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6件
あの日から
著者 著者:しりあがり 寿
3.11…史上最悪の震災によって、すべてが変わってしまったあの日。それ以来、しりあがり寿は、誰にも追いつけないスピードとヴィヴィッドさで、東日本大震災をテーマにしたマンガを描き続けている。震災からわずかひと月後に掲載され、ネットや新聞・雑誌などに大きな反響を呼んだ月刊コミックビーム発表作を中心に、朝日新聞夕刊連載の4コマ『地球防衛家のヒトビト』など、未曾有の危機の時代に挑むように、アグレッシブに天才が発し続けたマンガ作品を集めた緊急出版本、ついに電子化。
あの日からの憂鬱
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あの日からのマンガ (BEAM COMIX)
2011/10/15 20:55
まだ途中
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
「あの日」とは、東日本大震災が発生した 2011/03/11 のこと。
朝日新聞夕刊に連載されている4コママンガ「地球防衛家のヒトビト」と「月刊コミックビーム」「小説宝石」に掲載された震災及び原発事故がテーマの短編が収録されている。
テーマがテーマだけにマンガのネタにしてしまっていいのか、とも思うが、作者は「”たとえ間違えているとしても、今、描こう”と思いました」と覚悟の上だ。
作者自身、震災1ヵ月後、ボランティアに行っているので、被災地の状況や避難生活をしている人達の暮らしぶりの描き方には、実感がこもっている。
印象的なのは、建物の被害もあまりない地域から、津波の被害にあった地域に入った時の様子。
「とつぜん、なにもなくなった・・・」
という一文と、その後、瓦礫を描くコマが4コマ続く。
その落差を思い浮かべると、ゾッとするものがある。
それから、東京へ帰るので、別れの挨拶をするシーン。
「みなさん、今日、これからは?」
と聞くと
「今日、これからも何も・・・
ず~~~~~っと復興です」
という答え。
遠い昔に終わった事のように思えてきてしまうが、被災地の人にとっては、まだまだ「途中」でしかない。
それでも4コママンガの方は、「エッセイマンガ」のような感じだが、短編の方はかなり痛烈な皮肉が込められている。
エネルギーシフトをした結果、暮らしは不便になったが、キレイな夜空を取り戻した、という話や放射性物質を擬人化したブラックな話、延々と議論ばかりしていて、事態を少しも前に進めない鳥のいる森の話などなど。
様々な意味で胸に突き刺さるものばかり。
短編の中で、一番、印象的なのものは最後に収録されている「そらとみず」
この短編には、セリフらしいセリフは出てこない。悲しい話なのだが、ラストに救いを感じるものだった。
震災から時間が経ったが、まだ何も終わっていない、という思いを新たにした。
あの日からのマンガ (BEAM COMIX)
2011/12/13 19:50
「あの日からの日本」を生きる全ての人へ
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Yosh - この投稿者のレビュー一覧を見る
「3・11」以後、著者が「朝日新聞」(夕刊連載『地球防衛軍のヒトビト』3月15日~5月21日掲載分)、「コミック・ビーム」(5月号~8月号掲載の短編4話)、「小説宝石」(『川下り双子のオヤジ』5月号~7月号掲載の短編3話)、「TV Bros.」(『はなくそ時評』4~6月掲載の6篇)に発表した、東日本大震災および福島第一原子力発電所事故をテーマにした漫画を収録。
或る女性作家が、3・11直後にこんなことを書いていた。医者や消防士、自衛隊のような手に技術を持つ人達は、被災地に行っても即戦力としてすぐ活躍し、貢献することが出来る。それに引き換え、そういう特殊技能を持ち合わせていない作家などは何の役にも立たず、せいぜい本の朗読くらいしか出来ることがない――。
別に作家に限らず、これは震災後に殆どの日本人が共通して抱いていた悔しさ/切なさだと思う。未曾有の大惨事を目の当たりにし、自分に何が出来るのかどんな風にお役にたてるのかと自問自答してみても、その答えが見出せずただ途方に暮れるだけ。募金をしたり救援物資を提供するだけでいいのかと、己の無力さ/非力さに歯軋りするくらい情けない思いをした人は多い筈だ(少なくとも、ぼくは強い無力感に打ちひしがれた)。
しかし、作家や音楽家といった「表現者」は普通の市井の人々は異なり、直接的/一次的救援活動こそ出来ないが、被災された人々を始めとする多くの人々を励ます間接的/二次的(精神的)支援をすることは出来る。そして場合によっては、この災害――特に原発事故――の本質を分析して世に問うたり、意見を広く表明することが可能である。しりあがり氏の凄いのは、「3・11」に真正面から向き合って作品を描き始めた時期の早さと、量と、アプローチの多様さである。今となってはどうとでも言えるが、地震直後に――大多数の「表現者」が、何を、どう表現していいか分からず茫然自失・躊躇している間に――猛然と創作活動を始め、しかも極めて質の高い作品を連打したことに目を見張る。
ぼくも愛読している『地球防衛軍のヒトビト』は脱力系半歩手前のゆる~いユーモアとペーソスを基調としている四コママンガである。震災以降の掲載作でも基本テイストは変わっておらず、著者自ら4月上旬現地へボランティアに赴く経緯を描いた一連の作品も、「珍道中」的興趣に溢れていて、その変わらなさぶりにどこかホッとさせられる。しかし、であるからこそ、5月2日、6日、7日掲載分(本書P53~P54)は極めてショッキングである。ゆるいテイストを貫いていたしりあがり氏ですら、その手法を放棄せざるを得なくなった事実に、読者は、生半可な想像では及びもつかない現実の過酷さを否応無く知らされたのである。
『地球防衛軍のヒトビト』が日常ユーモアスケッチであるのに対して、「コミック・ビーム」掲載の四篇は、しりあがり氏のもう一つの側面――『真夜中の弥次さん喜多さん』や『メメント・モリ』がその典型だが――シリアスでシュールでブラックな思索と方法論が一気に炸裂する。中でも『×希望』は、「表現者」ならではの想像力を駆使した一つの成果で、とりわけラストカットが衝撃的だ。その一方で、3・11後の日本の未来をSF的に描いた『海辺の村』、東京を捨て東北で子供を生むことを決意する女性の物語『震える街』、台詞が全く無い『そらとみず』の三篇は、過酷な現実を描きつつも、それを乗り越えんとする作者の真摯な祈りが、赤裸々に、顕わになっている。特に『そらとみず』は、無辜なる民への鎮魂歌(レクイエム)とでも呼びたい荘厳かつ哀切な作品で、自然と敬虔な想いにさせられる傑作である(宮崎駿『風の谷のナウシカ』を連想した人もいるだろう)。
本書『あの日からのマンガ』は、「あの日からの日本」を決して忘れることのなきよう、日本内外で暮らし日本を愛する全ての人々が、今読むべき一冊である。
あの日からのマンガ (BEAM COMIX)
2015/12/31 16:20
この本だけは,絵柄抜きで読んでほしい
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まさ - この投稿者のレビュー一覧を見る
しりあがり寿さんは,たまにお見かけするけれど,自分とはあまり相性がよくないんだろうと思いこんでた.勝手に思い込んでた.川下りする双子のおじさんが通った森の中に,ずっといたんだろう.これからもいるんだろうか.ともかく,読んでよかった.