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ギリシャ棺の秘密
著者 エラリイ・クイーン (著) , 宇野利泰 (訳)
盲目の老富豪ハルキスの死後、奇妙なことが起った。保管済みの遺言状が見事に消失し、捜索も空しく何の手掛りも得られなかったのだ。大学出たてのエラリイは棺の発掘を主張したが、そ...
ギリシャ棺の秘密
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商品説明
盲目の老富豪ハルキスの死後、奇妙なことが起った。保管済みの遺言状が見事に消失し、捜索も空しく何の手掛りも得られなかったのだ。大学出たてのエラリイは棺の発掘を主張したが、そこから出たのは新たな第二の死体だった!緻密な推理が二転三転し、謎の犯人との息づまる頭脳戦が展開する最大長篇。
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長いけど名作
2020/12/30 12:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
個人的に、X,Y,Zの悲劇と並ぶ、クィーン著作の白眉です。
長いですが、個性的な登場人物達の間で次々に事件が起こり、若いエラリィの推理もそれに揺れ動くため、飽きさせません。
再読でも張り巡らされた伏線に面白さが潜んでいるのですが、やはり終盤のネタ晴らし等における初読のインパクトが強い作品なので、時間のある時の一気読みをお勧めします。
(登場人物が多いので、翻訳もので名前を覚えるのが苦手な人は、登場人物一覧チラ見必須です)
クィーンは論理重視の本格推理物のイメージが強いですが、これはエンターテイメントとしても十分面白いと思うので、推理勝負に挑戦せず、あえて行動的なエラリィの背後から作中の展開を見守っても楽しいです。
訳文ですが、早川から宇野利泰さん訳、創元推理から中村有希さん訳(新訳)、角川文庫から越前敏弥さん訳の3つが手に入りやすいものとしてあります。
主に特徴が出ているのは会話文の辺りで、特に若いエラリィの口調に違いがみられます。
あくまで主観ですが、古風で優等生風(イギリス上流階級風)→早川、自信家で若々しい(アメリカっぽい)→角川、両者の中間→創元…な感じです。
私は学生の頃から読んでいた早川版訳に馴染んでしまってるので、早川版が一番しっくりきますが、地の分も含めて、より直訳をさけ滑らかな現代語(日本語)に近く読みやすいのは創元か角川版かなぁ…という気もします。
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謎の犯人との騙し合いの頭脳戦が醍醐味
2019/04/30 00:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この『ギリシャ棺の秘密』は盲目の老富豪ハルキスの死から始まります。ハルキス氏の埋葬式が終わって参列者が教区教会からハルキス邸に揃って戻った後、保管済みの遺言状が消失していることを顧問弁護士が発見し、警察を呼んでの捜索も空しく何の手掛りも得られなかった。大学出たてのエラリイがハルキスの棺の発掘を主張したが、そこから出たのは遺書ではなく、第二の死体だった!緻密な推理が二転三転し、謎の犯人との息づまる頭脳戦が展開します。
この事件で、偽装された証拠によって組み立てた推理を得意げに開陳して恥をかいた若きエラリイは、それ以来どんな推理も確信が得られるまで他人に知らせない誓いを立てることになります。
この作品の醍醐味はやはり謎の犯人との騙し合いの頭脳戦ですね。素晴らしいエンターテイメントで、満足の行く面白さでした。
紙の本
昔、他社の文庫で読んだ時のように圧倒されることはありませんでした。ただ、美術品の価値というものがよく理解できなかった当時、この小説の核心をどれど理解できていたか、その点は、今の私なら理解できます。往年の輝きはありませんが、やはりこの作品は私にとって宝です。
2011/12/12 19:30
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
私が読んだのは1979年に出てそのまま積読していた早川ミステリ文庫の初版本で、その前に東京創元推理文庫版を読んでいたので、30年以上経っての再読ということになります。古い文庫ですが、私は巽 亜古のこのシンプルなデザインが好きで、同時期にディック・フランシスの『名門』も読みましたが、どうも古い版のカバーのほうがデザインがよかったような気がします。
で、エラリ・クイ-ン。私にとって、もっとも大切なミステリ作家といえる存在です。クリスティでもカーでもなくて、クイーン。彼に匹敵する存在は、日本の作家であれば横溝正史だけといっていい。あまりに大切過ぎて、再読をしてきませんでした。横溝の本なんて、殆ど読み直ししているのに。多分、自分の中にあるクイーン像が崩れるのが怖かったのだと思います。
そして高校時代に初めて読んで、『Xの悲劇』とともに、私がクイーンのベスト(ということは世界のミステリの頂点)と断じたのが、今回、家族とのドイツ・ウィーン旅行に行く時、鞄に忍ばせた『ギリシャ棺の秘密』でした。高校を卒業してから、それこそ数千冊のミステリを読んできましたが、そんな私にとって、まだこの作品は輝きを失っていないでしょうか。期待半分、不安半分のフランクフルト便で読んだ本は・・・
カバー後の内容紹介は
*
盲目の老富豪ハルキスの死がすべての発
端だった。葬儀は厳粛に執り行なわれ、
遺体は無事、教会墓地に埋葬された。だ
が、その直後、奇妙なことが起った。壁
金庫に保管されていた遺言状が小箱もろ
とも、見事に消失していたのだ。邸のい
たるところが捜索されたが、手掛りは何
もない。クイーン警視とともにやって来
た、大学出たてのエラリイは、埋葬され
た棺の発掘を主張した。が、そこから出
たのは、新たな第二の死体だった! 緻
密きわまりないエラリイの推理が二転三
転し、謎の犯人との息づまる頭脳戦が展
開する、巨匠の最大長篇。最新訳!
*
です。まず、前回読んだ時のようにクイーンの緻密な論理立て、伏線の張り方に圧倒されることはありませんでした。といって、詰まらないなどという気は少しもありません。まず、老富豪が画商であった、ということを全く忘れていました。それどころか、遺産争いの核にあるのが美術品なんて思いもしなかった。少なくとも高校生の時の私は美術品に価値を認めていなかったので、この話の面白さをどこまで理解していたか。
それと、当時、私にとって印象的だったのはクイーンと、ハルキスの秘書ジョウン・ブレットとのロマンスだったんです。無論、それが上手く行かなかったということは覚えていました。それがクイーン・ミステリの一つのスタイルになっていくことは、その後の作品を読んで理解していたので、それはそれでいいのですが、もっと二人の間に甘いムードが漂っていた気がしていたのですが、さほどでもなかった。
でも、真犯人にはやはり驚かされました。無論、凄いぞ、とは分かっていたのですが、それでも、そうだったのか、と思いました。ただ、私の中に、ミステリに驚きよりも物語の愉しさを求めるようになってきているせいか、凄いなとは思っても、思ったほど楽しくはありません。どうも、私にとって本格ミステリというのは、ミステリの最終形ではなくあくまで一つの形式、ジャンルでしかなく、通過点といったほうが当たっているのかもしれません。
今の私には、ヨーロッパの警察小説のほうが面白い。特に、人間関係や組織上の、それこそ本格ファンからは夾雑物扱いされている部分を読むことが楽しくて仕方がない。勿論、人間関係には男女のことも、親子のことも、上司と部下とのことも、ライバルとのことも含まれます。それと、クリスティの再評価があります。物語の作り方としてはクリスティのほうが上ではないのかなんて思ったりもする。
でも、『ギリシャ棺の秘密』が輝ける星であることは変わりません。私にとって、岩下志麻がいまもかわらぬ理想の女性であるように。最後になりましたが、高校時代に私が読んだのは東京創元推理文庫、ですからタイトルも『ギリシア棺の謎』と微妙に違っています。ここらの楽しい考察は、喜国雅彦『本棚探偵の生還』に詳しいので、是非一読を。ちなみに、カバーデザインは、新しい東京創元推理文庫のほうがカッコイイかも・・・