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3件
佐々木丸美コレクション
著者 佐々木丸美 (著) , わたなべまさこ (著)
養い先の家で惨い仕打ちを受け家を飛び出した孤児の飛鳥は、青年・祐也に助けられ彼の元で育てられる。育ての親である祐也への愛を、飛鳥はひそかに募らせていく。そしてある日、殺人事件が発生したことから飛鳥と祐也の運命は大きく動き出す――。情感溢れる筆致で少女の想いをみずみずしく描き 、北海道を中心に一大ブームを巻き起こした珠玉の名作。
佐々木丸美コレクション18 夢館
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夢館
2012/02/05 21:27
大好きな作家さんです
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:お月見 - この投稿者のレビュー一覧を見る
佐々木丸美さんは、唯一無二といってもいいぐらい、独創的で幻想的なミステリーを書かれていた作家さんで、彼女の死後、著作のいくつかは絶版状態にあったのですが、最近になって出版社の壁を越えて続々と復刊されはじめました。長年のファンとしては嬉しいかぎりです。
中でも「夢館」は、発表当時、味戸ケイコさんの美しい表紙にひかれてハードカバーをジャケ買いしてしまい、でも中身もとても好みの作風で、はじめて触れた佐々木丸美作品ということを抜きにしても、思い入れのある一番好きな作品なのでした。
佐々木丸美さんの作品には、共通のモチーフのようなものがあり、「森は生きている」や、「シンデレラ」などの一連の童話(少女が迫害にあうが、やがて幸せにたどりつく)を下敷きに、美しく聡明な少女が、困難の果てに幸せをつかむ、というパターンが多いです。
これだけだと、甘甘の少女小説のようなのですが、時々挿入される深い知識に裏打ちされた心理の不思議、哲学への探求などが幻想的な文章の中にちりばめられて、独特な魅力を放っていると思います。
この作品は「館」シリーズの3作目なので、はじめて読む方は、1作目である「岸の館」から読むことをおすすめします。
2020/12/23 23:06
孤児という運命に翻弄される少女を描いた名作
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なのはな - この投稿者のレビュー一覧を見る
孤児として生まれた飛鳥が、引き取り手の本岡家を飛び出し、祐也に拾われ成長してゆく物語。殺人事件の犯人は誰か、という興味は最後まで続くが、ミステリ要素はそれほど多くなかったです。むしろ、孤児という運命に抗おうとして翻弄される飛鳥の生き方と、それを優しく見守るまわりの人々との交流を描いた点が魅力であると思います。祐也や史朗や友人の順子、姉みたいな厚子など良い人々に恵まれ、飛鳥はそういう意味では幸運でした。しかし、自らの「孤児」という運命と本岡家への憎しみの運命からは逃れられず、たびたび不安定になったりします。そういうドラマをしっかり書き上げた名作だと思います。
2020/12/19 12:39
アンチミステリの大傑作
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なのはな - この投稿者のレビュー一覧を見る
本格ミステリ低迷期に発表された本格ミステリの大傑作ですが、初めて佐々木丸美さんの作品を読みました。評価の高いことは知っていましたが、読み終わって「これはすごい!」と思いました。登場人物が限定された雪の館ミステリの典型的なパターンの本格ミステリですが、従兄弟同士の人間関係をものすごく丁寧に書き上げています。不可能犯罪、論理的推理、いくつかの小トリックが組み合わされた紛れもない本格ミステリですが、それ以上に作者は哲学的に犯罪動機を語るのに力を入れていて、これは文学小説として書かれたアンチミステリであると感じました。ここまで深いミステリにはなかなか巡り合わないです。本当に大傑作だと思います。