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27件
黒牢城
著者 米澤穂信(著者)
本能寺の変より四年前。織田信長に叛旗を翻し有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起こる難事件に翻弄されていた。このままでは城が落ちる。兵や民草の心に巣食う疑念を晴らすため、村重は土牢に捕らえた知将・黒田官兵衛に謎を解くよう求めるが――。事件の裏には何が潜むのか。乱世を生きる果てに救いはあるか。城という巨大な密室で起きた四つの事件に対峙する、村重と官兵衛、二人の探偵の壮絶な推理戦が歴史を動かす。
黒牢城
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黒牢城 Arioka Citadel case
2021/09/11 11:50
米澤穂信が描く戦国ミステリー
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
大変面白く読ませていただきました。
戦国ミステリーという新しいジャンルだけど、読み応え十分な物語に謎解きが混ざって、複雑な展開が楽しめる。
勝っては人を殺し尽くす信長に反旗を翻した村重。
村重は殺さないが、殺さないことで牢獄の官兵衛に恨まれる。何が悪で、何が、人々を幸せにするのか分からないと問われているようだ。また「弱いものが悪いのだと物事を簡単に片付けて心を楽にしようとする」は自己責任を問われる今の政治批判にも聞こえる。
村重対官兵衛の心理戦が楽しめる。
黒牢城 Arioka Citadel case
2022/02/02 09:50
読者に答えを突きつける官兵衛
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
米澤穂信が描いた小説である。どの分類に属するのかは分からないが、ミステリーといえばそうであるような気がする。時代小説であるともいえよう。どの時代かと言えば、織田信長が天下人になろうとしていた時代である。織田が秀吉、光秀を従えて京に上っていた際に、織田に反旗を翻していた戦国武将、荒木村重が主人公である。
ただし、よく読めば村重が主役なのか、相手の黒田官兵衛が主役なのか、よく分からなくなるというストーリーである。その辺りがミステリーと言えないこともない。織田方の官兵衛が村重を説得しに使者として有岡城を訪れた。村重は官兵衛を牢に閉じ込めてしまう。
本書はいわばエピソードが複数ある短編集が実体なのであるが、各々のエピソードで有岡城主の村重の頭を悩ます問題が起こる。散々考えても納得のいかない解決策しか見いだせない。その際には牢に閉じ込めてある官兵衛に、意見を求めに行く。この辺りがミステリー風の出来上がりになっていると言えるかも知れない。
いかにも軍師として名を馳せた官兵衛らしい答えであるが、明快な答えを出すわけではなく、いわばヒントを出すので、あとは自分で考えろと言わんばかりの答えなのである。もちろん、村重ばかりではなく読者にも突きつけているわけである。
米澤穂信の時代小説は今回が初めてなのかも知れないが、こうなると時代や登場人物によるミステリー仕立てではなく、ストーリー自体がミステリーで、読者にも考えさせる一種のミステリーサービスなのかも知れない。さすがに直木賞受賞作品である。面白かった。
2022/05/15 08:06
世の常
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:藍花 - この投稿者のレビュー一覧を見る
荒木摂津守村重は、信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠る。
秀吉の使者・官兵衛に翻意を促されるが、城内の土牢に閉じ込めてしまう。
毛利の援軍を待つ城内で奇怪な事件が起こり、家中の動揺が収まらなければ落城は免れない。村重は官兵衛の力を借りても謎を解かねばならない。
米澤穂信さんの直木賞受賞作です。
戦国の世の習いとミステリーを絡めて、村重が追い詰められていく様を存分に描いています。
史実を知っていても、この先どうなるかと手に汗握って読み進めました。
官兵衛が示唆するとおり、自分が思っているのとは、実は逆というのが世の常ということでしょうか。