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クラシック偽作・疑作大全
大作曲家が作曲したとされている作品のなかには、実は偽作と疑作が多数紛れ込んでいる。
ハイドンの『おもちゃの交響曲』「セレナード」、バッハの「メヌエット ト長調」、ヴィヴァルディの「忠実な羊飼い」、カッチーニの「アヴェ・マリア」、ベートーヴェンの『イエナ交響曲』……。
これらの楽曲は偽作あるいは疑作といわれている。偽作とは、その曲の作曲家とされている人物とは別に真の作曲家がいることが判明している作品、疑作は真の作曲家が別にいることが疑われている作品のことをいう。しかし、真作ではないから曲がつまらないというわけではない。先入観なしに耳を傾ければ、感動を覚えるような掘り出し物にきっと出合えるだろう。
これまでまとまった資料がなく、各作曲家の全作品事典や個人のウェブサイトなどに散在していた偽作・疑作の情報の断片をまとめ上げ、貴重な音源情報も網羅した初のガイドブック。クラシックファン必読!
クラシック偽作・疑作大全
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クラシック偽作・疑作大全
2022/07/20 22:07
「異稿・編曲」、「辺境・周縁」そして「偽作・疑作」
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
近藤健児氏は中京大学国際経済学教授。国際経済専門書も上梓する一方で、クラシック音楽の「マイナーな作曲家の埋もれた名品の発掘に燃えて世界中からCD」を蒐集しているクラシック音楽「オタク」である。既に『クラシックCD異稿・編曲のたのしみ』『辺境・周縁のクラシック音楽1・2』(青弓社)があるが、今回は「偽作・疑作」がテーマだ。
私も「クラシック音楽オタク」として、やや「クセ強」カテゴリを蒐集しているが、その一つがモーツァルトの「偽作・疑作」。「偽作」とはその曲の作曲家とされている人物とは別に真の作曲家がいることが判明している作品、「疑作」は真の作曲家が別にいることが疑われている作品のことをいう。
なぜモーツァルトではない作品にこだわるか。未完作品や断片を含めたモーツァルトの全作品音盤情報としては、「モーツァルト全ディスコグラフィー」(1983年ディスクポート西武・音楽之友社,増補改訂1991年小学館)があった。これを片手にモーツァルト未録音作品のLPを探し、全作品音盤を蒐集することが夢であった。今と違って当時は海外盤情報の入手は難しく、輸入店を回って足で探すしかなかった。しかしCD時代にはいり、1991年(没後200年)と2006年(生誕200年)のイベントがあり、各レーベルが全集・全曲録音や企画盤をリリースした。この結果未完作品・断片まで含めたモーツァルト真作のほぼ全てが網羅され、一つの夢は達成された。
しかし「偽作・疑作」はそうではなかった。真正の作品ではないので、録音しようというレーベルはない。また、録音されても真作録音の「オマケ」「ついでに」録音されることが多い。さらに真の作曲家は、その作曲家がモーツァルトのような大作曲家ではないことが通例なので、その作曲家の作品として録音される機会も乏しい。
著者は「偽作・疑作」のまとまった作品と音源情報をコンパクトにまとめた本があればという思いを長年抱いてきたが、一向にそんなものは出版されないので、自分で執筆したのだ。この無謀な英断と「オタク」的プロジェクトに快哉を叫びたい。
何故「偽作・疑作」にこだわるかというと、モーツァルトをより知ることができるからだ。「偽作」には、モーツァルトが作曲の参考のため筆写した楽譜が自筆と誤解されたものもある。また、勝手に「モーツァルト作」として出版された作品もあるが、出来がいいなのでそのままにしておいたために「偽作」となったものある。さらには、モーツァルト作として後世に捏造された「贋作」すらある。このように「偽作・疑作」には、モーツァルトの作曲の秘密、同時代のモーツァルト愛・受容史などが隠されている。また、「名曲」の掘り出しものの作品もある、と、まあ、これは表向きの理由。結局は「偽作・疑作」・「編曲」を含めた「全」作品音盤コンプリート、というアホな「オタク的」願望である。
モーツァルト作品情報『ケッヘル作品目録』には「偽作」88曲と「疑作」309曲が整理されている。また、最近の研究では30曲以上の疑わしい作品もあり、総数では430曲近くなる。著者は断片的で散在している情報を丹念に集めている。全ての音盤情報ではなく、65曲15%程度しか扱っていないが、有名な「偽作・疑作」はフォローしており、モーツァルトの「偽作・疑作」の全貌は窺い知ることはできる。
NHK-FM「クラシックの迷宮」MC片山杜秀氏は大学教授(政治思想史)・音楽評論家で、膨大な音盤コレクションを駆使した博覧強記を武器にクラシック音楽を論じている。近藤氏も大学教授・音楽オタク。クラシック音楽オタクの双璧として、独創的な視点でクラシック音楽を論じ、新しい聴き方を開拓してほしい。
クラシック偽作・疑作大全
2023/07/04 17:25
類書はないと思うが偽作・疑作のファンってそんなに存在するの?
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:.ばっは - この投稿者のレビュー一覧を見る
「カッチーニのアヴェマリア」からまでマーラーまで
別人の作品であることが明らかな偽作、当人の作品とは確信できない疑作を
紹介する一冊。
大作曲家程、当人の名を騙る偽作・疑作は多いので本書でも多くの作品が
扱われているのはバッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン
記載情報は既存音源、文献、ネットから集めたもので、
世の定説もあるが集めた情報から著者が導いた仮説もある。
音楽学者ではなくマニアな著者だからこそ集めた情報量としてはかなりのもので
資料としては有用かも。
そして、これだけ情報を出されると真作ではないとはいえ、どんなもんだろうと
聴いてみたくなる。
まあ私も自他共にバロック、バッハについてはマニアの領域だから、
この項において未知の情報はなかった。
久保健著バロック編
『カッチーニのアヴェ・マリア』
ベネヴォリ『53声のミサ曲』
ヴィヴァルディ『忠実な羊飼い』
『アルビノーニのアダージョ』
ヘンデル『ヴァイオリン・ソナタ』
J.S.バッハ
カンタータ、モテットとシェメッリ歌曲集、ルカ受難曲BWV246、
ラテン語教会音楽、トッカータとフーガニ短調BWV565、
AMB音楽帳のクラヴィーア曲、フルート・ソナタ他室内楽作品、
管弦楽組曲第5番BWV1070
ペルゴレージの『コンチェルト・アルモニコ』
クライスラーの『○○の様式による□□』他