胸に迫ってきました。
しみじみとした味わいはどこから来たか? 第二番目。
「私は無実だ」と訴える登場人物が、最初は諦めの気分だった
ところが、息子の幸せを願う気持ちがきっかけとなって、
「真実を語ろう! 語らなくちゃいけない!」と、
そういう姿勢に転換するところ。
と同時に、探偵のエラリイが「この人物は冤罪の濡れ衣を
着せられていたのではないか」と過去の事件の再調査を開始し、
ねばり強く事件に取り組んでいくところ。
このふたりの真実追求を目指した断固たる気持ちが、やがて
過去の事件の扉をこじ開け、その裏側に潜んでいた真相を
表に引っぱり出してくることになります。
それまでずっと(12年もの長きにわたって!)闇の中に
眠っていたものが、真実を希求する強い気持ちと行動によって
立ち上がってくる。そのひたひたと身内に迫ってくる肌触り。
読むほどに、作品の中へと引きずり込まれていきました。
静まり返っていた池の水面に、真実を希求する石(意思?)が
投げ込まれ、波紋が広がる中で、過去の出来事が明るい光の下へと
引っぱり出されてきます。
被告人の冤罪を立証しようと奮闘する弁護士と事件関係者、
そして被告人の証言が、法廷でやり取りされていくような味わい。
さらに、冤罪立証の過程で摘出された真相が、フォックス家の
人たちの胸に強い波紋を呼び起こすところなど、ぞくぞくする
読みごたえと面白さがありました。
電子書籍フォックス家の殺人
2019/08/21 09:39
前置きがやや長すぎるきらいがありますが、中盤からドラマチックに盛り上がります
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『フォックス家の殺人』の殺人は、国名シリーズの最初に殺人が起こって、たまたまクイーン親子またはエラリイ一人がそこに居合わせて調査に乗り出すパターンとは違い、過去の事件を捜査する話ですが、そこに至るまでの前置きが長いため、若干イライラしました。
中国で華々しい戦果をあげたてライツヴィルに凱旋したデイヴィー・フォックス大尉は戦争で「神経をやられた」らしく、なぜか最愛の妻リンダを殺したい衝動に駆られ、その衝動と戦うことに苦心していました。その苦しみの根底には12年前父が母を毒殺したという事件があり、自分がその人殺しの血を引いているということが彼の精神を病ませていたのでした。その苦しみを少しでも和らげてあげたいと願ったリンダがお門違いかも知れないが、イチドライツヴィルで事件を解決した(『災厄の街』)ことのあるエラリイ・クイーンに相談しようと思い立ち、2人で彼を訪ねます。デイヴィーの父ベイアードは無実を主張していましたが、あまりにも状況証拠が彼に不利であったためにそのうち本人も諦めてしまい、刑に服していました。エラリイ・クイーンは若い二人のたがいを思い合う気持ちと冤罪であるかも知れないそのわずかな可能性に挑戦を感じて依頼を受け、その依頼を受けて紆余曲折の後に解決するというストーリーです。
エラリイが事件の再調査に乗り出したところから、フォックス家の様々な語られなかった過去が、息子とその妻の未来の幸福のためになるならばという父親心で「真実を語ろう」と決意したベイアードによって次々と明らかになっていき、ドラマチックな盛り上がりを見せます。長い前置きを我慢して読み通すだけの甲斐はありますね。
また、真犯人は公にされてはならない部類ですね。どうやらライツヴィルシリーズというのはそういう人間ドラマを中心に据えるタイプのシリーズのようです。