- 販売開始日: 2013/05/15
- 出版社: 新潮社
- ISBN:978-4-10-102402-8
堕落論
著者 坂口安吾 (著)
単に、人生を描くためなら、地球に表紙をかぶせるのが一番正しい――誰もが無頼派と呼んで怪しまぬ安吾は、誰よりも冷徹に時代をねめつけ、誰よりも自由に歴史を嗤い、そして誰よりも...
堕落論
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商品説明
単に、人生を描くためなら、地球に表紙をかぶせるのが一番正しい――誰もが無頼派と呼んで怪しまぬ安吾は、誰よりも冷徹に時代をねめつけ、誰よりも自由に歴史を嗤い、そして誰よりも言葉について文学について疑い続けた作家だった。どうしても書かねばならぬことを、ただその必要にのみ応じて書きつくすという強靱な意志の軌跡を、新たな視点と詳細な年譜によって辿る決定版評論集。
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堕ちることへの自覚
2009/06/28 01:46
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:白みそ - この投稿者のレビュー一覧を見る
敗戦直後、安吾は「生きよ、堕ちよ。」と日本人に呼びかけた。
自らの堕落に自覚的であった日本人は戦後めざましい復興を遂げることになる。
現代の知識人はしきりに「品格」を叫び、政治家は「美しい日本」「とてつもない日本」などという空疎なスローガンを国民に対し繰り返す。
日本人は自らの堕落に対し無自覚となり、日本の国際的地位は低下し、繁栄も失われつつある。
自らの堕落に無自覚であることほど品格に欠け、醜いことはない。
それにひきかえ、安吾の「堕落論」は今でも美しい。
無償の行為について
2009/09/09 00:53
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みどりのひかり - この投稿者のレビュー一覧を見る
特攻隊について
{彼等は強要せられた、人間ではなく人形として否応なく強要せられた。}と安吾は言う。
{人間が戦争を呪うのは当然だ。呪わぬ者は人間ではない。否応なく、いのちを強要される。私は無償の行為と云ったが、それが至高の人の姿であるにしても多くの人はむしろ平凡を愛しており、小さな家庭の小さな平和を愛しているのだ。かかる人々を強要して体当りをさせる。暴力の極であり、私とて、最大の怒りをもってこれを呪うものである。そして恐らく大部分の兵隊が戦争を呪ったにきまっている。}とも言う。
けれども、と安吾はつづける。
{その次に始まったのは彼個人の凄絶な死との格闘、人間の苦悩で、強要によって起りはしたが、燃焼はそれ自体であり、強要と切り離して、それ自体として見ることも可能だという考えである。}
{軍部の欺瞞とカラクリにあやつられた人形の姿であったとしても、死と必死に戦い、国にいのちをささげた苦悩と完結はなんで人形であるものか。}
{先ごろ浅草の本願寺だかで浮浪者の救護に挺身し、浮浪者の敬慕を一身にあつめて救護所の所長におされていた学生が発疹チフスのために殉職したという話をきいた。
私のごとく卑小な大人が蛇足する言葉は不要であろう。私の卑小さにも拘らず偉大なる魂は実在する。私はそれを信じうるだけで幸せだと思う。}
安吾は無償の行為というものを最高の人の姿と見るのである、といい、いのちを人にささげる者を詩人といった。宮沢賢治のような人を本物の詩人だと言ってるのだと思う。これについては別の出版社の堕落論のところにレビュウーを書いたのでそちらをご覧下さい。
読まずに死んではいけない一冊
2001/05/29 20:12
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:呑如来 - この投稿者のレビュー一覧を見る
青年の時分、誰もが手にする一冊。
えっ、まだ読んでない? まだ遅くはありません。すぐ買物カゴにGOです。これを読まずに青春や恋愛について語るなかれ。相田みつおも「一生青春、一生感動」と書いていますが、その元祖は安吾なのであります。しかも実存哲学をエッセイという形式で説明してしまったすごい人。醒めてるけど熱い、絶望という希望。
安吾が示唆してくれる人生観はいつまでたっても古くなりそうにありません。
代表作
2019/09/21 20:10
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦後発表された坂口安吾の代表作。
戦時中、人々は静謐で美しかったが、それは人間の本性ではない。
人間の本性は堕落であり、それ故に貞淑な未亡人でさえも堕落するが、
それは悲観すべきことではない。
正しく墜ちること、それが人としての唯一の道なのだと訴える作品。
堕落論
2002/03/14 12:49
3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ポンタ - この投稿者のレビュー一覧を見る
これ程の傑作はないだろう。おそらく日本で初めて堕落というデカダンスを前面的に肯定した本ではないだろうか? 今でも刺激的でその魅力は衰えてはいない。日本文化を根底から覆すような試み。
実は「坂口安吾の考え」だった
2019/06/20 19:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
坂口安吾の『堕落論』は、「堕落論」や「続・堕落論」を含む評論集ですが、「特攻隊に捧ぐ」や小林秀雄について書いた「教祖の文学」などを読むと、「あ、僕と同じ考えや!」と思う所がいくつもありました。
え? でも、待てよ。『堕落論』は10代の頃に読んで、そのあとも読み返しているから、「自分の考え」と思っていたのは、実は「坂口安吾の考え」だったのかもしれない。
巻末に年譜がついています。
『クラクラ日記』を思い出しながら見ていくと、一見無味乾燥な感じの年譜も、ストーリーとして読めました。
安吾の急逝は働き盛りの49才。
私は、気づかぬうちに、安吾より10年も長く生きていました。
ぬるいぞ、いま。
2002/04/03 17:39
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:猫山 - この投稿者のレビュー一覧を見る
乞食となってもあだ討ちを貫く武士道も、亡夫に立て未亡人を貫く節婦も欺瞞である。そんなものを捨て去り堕落してこそ、人間は本当に自己の求むるものを見つけ出すことができるのだ。
しかし、すでに規範もへったくれもないこの時代、『堕落論』ではあまりぴんと来ない。確かに今は堕落しているけれど、落ち方に気合が足らない。何も見ず何も考えず、ただただ流れるままに落ちているだけだ。ちょろちょろと。もっとアグレッシブに! もっと激しく! 轟々と唸る滝のように! 本能の叫びを聞けー!! って、感じでしょうか。
堕落?とんでもない
2003/12/25 06:44
3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぎっちょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この坂口安吾の堕落論、発表されたのは昭和21年(1946年)。
共産思想や全体主義、コスモポリタニズムまで否定する絶対的な個人主義を終戦直後に唱える彼の先見の明には脱帽するばかりです。
しかし、しかしですよ、現代の日本は彼の言う『堕落』を忠実に享受しすぎているのではないでしょうか。
この堕落論、五十年前には薬かもしれませんが現代には毒にしかならない気がします。彼の言う『曠野のひとり道』を歩ける人は別としてですが。
初めからクラシックだと思って読めばもっと楽しめたのでしょう。