タイル
著者 柳美里 (著)
性的不能になり離婚した、40歳のデザイナー。タイルを偏愛する男は、自室をモザイク画で埋め尽くそうと、赤い海パン姿で制作に没頭する。その部屋をこっそりうかがうのは、盗聴が趣...
タイル
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商品説明
性的不能になり離婚した、40歳のデザイナー。タイルを偏愛する男は、自室をモザイク画で埋め尽くそうと、赤い海パン姿で制作に没頭する。その部屋をこっそりうかがうのは、盗聴が趣味の自称“非行老人”。タイル貼りの作業に女の専門学校生が加わり、いっそう妄想が亢進した老人は男をけしかける──いっしょに楽しもうじゃないか。標的はある女性ポルノ作家。狂気、罠、監禁……誰にでも起こりうる狂気をひたひたと描き出す、ホラー純文学の傑作。
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無調世界に送り出された聖母
2005/05/18 19:49
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:RinMusic - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者・柳美里はここで夏海かおりと名乗って、無残に殺される役として登場する。この無調の物語で、恐怖とはどのようなものかを問うている。無調とは本来、常に凝縮された焦燥感がプレッシャーの役割を果たしている状態だが、不思議なことに、この無調の台本において支配的な狂気には、気だるい調整感すら存在する。「恐怖の反対の感情はなんですか?」(p.148)と男は問う。<「弛緩」といったがすぐに「やすらぎ」といい直し>て、夏海は「あなたは恐怖の被膜に覆われていてひとを見ることができない」(p.149)と答える。しかし彼女は<やすらぎなどあるはずがない(中略)やすらぎや癒しなどという前に破滅すべきだ>(p.149-150)と知っていた。男は<暴力に対抗する力が自分にないことを知るのが怖かった>(p.84)から、性的能力の喪失で襲ってきた絶望の深さを埋めるごとくタイルを貼り続け、雄々しいイッソスの戦いに自分自身を重ねてきた。しかし、この問答を通して、男はタイル貼りを放棄するに至る。つまり夏海を殺すことである。
確かに恐怖の反対はやすらぎでない。その前に破滅すべきだということを身を以って示し、恐怖から想像力を取り戻すための礎とするべく、柳はこの無調世界に夏海を生贄として送り出した。殺されることで、現代社会における聖母を演じさせたのだとしたら、柳は相当に屈折したエキシビショニズムを持っていると言わざるを得ないが、大したものだ。すると柳自身がタイル(の役割)として物語を監督していたことになる。
誰かに解説してほしい。
2002/03/08 14:11
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みやぎあや - この投稿者のレビュー一覧を見る
都会に溶け込んでしまっている変わった人たちの、ちょっと不気味な話。「文学だなぁ…」と、読み終わって呟いてしまった。何がって、結局よくわからないまま終わってしまうあたりが。主人公の心理もいまひとつ分かるようでわからない。すぐそこに答えがあるのに、自分では読み解けない世界を垣間見てしまったような気分。夏目漱石や太宰治みたいに国語の先生に授業で説明してもらったら、ずいぶん納得いくのではないかと。