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25件
失踪日記
著者 吾妻ひでお
「全部 実話です(笑)」(吾妻)
突然の失踪から自殺未遂・路上生活・肉体労働──『アル中病棟』に至るまで。
著者自身が体験した波乱万丈の日々を、著者自身が綴った、
今だから笑える赤裸々なノンフィクション。
・第34回日本漫画家協会賞大賞
・平成17年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞
・第10回手塚治虫文化賞マンガ大賞
・第37回日本SF大会星雲賞ノンフィクション部門
数々の賞を受賞した名作が待望の電子書籍化!
さらに、電子書籍限定特典として関連作品を収録!
これはもう総てのアズマニア、だけでなく
総ての現代人にとっての福音の書だと思いました。
面白くて面白くて、泣く暇も震える暇もありません。
[足の丸い四頭身で描かれた現代の新約聖書]て事でどうでしょうか。
受難の煉獄とも言える全編を覆う、強烈な生命力が
軽妙ですら有ります。
──菊地成孔(ミュージシャン)
●単行本カバー裏 インタビュー『裏失踪日記』収録●
【電子書籍限定特典】
・『放浪日記』2006年
・『失踪こぼれ話』2001年
【目次】
夜を歩く
街を歩く
アル中病棟
巻末対談 吾妻ひでお×とり・みき
裏失踪日記
失踪日記 電子書籍限定特典
失踪日記2 アル中病棟【電子限定特典付き】
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失踪日記 1
2005/08/04 08:55
世界がひっくり返っても絶対に宿無しにはならないだろうヒトも必読
17人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SnakeHole - この投稿者のレビュー一覧を見る
いやどうにもこうにもこれはものすごいマンガである。数年前の「刑務所の中」(花輪和一著)もすごかったがこれもすごい。89年11月,マンガ家吾妻ひでおは月刊誌の仕事をほっぽり出していきなり失踪してしまう。そして……巻末にあるとり・みきとの対談によれば西武線の奥の方らしいんだが,とにかく団地のそばの雑木林の中でいわゆるホームレス暮らしを始めるのだ。
なんつうかなぁ,オレなど昔から町で宿無し(上で「ホームレス」ちう言葉に「いわゆる」をつけたようにオレは基本的にこの横文字言葉が嫌いである。「宿無し」つう立派な日本語があるぢゃないか)の人を見かけるたび,明日は我が身というか,彼我の間に横たわる距離の短さ,壁の薄さを切実に感じてたクチなので,気持ちわかるなぁ。仕事キツいとき駅とかで電車待ってるとふと「逃げちゃおうか」とココロに浮かぶんだよな,やりませんけど。
不審者として警察に引っ張られ,身元がバレてファンだという警官に子供宛の色紙を描かされるくだりが傑作。このへんは実話だけが持つおかしさだよな。全国の宿無しのヒト,潜在的宿無し候補のヒト,そして世界がひっくり返っても絶対に宿無しにはならないだろうヒトも必読。続編も楽しみである。
失踪日記 1
2012/05/18 03:20
SF以上に不条理で奇想天外な実人生のスペクタクルを、最高水準の漫画で。
11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しのはら - この投稿者のレビュー一覧を見る
我が目を疑いました。かわいいキャラしてマニアックな「不条理SF漫画」で、ディープな読者の熱狂的指示を受けていた著者が、『失踪日記』だなんて。
でも確かに、実際に著者が仕事への行き詰まりから失踪した日々のエピソードが、淡々と描かれているのです。孤独な野外生活・漫画とはかけ離れたガテン系の仕事・アルコール依存症での強制入院と、ビッグウエーブの連続に、涙よりもめまいが。
しかし、仕事場からふらりと逃げてしまったり、幻覚への恐怖から連続飲酒の深みにはまるような「人の心の弱さ・危うさ」を描く一方で、それ以上に、漫画家の七つ道具を武器に拾った素材で寝床を整え、漁ったゴミを時には調理し、工夫を重ねて生き延びる「命根性・強さ・したたかさ」をも描き、ひとりの人間の中に、その両方がちゃんと存在している事を思い出させてくれます。
そんな中で出会う、個性的な人々との係わり合いからは、「生きていく事の、ややこしさと面白さ」を、さらに実感させられます。
そして何より、漫画としての表現が超一流!
あの、独特の丸っこいキャラと乾いたタッチ、クールな視点は健在。王道のコマ割り・構図・背景・濃淡も美しく、リアルに描けばシャレにならないような痛いエピソードを、絵柄と語り口で「あはは」と読ませてしまうのです。
これは、小説や実写ではちょっときつい、「吾妻ひでおの漫画」でなければ、成立しない作品かもしれません。
本書は衝撃的な内容ではあるけれど、同時に最高に面白く、最終的には「こんな完成度の高い漫画を描かれたのだから、吾妻先生は大丈夫!」=「弱いけど強い、人間は大丈夫!」と心強く思える本でした。
時折登場する奥さまが、口はへの字で仁王立ち。お不動様みたいで頼り甲斐があって、後光がさしてみえました。家内安全の守り神ですね。
奥さまといえば、同時期に読んだ西原理恵子さんの『毎日かあさん・入学編』は、本書と同じテーマを女性の側から書いてある、互いに裏と表の本ではないかと感じました。男もつらいけど、女もたいへん。本書をお読みの方は、そちらもぜひ。
失踪日記 1
2005/03/25 00:51
壮絶な話なのに面白い!
11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:木の葉燃朗 - この投稿者のレビュー一覧を見る
マンガ家吾妻ひでお氏の、失踪生活を描いた漫画。
イントロダクションには「このマンガは人生をポジティブに見つめ、なるべくリアリズムを排除して描いています」(p.5)、「リアルだと描くの辛いし暗くなるからね」(p.5)とあるが、それでもかなりすごい生活をしていたことが分かる。
収録されているのは、ホームレス生活を描いた「夜を歩く」、失踪の後、ホームレスを経てガス関係の肉体労働に従事する「街を歩く」、アルコール中毒になり、強制入院した日々を描く「アル中病棟」の三部。「街を歩く」の後半は、マンガ家デビューした当時の思い出話で、これもまた面白い。
多分、この内容を、例えばつげ義春氏のような絵で描いてあったら、少なくとも俺は読むのに抵抗があったと思う。しかし、吾妻氏独特の丸っこい、かわいい絵で描いてあるので、読むのがつらくない。むしろ面白い。
それから、当時の出来事の中で、マンガに描いて面白いものを選んでいることも、この本の魅力だろう。
例えば、捜索願いが出ていたため、警察で保護された時に、警察官の中に吾妻氏のファンがいて、色紙に「夢」と書いてくれと頼まれる、とか。
あるいは、ガス関連の会社で働いていた頃、社内報にマンガを投稿して採用された、とか。働いていなければ働きたくなり、肉体労働をしていると芸術がしたくなるらしく、あれほど描けなかったマンガを描いたらしい。これは興味深かった。
このあたりについては、巻末のとり・みき氏との対談でも触れられていますが、やっぱり氏の上手さだと思う。
吾妻氏を知らない人にとっても、ノンフィクションのマンガとして面白いのではないかと思います。