同志少女よ、敵を撃て
【2022年本屋大賞受賞!】
キノベス! 2022 第1位、2022年本屋大賞ノミネート、第166回直木賞候補作、第9回高校生直木賞候補作
テレビ、ラジオ、新聞、雑誌で続々紹介!
史上初、選考委員全員が5点満点をつけた、第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作
独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために。同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵""とは?
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同志少女よ、敵を撃て
2022/01/10 19:39
凄まじい熱量を感じる
43人中、43人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
話題作で前から気になっていたものの、少女漫画チックな表紙とベタなタイトルにどうも食指が動かなかった。しかし、方々から評判を聞き、直木賞候補にもなったということで満を持して購入。結論から言えば、諸々の先入観を吹っ飛ばす面白さだった。
まずストーリー。おぼろげながら世界史で学んだ記憶のある独ソ戦を、ソ連の少女から見つめ、話が展開していく。
村を焼かれ、肉親を奪われた少女が狙撃手となって、戦地に赴き、戦争のリアルに触れながら成長していく話・・・と言えば、ヒロインの成長譚でもあるのだが、ストーリーの大きな流れが史実に基づいており、スケールが大きいのに加え、そのディテールがすごい。かなりロシアや欧州の近現代史の知識がなければ書けない内容だ。
また、人間関係を軸にしたミステリーの要素もあり、残虐な戦場の様子がまるで従軍作家が書いたような生々しさで描かれているという点では、戦争文学のようでもある。
しかしこの作品の骨となっているのは、戦争において、国や民族を問わずもたらされる戦時性暴力への怒りの視点だ。
最初から最後まで手に汗握るのだが、特に終盤の展開は心臓のバクバクが止まらない。最後まで読んでようやく、「同志少女よ」というちょっとダサくも思えるタイトルが、重みを持って響いてくる。
アレクシェーヴィッチの『戦争は女の顔をしていない』は読んだが、そのさらに奥にある女性兵士たちの声を、ロシアや欧州の近現代史を、想像力で補いながら、見事に表現した作品だと思った。凄まじい熱量。
著者はこの作品が一作目だということだが、どうか力尽きることなく(本当に、読む側も読んだだけで燃え尽き症候群になってしまいそうなくらいの熱量がある)書き続けてほしい。
2022/03/03 23:05
理不尽、喜怒哀楽、成長、物語、全てが詰まっている素晴らしい娯楽作品
20人中、20人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:いよかん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタバレなく書きます。
本の力って凄い。
私は物語により感動して泣くことはよくありましたが、自分の心と体に強い衝撃のような何かを与えられたことは生まれてはじめてでした。
どの場面かを書けないのはもどかしいですが、もし同じような体験を共有できたら嬉しいです。
ページ数は多いかもしれませんが、この作品に無駄な文字や場面は何もないです。
しかし、文中に難解な言い回しや読みづらく感じる箇所はなく、専門用語などもあまり出てこないのでとても読みやすいです。
私は普段は漫画やライトノベルを読んでばかりですが、一気に読み終わりました。
この作品は娯楽作品としてとても優れています。
低俗な考えかもしれませんし、批判もあると思いますが、映像化があってもおかしくないと思います。
軽く内容に触れますが、
2022年3月、ロシアによるウクライナへの侵攻が続いていますが、この物語のはじまりは第2次世界大戦のドイツの侵攻を受けるソ連です。
読み終わって色々と考えさせられることもありました。
同志少女よ、敵を撃て
2022/03/01 21:39
戦争下の女性たち
14人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ソ連対ナチス、兵士と民衆、歩兵と狙撃兵、男性と女性、民衆と元女性兵士、さまざまな対立や差別が織り込まれていきます。
田舎の猟師の娘だった心優しい少女が、復讐心を胸に狙撃手として激戦地を戦い抜きます。母を撃ち殺したドイツ軍狙撃手を殺すために。
戦友の死を目の当たりにしたり、敵を撃つことに楽しみを感じた自分に戦慄したり、経験を重ね狙撃の制度を上げていきます。
戦場で犠牲になる女性たちを見るうちに戦う意味に「女性を守るために」という心情が加わります。そして、女性を守るために悲しい決断を迫られます。
名狙撃手となり、仇との戦いに臨む。どうなる?って思ったら驚きの行動へ。
これがかつて母を亡くし泣いていた少女の行動かと驚くばかり。
ソ連もナチスも良い印象は全くないわけで、この二勢力が戦っても大儀に正当性は見いだせないが、守るべきものは何なのか、差別的な社会で生きる道を考える女性たちの気持ちだけは正しいと思える。