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ハッピー・リタイアメント
著者 浅田次郎 (著)
定年まであと四年のしがない財務官僚・樋口と愚直だけが取り柄の自衛官・大友。二人が突如転属を命じられたJAMS(全国中小企業振興会)は、元財務官僚の理事・矢島が牛耳る業務実体のない天下り組織。戸惑う彼らに、教育係の立花葵はある日、秘密のミッションを言い渡す。それは汚職か、横領か、それとも善行か!? 痛快娯楽「天下り」小説。
ハッピー・リタイアメント
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ハッピー・リタイアメント
2011/10/03 14:43
幸せなリタイヤメントと天下りの実態
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず作品の掴みからして面白い。ある時浅田氏の元に一人の天下り職員が訪ねてきて、大昔に借用して既に法的債権は無効となった借金を、書類上だけ片づけて欲しいという。氏は色々と試行錯誤した後に、当時の借金を返す事にした。そこで天からドーン!と降ってきたという。これがまさかと思ったが、どうやら実話らしい。それをそのまま物語に使うというのは、浅田氏ならではの大胆さ。非常に斬新で面白く、すぐに物語に入り込めた。
さて物語は二人の謹厳実直な国家公務員と、その天下り先の機関JAMS(全国中小企業振興会)の女性職員を主人公に、まずは日本の「天下り」システムの実態を暴く感じで進んでいく。実際「これは事実なのか…」とそら恐ろしくなるような実態が暴露されている。この流れで天下りシステムへの問題提起をしていく物語なのか、と思いきや。そこから3人の「仕事」が始まる。決して犯罪ではないが、限りなく「公金横領」に近いその仕事とは。社会的な地位も名声も金も得た者達が、過去に置いてきた罪悪感。それがノドの奥の奥にひっかかったトゲとなって、今でも時折頭を苛める。その骨を取り除く事で、3人はお金を手に入れるのだが。しかしこのマネーゲーム的な所も、多分この作品のテーマでは無いと思われる。そうテーマはタイトル通りの「ハッピーリタイアメント」。本当のハッピーはどこにあるのかという事。お金を得る事がハッピーなのか、名声を得る事か社会的な地位なのか家族愛なのか。物語は色んな人々の人生と幸せとを、検証するようにして進んでいく。そして進むたびに、3人は巨額のお金を手に入れるのだが。
さてこうなってくると、どうやって物語を締めくくるのかが非常に気になる所。普通にお金を3人で山分けして次の人生を・・・というのでは、やはりどこか「横領」の言葉が頭を過ってスッキリしきらない。かと言って、匂いを嗅ぎつけたJAMSの上級職員に、根こそぎぶんどられて終るというのもこれは全く頂けない。さあどうやって締めくくってくれるのかと思いきや、そこはさすがの浅田次郎氏、なあるほどそう来ましたか!という感じで締めくくられている。そしてその最後の最後に、燦然とテーマが掲げられる。いや高らかに宣言される、というべきか。
ハッピーリタイアメント。人生半ばを過ぎた自分にも、中々に染みる言葉と物語であった。
2024/04/10 01:04
ハッピーリタイアメント
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投稿者:Keito - この投稿者のレビュー一覧を見る
結構前にドラマで見た気がする作品ですがさすが浅田次郎さんの作品とだけあって面白かったです
天下りの話なのですがそれを面白く描くというのか天下りを嘲笑うというのかそういった感じにも思えました
ハッピー・リタイアメント
2016/03/18 17:41
勉強になりました。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うえちゃこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
浅田作品を読むのは「オー・マイ・ガッ!」に続き、これが2冊目です。
こちらも大金が絡むお話。
天下りの実態や不正が面白おかしく描かれて、政治や経済に疎い私もつい引き込まれてしまいました。これまで縁のなかった官僚や自衛官の生活をかいま見ることもできてちょっとお得です。
願わくば額に汗して死ぬまで現役でいたいものです。