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32件
キッチン
著者 吉本ばなな
私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う――。同居していた祖母を亡くし途方に暮れていた桜井みかげは、田辺家の台所を見て居候を決めた。友人の雄一、その母親のえり子さん(元は父親)との奇妙な生活が始まった。絶望の底で感じる人のあたたかさ、過
ぎ去る時が与える癒し、生きることの輝きを描いた鮮烈なデビュー作にして、世界各国で読み継がれるベストセラー。「海燕」新人文学賞・泉鏡花文学賞受賞作。
キッチン
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キッチン
2012/01/24 12:12
よしもとばなな作品で群を抜く最高の作品!!
10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:小金魚 - この投稿者のレビュー一覧を見る
よしもとばななの作品は当然たくさんある。でも、この「キッチン」はそれら作品の中でも、群を抜く最高のものだと2012年の現在でも思う。
初期のよしもとばななは、その作品の中で「人の死」の場面が多く出てくる。この作品も例外ではない。「人の死」はもちろん多くの人の心の琴線に触れやすいものである。そのため、子供っぽい表現方法であるとも思われがちだが、やはり、「人の死」が心の琴線に触れるのは間違いなく、そのゆさぶりはほかの何物にも代えがたい。やはり、「人の死」を扱うことには意味があると思う。
この作品は、その全体がセピア色のイメージで覆われている。不思議だ。作品内容では、様々な季節が出てくるのに、登場人物たちが幸せな時も、悲しい時も、いつもセピア色の切ない雰囲気なのだ。
今まで、私はこの本を多分年に1度は読んでいる。年に1度はよしもとばななブームが来るためでもある。でも、よしもとばななの本の中でも、初めに読みたくなるのはこの本であるし、この本以外にはない。何度読んでも涙が出てしまう。
現在のよしもとばななにはない、作品の雰囲気だと思う。
人は変化してゆくものだし、よしもとばななさんも様々な変化を遂げているから、当然当時のような作品は現在かけないと思う。でも、だからこそ、現在のよしもとばなな作品しか知らない人がいたら、ぜひ読んでもらいたい作品だと思う。よしもとばななの作品にある、軽く読めるタッチはあるので、軽い気持ちで手に取ってみるとよいと思う。
キッチン
2003/08/11 21:24
昔、「卒業」という映画があった。あのダスティ・ホフマンが、女装してカツ丼をもって夜の町を走る、そういうイメージ。うーん、愛って素晴らしい
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
今更、吉本ばなな(やっぱり、過去の作品は、よしもとんばなな、でなくてもいいんでしょ?)おまけに彼女のデビュー作『キッチン』だなんて、と言われそうだけれど、1988年の出版当時、あまりに騒がれ過ぎて手を出さなかった本。版元に敬意を表して、福武文庫で読みたいところだけれど、今はないのでパンダマークの文庫で行こう。
すでに、斎藤美奈子の『文壇アイドル論』で、いかにこの本が世のおじ様たちを魅了、ノックアウトしたかを教えられたけれど、たしかに、その後のばななの本を、何冊か読んだ私としては、これほど面白いと思った作品はなかった、といいたい。鮮度は全く落ちていないし、性別、年齢を問わず楽しめる。まさにキッチン、カツ丼の美味しさを思い出す。
本は、表題作の「キッチン」、その続編「満月 キッチン2」、「ムーンライト・シャドウ」の三篇からなる。最初の二作は連作で、主人公で祖母を亡くした桜井みかげと、彼女を家で預かろうとする大学の友人 田辺雄一、そして母親のえり子(実は整形して美女となった父親)の三人が織り成す悲喜劇。先に、長女に読ませたら「あの、美女のお父さんがいい」と言う。何を言っているのか分らなかったが、読んで納得。
この母親である父親が雄一の母親と過ごすうちに(説明が悪いのではなく、設定がそうなのだ)、雄一の母親に当たる人と一緒に育てられていた父親は(念押すが無論、雄一は未だ生まれていない)恋に落ちて駆け落ち、そして雄一が誕生。で、その母親は亡くなってしまう。そこで、父親は母親になることを決心して整形をする。どう書いても混乱するだろうなあ。ま、ここらは小説を読んでもらったほうがいい。まず勘違いすることはないはず。
続編には、悲劇とカツ丼をめぐる冒険がある。これがいい、思わず胸が熱くなる。昔、「卒業」という映画があった。あのダスティ・ホフマンが、女装してカツ丼をもって夜の町を走る、そういうイメージ。うーん、愛って素晴らしい。想像できないって? それはあんたが悪い。私は、この場面(「卒業」とちゃうよ)が一番好き。
以上の2編に、カツ丼で言えばお新香の「ムーンライト・シャドウ」がついてくる。これは、ばななが日大在学中に書き上げ、大学の芸術学部賞をとった作品。お漬物というよりは、お味噌汁くらいの充実感はある。三篇に共通するのが「死」「性」「食」だと、ばななの先生曽根博義さんが書いている。満腹満腹。
でも、自分より優れた学生を生徒に持つ教授というのは、複雑な心境なんだろうなあ、でもお父さんがあそこまで有名だと、屈服というか「ハハアー」と納得しちゃうだろうなあと、いらぬ心配をしてしまった。とりあえず天才は、遠くにありて思うもの。近くにいては煙たいか。
キッチン
2020/08/27 19:22
あたたかい気持ちになれます
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mm - この投稿者のレビュー一覧を見る
人生のドン底のように感じても、偶然出会った人やささいな会話、食事で心が支えられるって地味なようでとても素敵なことだなと改めて感じました。