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216件
ブルーピリオド
著者 山口つばさ(著)
成績優秀かつスクールカースト上位の充実した毎日を送りつつ、どこか空虚な焦燥感を感じて生きる高校生・矢口八虎(やぐち やとら)は、ある日、一枚の絵に心奪われる。その衝撃は八虎を駆り立て、美しくも厳しい美術の世界へ身を投じていく。美術のノウハウうんちく満載、美大を目指して青春を燃やすスポ根受験物語、八虎と仲間たちは「好きなこと」を支えに未来を目指す!
ブルーピリオド(16)
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2022/11/23 18:31
二項対立に囚われない、解釈。
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
ひょんなことからノーマークスというアーティスト集団と関りを持つことになった八虎。
そこの長である不二桐生は、独特な人柄で数々の人々を魅了しており、八虎もまた彼女との交流を経てアートの楽しさを再認識していく。
しかしノーマークスには良くない噂が流れており、藝大の教師や学生からはいい顔をされない。
このままノーマークスや不二桐生との交流し続けていいのか、という葛藤する八虎だったが、その悶々とした思いが次第に「罪悪感」について描きなさいという課題と結びついていく。
ブルーピリオドの魅力の一つとして、登場人物たちの悩みや葛藤がアートという枠組みに留まらず、人生や哲学といったより普遍的なテーマを内包していることが挙げられるだろう。
前巻ではアートと学歴、アートと環境、といった藝大の存在意義を問うテーマが主題とされていたが、13巻ではそこから更に一歩踏み込んでいき、"正しいもの"と"正しくないもの"の境界線、良い悪いの判断基準、といったより抽象的な概念に対して疑問を突き付ける。
そうした哲学的な問いを「罪悪感」という課題のテーマに落とし込むことができたのは、人一倍他者からの視線に敏感な八虎だからこそ。
これまで以上に哲学的なコンセプトを扱った課題だったからこそ、八虎は新たな視点で物事を見るようになっていく。
誰かにとって忌み嫌う場所でも誰かにとっては守りたい場所になり得るし、誰かにとって肯定したいものが誰かにとっては否定の対象となり得る。
白か黒かという二項対立に囚われるのではなく、そのはざまで揺れ動くことでしか見えないものもあるのだと八虎と共に私たち読者も気付かされるはず。
そして後半ではついに八雲がフォーカスされる。
個人的に最も好きなキャラクターなので今後の展開が非常に楽しみ。
2019/04/19 23:02
ただの美大受験漫画ではない
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:黒豆 - この投稿者のレビュー一覧を見る
成績優秀でリア充の男子高生が、ふとしたきっかけで絵に目覚め、日本最難関の東京藝大を目指す物語。
器用だけれど特別な才能がある訳ではない主人公が、絵に惹かれて美術部に入部するまでの描写はちょっと胸が熱くなります。
作者自身が東京藝大出身らしいので、もちろん美大受験モノとしてもかなり楽しみです。
2022/07/09 18:12
アートと学歴。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
いつしか見切り発車で絵を描くことに恐れを抱くようになっていた八虎。
受験前は誰よりも枚数を描いていたにもかかわらず、手を動かす前に頭の中で練るようになってしまう。
そんな彼に助言を与える八雲は相変わらずカッコイイ。
飄々としており一見ガサツな印象を与える彼だが、非常に博識で自身で思考することを怠らない。
とここまではこれまでの「ブルーピリオド」でも見受けられるシーンだったが、後半は怒涛の展開を見せる。
アートに学歴は必要か。
そもそもアートとは人から教わるべきものなのか。
藝大は学生に何を教える場なのか。
といった藝大の存在意義を問うようなテーマで物語は進んでいき、八雲同様マイペースでありながらも圧倒的な知識量をもつ新キャラも登場する。
また、藝大だからこそ痛感するであろう挫折や違和感を描いているにもかかわらず、
人生における選択と責任といったテーマを内包させる著者の見事なストーリーテリングは圧巻。
今まで以上に次巻が気になるエンディングだった。