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グローバリゼーションとは何か
著者 著:伊豫谷登士翁
一九七〇年代以降、近代世界は新しい世界秩序への解体と統合の時代に入った。国民国家に編成されてきた資本と労働と商品は、国境を越え、ジェンダーや家族の枠組みを壊し、文化と政治・経済の領域性や時空間の制約すら越境し、新たな貧富の格差の分断線を引き始めている。あらゆる領域を越え、社会の再編を迫るグローバル資本。その新たな世界経済の編成原理とは何か。
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2018/07/31 08:19
グローバリゼーションの神髄を手軽に
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:病身の孤独な読者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在話題のグローバリゼーションに関する本格派の新書である。新書という簡単そうな衣をまとっているが、内容はそれなりにある。ナショナリズムとの関係やグローバリゼーションの功罪についても比較的詳しく解説されているため、勉強になる書籍である。
グローバリゼーションとは何か 液状化する世界を読み解く
2002/09/09 22:56
現代の明快な見取り図
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:桃屋五郎左衛門 - この投稿者のレビュー一覧を見る
グローバリゼーションは、資本や情報の世界規模の流れだけではなく、途方もない人の移動をもたらしている。同時多発テロで崩壊して間もなく一年となるWTCは、本書の終わり近くに指摘されているように、グローバル資本の流れの担い手であるエリートたちとともに、多くの低賃金移民労働者が働いていた。つまりWTCとは、アメリカ経済の繁栄の象徴ではなく、グローバリゼーションを象徴するものだった。
とはいえ、グローバリゼーションは、経済のみならず、政治、文化、社会といった諸分野の交錯する領域において現に今も進行している。それが指し示す事態は、多岐にわたっているだけでなく、重層的でもある。それゆえ、「グローバリゼーション」をキーワードとして語られる現代社会の諸相の、簡にして要を得た見取り図を示してくれる本書は待望の一冊と言えるだろう。著者はここ数年さまざまな媒体でグローバリゼーションについて論じてきており、それらは多くの部分で本書の内容と重なるのだが、こうして新たに簡便な新書の形で一冊にまとめ直されたことは、それらの多くを読んできた者にとってもありがたい。
本書の内容についても簡単に触れておこう。著者は、グローバリゼーションを帝国主義的な枠組みの再構成ではなく、新しい世界秩序の様式と捉えた上で、グローバリゼーション研究のテーマとして、第一に国境を越えた経済活動の拡大と国民国家に代替する新たなる権力の出現を対象としたポリティカル・エコノミーと、メディアを通じて生産されてきた大衆文化の世界的浸透や消費文化の均質化といったグローバル・カルチャーという二つの分野の接点を解明することによって両者の対話の場を切り開くこと、次に従来の社会科学や人文科学の思考様式における国民国家という枠組みからの脱却を構想することという二点を挙げている。
その上で、サッセンの「世界都市」、ウォーラーステインの「世界システム」論、ネグリ&ハートの「帝国」などについても批判検討を加えつつ、グローバリゼーションによってもたらされた地政学と資本蓄積メカニズムの変容やグローバル資本が新たな格差を生み出す過程を解明しながら、近代の延長にあって、それから区別された「現代」を問い直し、さらにグローバル資本に対抗する場を構想していこうとする。
それゆえ、本書は、時代の波に完全に乗り遅れてしまわないうちに、ビジネス・チャンスを掴むヒントを手っ取り早く手に入れようと考えている読者には失望を与えるかも知れないが、「現代」という時代を多角的に捉える視点を獲得するための、また未来への展望を切り開いくためのさまざまな示唆を与えてくれる一冊であると言えるだろう。
グローバリゼーションとは何か 液状化する世界を読み解く
2003/02/05 01:21
一般教養としての「グローバリゼーション」
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:けんいち - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨今のキーワードの1つが「グローバリゼーション」であることは間違いない。しかし、この一文が持つ曖昧さ──どの領域におけるキーワードなのか? どういった意味合いで鍵なのか? そもそも「グローバリゼーション」とはどういう意味内容を持つのか?──こそが、逆にこの言葉の使用を過剰に煽っているのが実際ではないだろうか。
もちろん、「グローバリゼーション」という言葉を、何らかの日本語に訳すことは、この際全く意味を持たない。重要なのは、個々の場において「グローバリゼーション」という言葉が用いられた文脈を正しく読みとること、そうした文脈を意識した受容ができるようトレーニングしておくこと、この2点に尽きるだろう。もちろんこれは「グローバリゼーション」という言葉に限らずコミュニケーション一般にも言い得ることだが、その重要性は格別のものがあるだろう。
そこで、トレーニングである。しかし「グローバリゼーション」について、何をどうトレーニング(勉強)したらいいのだろうか? そこで、実用的かつ応用にも対応可能で、もちろん現代社会の問題としての哲学的思考の土台になるたいへん便利な書物が本書である。類書は多くあろうが、本書の特徴は、その新書というスタイルのメリットを最大限に生かした点にある。つまり、専門家が、専門領域についての知識を、一般読者にわかりやすくかつ議論のレベルを落とさずに書く、ということである。本書は、一読すれば明らかなように、まずこの手の書物にしては異例なほどに読みやすい。だからといって、問題が問題なだけに、政治・経済・文化・国民国家・ITといった複数の問題系が複雑に交錯してくる。経済や国民に関する理論的なフォローも欠かせないのだが、本書はそれらを避けるのではなく、議論に組み込みながらも具体例を生かしながら明快に解説して見せてくれる。
本書は、単に本書の内容を理解するだけでも十分有益だが、今後「グローバリゼーション」という言葉を、読者が読者自身の文脈で考える際の重要な土台となるだろう。