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人民は弱し 官吏は強し
著者 星新一
明治末、12年間の米国留学から帰った星一(はじめ)は製薬会社を興した。日本で初めてモルヒネの精製に成功するなど事業は飛躍的に発展したが、星の自由な物の考え方は、保身第一の...
人民は弱し 官吏は強し
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人民は弱し官吏は強し 改版 (新潮文庫)
商品説明
明治末、12年間の米国留学から帰った星一(はじめ)は製薬会社を興した。日本で初めてモルヒネの精製に成功するなど事業は飛躍的に発展したが、星の自由な物の考え方は、保身第一の官僚たちの反感を買った。陰湿な政争に巻きこまれ、官憲の執拗きわまる妨害をうけ、会社はしだいに窮地に追いこまれる……。最後まで屈服することなく腐敗した官僚組織と闘い続けた父の姿を愛情をこめて描く。
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紙の本
星新一の父・星一の清廉潔白でタフな姿を描き、国家を挙げて彼を抹殺しようとする理不尽を描いた伝記。
2011/03/03 18:53
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、星新一の父であり、星製薬社長である星一(ほしはじめ)氏を主人公とした伝記である。
その内容は大正時代から急成長を始めた星製薬と、清廉潔白かつあらゆる困難にも挫けず乗り越えていくバイタリティー溢れる星一の姿、そして彼を快く思わない権力者たちによる理不尽な冤罪との闘いが描かれている。
本書は、一気に読んでしまうほど魅力に満ちた作品だった。
しかし読み進めるにしたがって不快が募る作品でもあった。
作品自体が不快という訳ではない。星一が不快なわけでもない。星一を嫌う官僚、星製薬のライバル会社と、それに癒着した政治家らの行為が不快なのだ。そして恐ろしく思う。星一を潰すべく官憲の仕組む不当な罪の数々。一人の人間を葬り去るために権力があの手この手で襲ってくるのだ。
物語は星一の視点であるため、一方的に官憲の行為は悪とも決めつけられるものではないが、それでも読者の気分を悪くさせるのは、星一に対して行われている悪質なイジメが、容易に想像できてしまう現在の政治家や官僚の姿があるからだろう。傲岸不遜な官僚、政権を争う政治家、何ら進歩していない日本に失望すら感じる。
その不快な感情の一方で、星一の不安を押しのけ困難を乗り越えてゆくタフな姿、国や人民のために奉仕しようとする清廉潔白の姿に感動させられる。星一の心情の深淵を描いていないにもかかわらず、彼の奮闘する姿が浮かんでくるのは、端正な文章とショートショートで培われた物語性が、星一の心情や置かれている状況を伝えるのに余りある役割を果たしているからである。
ところで解説では、後藤新平の孫・鶴見俊輔氏が、作中で仮名となっているライバル製薬会社社長三原作太郎の実名(塩原又策)を記載している。星新一の父が被った理不尽さへの抗議に、彼も少しだけ助力をしたかったからではないだろうか。
紙の本
権力への意志
2001/04/26 03:07
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:榎戸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
官僚がなんらかの理由である民間企業を潰そうと企み、ある個人を窮地に追い込もうと決意すると手段を選ばない。あらゆる権限を行使して己は責任を問われない安全地帯に座している。ゆえに近代日本人は卑屈になったのかもしれない。
紙の本
権力者の理不尽
2002/06/26 23:24
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぶらじる - この投稿者のレビュー一覧を見る
星新一の父親の話をそのまま書いた、彼にしては珍しい小説です。星製薬の社長として、役人との交渉に最後はマゾヒスティックな喜びさえ感じながら戦い続けてゆくサマに官吏というものに対する抗し難い苛立ちを感じました。そして、それは今でも変わっておらず、むしろ強化されつつある嫌いがあります。権力を握ったものとは殺戮者、略奪者でなくとも、十分に冷酷に変貌するものだということが絶望的な悲しさであります。