- カテゴリ:一般
- 販売開始日: 2013/03/01
- 出版社: 新潮社
- ISBN:978-4-10-472204-4
僕の心の埋まらない空洞
著者 平山瑞穂 (著)
栄転を目前にした検察官が最後に手がけた事件は、社内不倫の果ての殺人だった。故意なのか、それとも事故なのか。「検事さんにだけは本当のことを知ってもらいたい」と、恋の始まりか...
僕の心の埋まらない空洞
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商品説明
栄転を目前にした検察官が最後に手がけた事件は、社内不倫の果ての殺人だった。故意なのか、それとも事故なのか。「検事さんにだけは本当のことを知ってもらいたい」と、恋の始まりから終わりまでをねっとり語る被告の言葉が、真面目な官吏のおだやかな毎日を少しずつむしばんでいく。思わず我が身を振り返る心理サスペンス長編。
著者紹介
平山瑞穂 (著)
- 略歴
- 1968年東京都生まれ。「ラス・マンチャス通信」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞、デビュー。他の著書に「忘れないと誓ったぼくがいた」「シュガーな俺」など。
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不思議と読ませる力のある作品。
2015/09/03 21:55
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投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
〈供述〉のパートではストーカーがひたすら自分の論理を自己中心的に展開する、一歩まちがえば読むのも辟易する文章の羅列、〈列日〉のパートでは堅物の検事がストーカーの論を聞きながら徐々に心理的に引きずられていく内容。内容だけ見ると好みではないのだが、意外にも読まされた。それは、語り手の心理に肉薄した文章によるのだと思う。
ストーカーの鳥越には全く罪悪感がなく、どころか自分が裏切られたと憤っている。その様はわがままな子どものようで、実際鳥越は精神的に大人になれていないのだろう。にも関わらず、検事として業績を積み重ねてきた荒城はなぜかその心理に引きずられてしまう。きっかけはいくつかあるが、根本的には荒城自身にぽっかりと空いた空洞があったから。それまで気づかなかったのに、何かの拍子で空洞に気づいてしまう、気づいてしまった以上はもはやそれは無視できるものではない――という人間真理を作者は鮮やかに描いている。
うまいと思ったのは、その空洞を琥珀の中に閉じ込められている〈気泡=グリッター〉に喩えているところ。埋めようとしても埋めようとしても手の届かないものを喩えるのに適していて、なおかつ琥珀のきらめきも脳裏に浮かんで、描写として美しくも怖ろしい。