- 販売開始日: 2011/07/29
- 出版社: 新潮社
- ISBN:978-4-10-313429-9
田辺聖子の古典まんだら(上)
著者 田辺聖子 (著)
女でも男と対等の生活をしたいという夢を描いた『とりかへばや物語』。女手だからこそ子を失った悲しみを綴ることのできた紀貫之。おませな少女の会話をリアルに描いた『浮世床』。『...
田辺聖子の古典まんだら(上)
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商品説明
女でも男と対等の生活をしたいという夢を描いた『とりかへばや物語』。女手だからこそ子を失った悲しみを綴ることのできた紀貫之。おませな少女の会話をリアルに描いた『浮世床』。『古事記』『万葉集』から『枕草子』『平家物語』『徒然草』、さらに江戸文学まで、古典をこよなく愛する田辺聖子が、その魅力を縦横無尽に語る。
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田辺聖子氏の古典文学に対する気持ちがよく伝わってくる一冊。上巻では平安時代までの11の作品を取り扱っているけれど、それぞれについて、もっと詳しく知りたくなってきた。
2011/11/04 09:46
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みす・れもん - この投稿者のレビュー一覧を見る
田辺聖子氏の本を初めて手にしたのは高校時代。清少納言の枕草子の現代語訳ともいうべき「むかし・あけぼの」だった。ここから清少納言の大ファンとなり、同時に田辺聖子氏の古典語りのファンとなったのだ。
本書は、「古事記」から始まり、平安時代末期に書かれたと思われる「とりかへばや物語」まで11の作品について田辺氏が語っている。収録されている作品は次のとおり。
「古事記」「万葉集」「土佐日記」「和泉式部日記」「蜻蛉日記」「落窪物語」「枕草子」「大鏡」「堤中納言物語」「今昔物語集」「とりかへばや物語」。
「落窪物語」は田辺氏が「おちくぼ姫」という本で現代語訳しており、「枕草子」は前述したとおり「むかし・あけぼの」がある。「とりかへばや物語」は、これをもとにして故・氷室冴子氏が「ざ・ちぇんじ!」という作品を書いている。私が読んだのはこの3作品。「古事記」については、いろいろと他の著者の解説書などを拾い読みしているくらいかな。
田辺氏の語り口調で書かれた文章はとても優しい。これは”易しい”と言い換えても構わない。11もの作品が一冊に詰め込まれているわけだから、それぞれについてそれほど深く語れるわけではない。けれど、彼女の言葉を読むごとにもっともっと知りたくなってくるのだ。古典文学への先導役となってくれているように思う。それぞれの作品から一番魅力的な部分を抜き出しているのかもしれない。田辺氏の古典文学への愛情の深さが伝わってくる。
神代の時代を描いた「古事記」、大和王朝の歌の数々、平安王朝に花咲いた様々な物語。それはみな、一部の貴族のみのものなのかもしれないとも思っていた。けれど、もしかするとそうでもないのでは…。もちろん文字を扱える人々がそれほど多くいたとは考えてはいないけれど、こういった歌や文学を愉しんでいた人というのは想像していたよりも多くの層にいたのではないかなと思う。その傾向は平安後期になればなるほど顕著になっていったのではないだろうか。
さて、下巻は武士の時代から江戸時代あたりの文学を取り上げるようだ。と考えると上巻に「源氏物語」が入ってこないのが少し気にかかる。ところどころ紫式部の名は登場し、「源氏物語」と比べるような文は出てくるのだけれど、一つの章としては存在しない。ここに一緒に並べるには「源氏物語」は壮大すぎるのだろうか。私は紫式部より清少納言派なのだが、「源氏物語」は好きだ(もちろん現代語に訳されたものを読んでいる)。田辺氏自身も「新源氏物語」を著している(文庫本で宇治十帖含めて5冊)。これもまた面白い。
ここに選ばれた作品は思えば1,000年を超えて読み継がれてきたベスト・セラー。現代、創り出されたものでそれらに続いていくものは何だろうか。
1,000年前の世界、1,000年後の世界を覗いてみたい。