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  • 販売開始日: 2013/03/01
  • 出版社: 新潮社
  • レーベル: 新潮文庫
  • ISBN:978-4-10-112314-1
一般書

悲しみの歌(新潮文庫)

著者 遠藤周作

米兵捕虜の生体解剖事件で戦犯となった過去を持つ中年の開業医と、正義の旗印をかかげて彼を追いつめる若い新聞記者。表と裏のまったく違うエセ文化人や、無気力なぐうたら学生。そし...

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悲しみの歌(新潮文庫)

税込 737 6pt

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商品説明

米兵捕虜の生体解剖事件で戦犯となった過去を持つ中年の開業医と、正義の旗印をかかげて彼を追いつめる若い新聞記者。表と裏のまったく違うエセ文化人や、無気力なぐうたら学生。そして、愛することしか知らない無類のお人好しガストン……華やかな大都会、東京新宿で人々は輪舞のようにからみ合う。――人間の弱さと悲しみを見つめ、荒涼とした現代に優しく生きるとは何かを問う。

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みんなのレビュー86件

みんなの評価4.5

評価内訳

「海と毒薬」の続編、「沈黙」にも通じるテーマ

2006/03/14 10:29

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 この小説では「海と毒薬」(戦争の末期に大学病院でおこったという白人捕虜の生体解剖事件を題材とした著者の初期作品)の中心に描かれた人物が、新宿で診療所を開く医師として登場する。この作品でも、彼は殺された白人捕虜が最後まで無邪気に疑っていなかったことを忘れることができない。そして医療の影の面を生きることで苦しみ、疲れている。前作で答えの見えなかった「良心」や「神」といった問題の重さ苦しさを引き継いだ作品である。
 「海と毒薬」から20年余りの時間が経ち、作者も年齢を重ね、人生の体験を踏まえないとわからない「悲しみ」の色合いが濃くにじみでた作品になっている。主人公の過去を正義感で追い詰める若い新聞記者、表と裏が全く違う大学教授など、現代にもいそうな、そして多彩な人々が新宿の裏通りを舞台に登場する。(大学教授が裏通りに?なぜでしょうね。)その中でも、悲しみの中にも明るさと救いを感じさせる無類のお人好しの外人は、他の幾つかの作者の小説にも登場する人物である。これらの人物たちのそれぞれに、人生や生き方を感じさせるなにかがにじみ出ている。
 後半、医師として、そして過去の事件について苦しむ主人公に「あなたの苦しみは私がよく知っている。それで充分。」と聞こえてくる声は、「沈黙」で司祭が踏絵をする時に聞いた声を思い起こさせる。キリスト教の司祭はこの声により生き続けることを選べたが、この医師はそうできない。この部分には「日本人には神はいないのか」という、作者の宗教的な作品テーマもみえるようである。
「沈黙」でこの踏絵の部分を読んだとき、「人は誰かに認められたいものなのか」と感じたのだが、「私が知っている」という声を神の声として聞き、救われるのは神を信ずるものだけなのだろうか。
「海と毒薬」、「沈黙」を読んだ方には是非読んでみて欲しい。まだ、の方はできればそちらを先に読むことをお勧めする。そして作者のテーマは晩年の「深い河」に流れ込んでいく。

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善と悪

2002/11/13 00:38

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:こたろ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 私はそれほど本を読まない人なんですが,この本だけは忘れられない一冊になりました.
 淡々と登場人物の日常をパラレルに描いているんですが,そこには,大なり小なりの人間の悲哀がちりばめられてます.読み終わったあとは,なんともいえない気持ちになるでしょう.善悪とはなにか? 幸福とは何か? 本気で悩めます. 
 どこにでもありそうな風景,悲しいこと,許せないことが,この小説にはあります.非常にリアルであるため,感情移入しやすく,登場人物の気持ちがストレートに伝わってきます.
 狐狸庵先生の本は,人が人を裁くことの重み,人間の弱さについて書かれたものが多く,この本はそれらの集大成のような気がします.
 あと,必ず「海と毒薬」は読むようにしましょう.

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人は人を裁けるのか

2016/05/12 11:05

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:つよし - この投稿者のレビュー一覧を見る

「海と毒薬」の続編。導入部が巧みだ。新宿・ゴールデン街のあたりに行き交う人々の群像を活写している。主語をAからB、BからCへとくるくると変えながら、人間臭い街の情景を生き生きと浮き上がらせる。その回転運動に引き込まれるように読み進めると、海と毒薬の主人公、勝呂医師が登場する。そこからは、(1)勝呂(2)勝呂が面倒を見る末期がん患者とその家族、友人たち(3)勝呂の過去を追及しようとする新聞記者とその友人たち、という三角関係を軸に物語は進む。ありていにいえば、「人は人を裁けるのか」「人は人を救済できるのか」というのが本書の底流にある問いかけだ。他人だけじゃなく自分を裁く、救済することも含めて。それは巷にあふれる「社会正義」なるものへの疑義、と言い換えてもいい。だがこの物語には、そのように要約しようがない豊かさがある。避けることのできない宿命のなかで、あえぐように生きる人間たちの悲しみ、それがゆえの、いとおしさのようなものが詰まっている。傑作である。

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「海と毒薬」続編

2013/02/23 21:50

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:カラス - この投稿者のレビュー一覧を見る

一種の群像劇だが、
遠藤周作が描きたかった世界が描かれていると思う。
一種、残酷な救いのない終わり方だが、
「ふぁーい」という言葉はずっと耳に残る。

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一読者の意見

2000/12/18 21:41

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:hh  - この投稿者のレビュー一覧を見る

 周作先生の作品は70冊程度読みましたが一番共感したものがこの「悲しみの歌」です。
 新聞記者が勝呂医師に対して「錦の御旗」とか「正義心」とかを振りかざす場面があって、確かに新聞記者の理屈は正しいのだけれど「そうじゃないだろう」と、思わず声が出ました。
 いくら正義があっても、自分に非が無くっても、他人を追い詰める(追い詰めすぎる)のは悪になるのだとこの作品から感じました。
 自分もこうならぬよう気をつけていきたいと思います。

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2005/05/26 17:30

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2006/01/15 11:09

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2007/01/08 00:46

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2006/08/10 02:12

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2006/09/29 23:54

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2006/11/20 19:50

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2006/11/23 12:52

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2007/05/26 00:20

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2007/10/04 01:34

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2007/10/31 02:29

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