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153件
違国日記
著者 ヤマシタトモコ
【電子限定!雑誌掲載時のカラー原画を特別収録!】35歳、少女小説家。(亡き母の妹) 15歳、女子中学生。(姉の遺児) 女王と子犬は2人暮らし。
少女小説家の高代槙生(こうだいまきお)(35)は姉夫婦の葬式で遺児の・朝(あさ)(15)が親戚間をたらい回しにされているのを見過ごせず、勢いで引き取ることにした。しかし姪を連れ帰ったものの、翌日には我に返り、持ち前の人見知りが発動。槙生は、誰かと暮らすのには不向きな自分の性格を忘れていた……。対する朝は、人見知りもなく、“大人らしくない大人”・槙生との暮らしをもの珍しくも素直に受け止めていく。不器用人間と子犬のような姪がおくる年の差同居譚、手さぐり暮らしの第1巻!
違国日記(11)【電子限定特典付】
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2023/10/09 17:13
人と人とは分かり合えないし、理解し合えない。それでも、、、。
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
人と人とは分かり合えないし、理解し合えない。
その事実を大前提としたうえで、「それでも」ともがく姿勢を本作は見事に描き切った作品だと言える。
槙生と朝の関係だけでなく、それぞれの友人との関係性も丁寧に描くことで、「人と人とは分かり合えないし、理解し合えない。それでも、、、」というテーマを多角的な視点で映し出すことに成功しているのだ。
私たちが抱える孤独、怒り、虚無などは本来、そのどれもが本人だけのものであり、他者に共有する必要もなければ理解してもらう必要もない。
それでも私たちはそれぞれが抱える孤独、怒り、虚無など私たちが抱え込んだものを、誰かに伝えたい、誰かに聞いて欲しいと思ってしまう。
そうした葛藤を抱きながらも、いや、抱いているからこそ私たちは他者に手を差し伸ばし続けたいと思ってしまうのではないか。
ただ一方で、そういった行為は決して容易でないことも本作は描いていく。
醍醐が槙生に言ったように、「そのしんどい努力をしなきゃいけない」し、「心を砕く」ことを伴う行為なのだ。
でも、だからこそ分かり合えないという事実に抗おうと手を伸ばし続ける行為はどこまでも尊く美しい。
そして、その瞬間を幾度となく描いてきた本作だからこそ、ここまで心震わされたのだろう。
誰かの言葉を鵜呑みにするのではなく、自分だけの言葉を探し続け、それを相手に伝えること。
その大切さ、尊さ、美しさを再確認したいと思うたび、私は本書を手に取るだろう。
違国日記 1 Journal with witch (FC swing)
2021/02/15 15:48
このコミックの肝は、叔母・槇生のコトバの数々。
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
人見知りが過ぎる小説家の叔母・槇生と、交通事故で、突然両親を失った姪・朝が一緒に暮らし始めることに。槇生は、姉である朝の母親と折り合い悪く、音信不通のまま、朝に出会ったのも、お葬式のその日で...。この設定にいきなり緊張するが、物語は、少し成長した朝が、ごはんを作るシーンから始まり、穏やかなテンポですすむ。
最後まで読み進めば、この作品は、この叔母・槇生が、朝にかけるコトバの煌めきでなりたつ物語だなぁと思う。
暮らしの様々な場面に落とし穴のようにちりばめられたステロタイプな呪いのコトバ。それを払しょくするように、槇生は訥々と述べる。たとえば、冒頭、お葬式のシーンで親戚たちが朝について交わす心無いコトバに対し、「15歳の子供はこんな醜悪な場にふさわしくない。もっと美しいものを受けるに値する」といい放ち、家に連れ帰る一連のシーンからしてジワッときました。
2019/05/02 18:35
突然同居することになった叔母は、まるで違う国の住人
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みやび - この投稿者のレビュー一覧を見る
突然の事故で両親をうしなった高校生、朝は15歳。
姪が親戚中をたらい回しされそうになる状況を見ていられず、思わず引き取ってしまう叔母、槙生は少女小説の作家。
「わたしはあなたの母親が心底嫌いだった。死んでなお憎む気持ちが消えないことにもうんざりしている。……(中略)あなたを愛せるかどうかはわからない。でも、わたしは決してあなたを踏みにじらない。それでもよければ、明日も明後日もずっとうちに帰ってきなさい」
親を亡くしたばかりの娘にこんな言葉をかけてしまうあたり、およそ普通の感覚とはかけはなれているのだけど、槙生には嘘も誤魔化しも、綺麗事をいうという発想もない。
暮らしぶりも価値観も、槙生は朝にとってまるで違う国の住人だ。それでも朝は順応性の高さと家事能力の高さで、着実に領土を築いていく。
ヤマシタさんの描く女の子は、(誤解を恐れずにいうと)雑草のようなたくましさがある。逆境にめげない、思わず応援したくなるような子だ。
槙生は、およそ身近にいないタイプ。おっかなくて遠巻きにしちゃいうだろうけど、かっこいいなあと思う。
ふたりが作りあげる絶妙の距離感、槙生の一本筋の通った生き様に惹かれます。今後の展開も期待大です。