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93件
テルマエ・ロマエ
著者 著者:ヤマザキマリ
すべての“風呂”は、“ローマ”に通ず。
「マンガ大賞2010」と「第14回手塚治虫文化賞短編賞」をW受賞、実写映画(主演:阿部寛)も記録的な大ヒットとなった超ベストセラー・爆笑コミック!
紀元前128年、第14代皇帝ハドリアヌスが統治し、かつてない活気に溢れているローマ。すべてに斬新さが求められるこの時代、古き良き浴場を愛する設計技師のルシウス・モデストゥスは、生真面目すぎる性格が時代の変化に合わず、職を失ってしまう。落ち込むルシウスは友人に誘われた公衆浴場から、突然現代日本の銭湯にタイムスリップしてしまい……!?
テルマエ・ロマエVI
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テルマエ・ロマエ 1 (BEAM COMIX)
2010/07/26 16:22
目から鱗がおちた。風呂がこの上なく新鮮になる!
18人中、18人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
目から鱗が落ちる、とはこういうことを言うのではないだろうか?
まずこれははっきり言って、ギャグ漫画である。
五賢帝、パクスロマーナなどと言われ多いに勢力を伸ばしていた古代ローマ。
最新の技術をもっていると過信していたローマ人だが、ある建築家はよりよい「風呂」の建築に悩んでいる。その彼が溺れ、意識を取り戻すとそこは21世紀、現代日本の風呂&温泉の中!
そこには観たことも無い文化と器具があり、聞いたことの無い言葉をしゃべる異星人のような「平たい顔の民俗」たちがいる。(もちろん日本人のことだ)
戸惑い恐れ混乱しつつも この時代この国日本の最新?技術と文化に脱帽し、ローマ人としての自信とプライドを多いにくずされるのである。
再度溺れて古代ローマに戻った彼は見たモノ触ったものを彼なりに再現し、革新的な「風呂」をローマに作り出す。
彼は瞬く間に成功を収めるが下等民俗(もちろん日本人)に完全に敗北したこと、結局はまねごとであるという秘密に苦悩し続けるのだった・・・
というのが大筋で、毎回これが時と場所を変えては繰り返される。
それにしてもなんというか、リアルだ。
絵がリアル、というのもあるけれど なによりリアルなのはタイムトリップ&ワープした先の日本で全く言葉が通じず、自分がどのような状況にあるのかが結局彼には何一つ解らないままである、ということだ。
よくあるご都合主義の漫画のように、なぜか言葉が通じて意思疎通が出来てしまう、ということはまず無い。当たり前なことだけれど、それがなんとももどかしく、同時に面白くて笑ってしまう。
最初に目から鱗が落ちた、と言ったのはその当たり前の設定あってのものだ。
私たちがなんと言うこともなしに当たり前に使っている電気、湯沸かし、石けん、風呂桶、タオル、風呂上がりの牛乳(笑)や酒。
そうしたものは古代ローマ人にとって信じられない大発明である。
言葉すら通じず自分の想像力だけで(時には的外れな)予想をたて、これはこうするものであろう、これはこういうものだろうと再構築する彼の姿を見ていると、普段使い慣れている石けん一つにもすごいパワーを感じてしまうのである。
いや、まさに目から鱗が落ちた。
今度また2巻が発売されるという。これはもう見逃せない。
古代ローマ時んである彼はこちらの世界にすっかり魅了されているが、読者である私、日本人は彼の今後に興味津々なのである。
テルマエ・ロマエ 1 (BEAM COMIX)
2009/11/27 21:36
ローマ帝国の建築家の真面目さに大爆笑
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:プチトマ - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず奇抜な設定の大勝利!でも登場人物の転がし方がさらに秀逸。
表紙と帯の案内文だけで買いましたが大当たり。
設定だけであとはつまらないそこらの凡作とは大違い。
ローマ帝国の誇り高き帝国民であり、勤勉な風呂建築家のルシウスは
ある日発想に行き詰まり、公衆浴場で悩んでいたところなぜか
現代日本の風呂にタイムスリップ。
風呂絵、フルーツ牛乳、露天風呂・・・・
他民族の優れた文明にローマ人の自信を失いかけながらもそれを
元の時代に取り入れる。斬新さから彼は一躍「天才風呂建築家」に。
その名声は賢帝ハドリアヌス帝の耳にも。
「顔の平らな民俗」の風呂文化に真面目に驚愕し真摯に取り入れる
ルシウスと周りの反応が笑いのツボにはまりまくる。
タイムスリップという非現実にさえ目をつぶれば、
人物描写は奥深く、時代考証にも手抜きはない。
朝日新聞の書評に載るのは確実と見ますが。
テルマエ・ロマエ 1 (BEAM COMIX)
2010/04/04 07:09
古代ローマと現代日本。大真面目で職人気質の風呂設計技師ルシウスがタイムスリップ…!必読の「マンガ大賞」受賞作品。
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:月乃春水 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この表紙!目に飛び込んで来ますよねぇ…。わたしも書店でバーン!とご対面。こ、こ、これは読まねば…という衝動に駆られて購入しました。
ギリシャ彫刻かと見紛う表紙のこの方(手に持つは風呂桶に赤い手拭い、それともアカすり!?)、建国から約八百年、紀元128年のローマに住むルシウス・モデストゥス、職業は設計技師(風呂限定!)。
公衆浴場の建設案は古い、今のローマが求めているのは斬新さだ、と切り捨てられてしまいます。
屈辱に震え、悩むルシウス。これがまた、彫刻そのものような、彫りの深い顔で苦悶するものだから、読者も悶絶してしまいます。
明るく気さくな友人マルクスとひとっ風呂浴びに行き、風呂に潜り込んだルシウスは、排水溝に吸い込まれ、息も絶え絶えにぷふァッ!と水面から出てみれば、そこは現代の日本の銭湯であった…。
驚愕するルシウス。それも当然…!そして妙に人懐っこくやさしく親切な「平たい顔族」日本人。
壁に描かれた富士山(ルシウスはポンペイのヴェスビオス山と勘違いするのですが)、黄色いプラスチック製の洗面器、壁に張られた広告ポスター(ルシウスが言うには「催し物の告知」)、着替えを入れるカゴ…ひとつひとつを驚きの目で見てはチェック。
さらには「さァさァ遠慮しなさんな!」と差し出されたフルーツ牛乳の美味さに「この世の物なのか!?」とまたもや驚愕して、夢心地。
そして気づけばローマに戻っている…
大真面目なルシウス。クソ真面目と言うべきか、とても仕事熱心な職人なのです。見て経験したものをさっそく新しい浴場に取り入れて、大繁盛。
…というのが第1話。
話ごとに挿入されている作者のヤマザキマリさんの解説エッセイがとてもいい。
古代ローマの排水溝、下水道、作中に登場する金属製のストリジルというアカスリなどの写真もあります。背景や当時の様子がわかることで、この漫画の味わいも深みも増す、というもの。感謝したくなります。
第2話以降、ルシウスの設計した、まさに「斬新な」浴場の評判を聞きつけての依頼、そこでルシウスがまたもやハプニングでタイムスリップ…というパターンなのですが、バリエーションに富んでいます。そこが笑いつつも唸ってしまうところ。
これは「ギャグマンガ」に分類されているようですが、読者を笑わそう、という意図のものではなく、主人公のルシウスの真面目な探究心が、日本に暮らしているわたしたち日本人読者には結果的に笑えてしまう、という、じつはとても深い仕組み(!?)になっています。
これ、外国語に翻訳して外人が見たらどうなんでしょうね?まずはやはりイタリアで?それとも作者が暮らすポルトガルで?なにはともあれ、まずは英語?
読んだ人の反応をぜひ知りたいです。
『マンガ大賞』2010年受賞作品。当然でしょう!おめでとうございます。
本についてのよもやま話。□□本のこと あれこれ□□