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ラヴェンナ:ヨーロッパを生んだ帝都の歴史
著者 ジュディス・ヘリン(著) , 井上浩一(訳)
「ヨーロッパの祖母」となった都市の盛衰
ローマ帝国の中心がコンスタンティノープルに移った4世紀末、西方に新しい都が台頭する。イタリアの都市ラヴェンナにおいて、アリウス派のゴート人とカトリックのローマ人は競って、比類なき建造物とモザイクを次々と創りだした。以来300年にわたりこの町は、学者・法律家・職人・宗教人を魅了し、まぎれもない文化的・政治的首都となる。この特筆すべき歴史をみごとに蘇らせて、本書はイスラーム台頭以前の地中海世界の東西の歴史を書き変え、ビザンツ帝国の影響下にラヴェンナが、中世キリスト教世界の発展にとっていかに決定的な役割を果たしたのかを明らかにする。
全37章の多くは、皇后ガッラ・プラキディアやゴート王テオドリックら支配者から、古代ギリシアの医学をイタリアに蘇らせた医師の業績まで人物に注目しつつ、多様な民族・政治宗教勢力のるつぼであったこの都市がヨーロッパの基礎を形づくっていくさまを追う。そして、都市史をより広い視野から地中海の歴史のなかに位置づける。
美しい図版と最新の考古学の知見によって、ヨーロッパと西方の文化へのラヴェンナの深い影響について、大胆かつ新鮮な解釈を提供する1冊。
ラヴェンナ:ヨーロッパを生んだ帝都の歴史
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ラヴェンナ ヨーロッパを生んだ帝都の歴史
2023/09/22 17:13
訳者によれば、「ヨーロッパの父」がカールなら、ラヴェンナは「ヨーロッパの祖母」であるという
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんとも静寂な風情がただよう。北イタリアのアドリア海湾奥にあるラヴェンナは中心街に五~七世紀の由緒ある建築物が集中する。ここを「訪れたことがない者は、驚きに満ちた体験、素晴らしい喜びを味わい損ねている」と著者は語る。ラヴェンナが歴史の表舞台に登場するのは四〇二年のこと。四世紀末、東西に分割されたローマ帝国の西方世界の帝都となり、皇帝と宮廷が迎えられた。ホノリウス帝の異母妹ガッラ・プラキディアもこの地に移住したが、帝権争いにまきこまれ、数年間コンスタンティノープル(現イスタンブール)に亡命する。やがて幼い息子ウァレンティアヌスの帝位就任とともにラヴェンナに戻った。その後の四半世紀、プラキディアは皇太后として宮廷の中心にあり権勢をふるった。彼女の霊廟(れいびょう)は「まばゆい星空と紺や金色の装飾」に輝き、初期キリスト教芸術の比類なき作品である。この地にあって、帝国支配の基盤となるゴート人とローマ人の融合が実現し、西方の都における帝権と教権との協同体制が築かれたのである。