紙の本
明治の日本を、滞在した外国人を通して知る。
2015/03/20 21:26
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この滞在日記には、当時の普通の人の様子、外国人への対し方など、生き生きとした文章と絵で記されている。何より、著者自身が日本を楽しんで受け入れている様子が感じられてこちらも楽しい。初めて日本に上陸するところから、「未知の土地」に対するわくわくした気分が伝わってくる。どこに行っても多少の不便は厭わずに楽しんでいる。
日本を三度も訪れ、大森貝塚を発見し、東京大学で教え、日本中を旅したアメリカ人生物学者モース。当時の人には当たり前すぎて記録に残そうとなど思わなかったものも、モースという外国人には珍しくうつったので記録されたんだろう。「他者の眼を通してみる」ということは時にはとても大事なのだ。学問関係の所でも、いろいろなことがわかって面白い。
日本人を好意的に書く一方、「アメリカ人は野蛮」というような表記も結構ある。モースは自国に良い思いがあまりなかったのかもしれないと思ってしまう。原著はもっと長いのだが、文庫にまとめるために日本に関係する部分を中心にまとめたということも、そういうことを際立たせたのかもしれない。
紙の本
アメリカ人科学者モースの目に見えた明治時代の日本の風情、人々が生き生きとした文章とスケッチで描かれています。
2020/03/24 12:04
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、アメリカの動物学者で、1877年に標本採集のために来日し、請われて東京大学のお雇い教授を二年間務めたことがあり、また東京の大森貝塚を発見したり、ダーウィンの進化論の日本への紹介などを行ったなどで知られるモースによる日本滞在中のスケッチと日記集です。彼は、東京大学教授として滞在中の二年間に、あちこちに出かけ、膨大な量のスケッチと日記を残しており、そこには、動物学者としての鋭敏な視線と異文化を楽しむ喜びが満ちています。また、菓子屋の看板、人力車、屋敷の屋根瓦、和服の装いなどが生き生きと描かれており、我が国の明治初期の文化風俗を語る際に欠かせない重要資料でもあります。ぜひ、この機会に、アメリカ人の目を通した明治期の我が国の風情を見てみませんか?
紙の本
いにしへの日本
2022/01/09 05:14
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投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
大森貝塚発見で有名なモース。その在りし日の日本の姿が浮き彫りにされている。彼の記した日記は全文ではなく日本に関するもののみ抜粋されている。訳のみで原文はなし。
紙の本
モースというと
2022/08/23 20:39
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
大森貝塚の発見者として教科書に掲載されていたことを懐かしく思い出しました。この方、東大でも、なんと、二年間も教えていらっしゃったのですね。これは、知らなかったです。
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大森貝塚のモース博士の日本滞在日誌。一部削除されたが、80年前の翻訳本の再発刊本とのことで、偶然入手した本ながら一気読み。明治期の日本の様子、しかも一般庶民の様子がつぶさに記されていて面白い。当時の日本人全般がいかに礼節を持ち、諍いをさける集団であったかに、筆者が驚くさまがしばし出てくる。中々ない記録。現今の技術的にグローバルになった世界ではもはや体験不能な状況を、克明に記してくれいているのは凄い、とかいうありきたりな感想を持つ。
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大森貝塚を発見したモースは明治の初めに来日。
新鮮な驚きを持って、この民族と文化を賞賛してやまない。
現代の暮らしとは大きく違う当時の庶民の暮らしぶりがうかがえる。
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モースさん、明治維新間もない頃の日本人をだいぶん褒めすぎではないでしょうか。日本にやってきた外国人はたいてい肥溜めの臭いに閉口していますが、そのあたりも少ししか触れられていませんでしたね。よほど日本がお気に召されたようで。でも、もうすぐ日本は日清・日露戦争に突入するのですね。
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江戸博で「明治のこころ展」を見てきた勢いでこの本を読みました。私は昭和25年生まれですが、「明治のこころ展」に展示してある家財道具や写真にある人々の様子は、私が子供のころ(昭和30年代)にも残っていたもので、なんだかとてもなつかしかったです。高度成長期までは実は江戸~明治が残っていたのですね。
「日本その日その日」でモースが日本や日本人のことをとてもよく書いてくれていますが、きっとモースその人がとても愛情を持って日本や日本人に接したので、当時の人々もモースに丁寧に接したのではないかと思います。
モースが日本人の美点として書いてあったもののうち、今では少なくなってしまったもの、なくなってしまったものも多くて、少し悲しかったですが、坂口安吾の「堕落論」で言っていた(うろおぼえですが)、時代や状況がどんなに変わってしまっていても、私達が日本人である限り、日本(のよいところやDNAみたいなもの)を見失うことはない、という言葉を信じたいと思いました。
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モースさんのどこまでも優しい視点。しかし、ここに描かれているのは本当に日本なのだろうか?
国民全員が穏やかで開放的で礼儀正しく正直で清潔、好奇心に未知、親切。この200年で我々は何かを失ったのかもしれない。
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大学を出てきた時、私は人力車夫が四人いるところに歩み寄った。私は、米国の辻馬車屋がするように、彼等もそろって私のところに駆けつけるのかと思っていたが、事実はそれに反し、1人がしゃがんで長さの異なった麦藁を四本拾い、そして籤を引くのであった。運のいい1人が私を乗せて停車場に行くようになっても、他の三人は何らいやな感情を示さなかった。汽車に間に合わせるためには、大きに急がねばならなかったので、途中、私の人力車の車輪が前を行く人力車の轂にぶつかった。車夫たちはお互いに邪魔したことを微笑で詫びあっただけで走り続けた。私は即刻この行為と、我が国でこのような場合に必ず起こる罵詈雑言とを比較した。いく度となく人力車に乗っている間に、私は車夫がいかに注意深く道路にいる猫や犬や鶏を避けるかに気がついた。また今までのところ、動物に対して癇癪を起こしたり、虐待をしたりするのを見たことがない。口小言をいう大人もいない。これは私1人の非常に限られた経験をーもっとも私は常に注意深く観察していたがー基礎として記すのではなく、この国に数年来住んでいる人々の証言に拠っているのである。(29P)
明治になって9年目の横浜や東京に住んだアメリカの生物学者の観察記を読んで、皆さんはどう感じるだろうか。日本人を買い被りすぎると思うだろうか。昔の日本人の高潔さに感心するだろうか。私はそのどちらとも違い、昔の日本人と今の日本人の変わっていないことに先ずは感心したのである。次に日本人と外国人との習性の違いをつくづく感じたのである。モースさんの買いかぶりと思うのは
、昔も今も「口小言」ぐらいは言っていたのかもしれないと思うぐらい。その他、日本人の平等意識への志向、運転マナー、他人に対する距離の保ち方は変わっていないと思ったのである。そして、そのことにことさら感心するアメリカ人のいかに我々とは違っていることか。
同時に驚くのは、モースの観察力と(日本に対する好意は隠しようもないにせよ)再検討が可能なように事実のみを記そうとしているその態度である。よって、明治初年の風俗の貴重な資料となり得ており、当時の写真やルポルタージュや社会科学的な論文が不足している中では貴重な記録になっているだろう。
私は借りて読んでいったのだが、次々と付箋紙を貼ることになった。結果、いつか購入することを心に誓った。
とりあえず本文引用は字数の関係でここまでにして、あとはいずれまた。
2014年12月17日読了
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日本の事を好きな人が書いてくれてるから、割り引いて読まなければいけないデスネ。
良いところも悪いところもあるのが当たり前ですよ。
良いところだけを強調されると美しい日本といっている誰かに利用されそうで怖いです。
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本書は、日本をたびたび訪れ数年にわたって滞在したエドワード・モースの記録です。モースといえば大森貝塚を発見した人物として記憶されていると思いますが、その彼が日本全国を飛び回り、そこでみた風景から人間の営みまでを深く描き出しています。礼儀正しい車夫、障子の破損を桜型の紙片で直す美意識。魚を売り歩く力強い老婆。盗みのない正直者の国。自然や人物に対するモースの感動が伝わってきます。
同じような経緯によって書かれた本はいくつかあると思いますが、人びとや文化や自然に目を向ける観察眼の鋭さと、そこに文化的な優劣をつけない慎重さを備えているという点で、本書は興味深い記録です。もちろん、貝塚の発見をはじめ日本の学界に多大な功績をのこしたモースに関心を持つ方にも、よい本だと思います(そういう方はまっさきにお読みになっていると思いますが)。
また、東洋文庫版のほうは3巻からなり、スケッチや文章が省略されていないと言うことなので、機会があればこちらも読んでみたいと思います。
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150516 中央図書館
モースは客観的観察を旨とする科学者であったから、多少の日本びいきはあったとしても、変な文明論的な思い込みはなく、平明に明治の日本の風景を捉えているであろう。
明治の日本人は紅毛碧眼の人に対して、斯くもジェントル、温良、オネストであったのだ、社会もこれだけ落ち着いた状況であったのだ、とホッとする。
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モースは、明治10年、39歳の時に、腕足類の標本採集のために来日した。江ノ島に実験所を設けて主にシャミセンガイを採集したが、その数日後に東京帝国大学で講義することを招聘された。初代動物学・生理学教授に就任し、ダーウィンの進化論を紹介した。
大森貝塚については、横浜に上陸して数日後、初めて東京に行った時に汽車の窓から発見したという。
モースは、東京の死亡率がボストンよりも低いことを知って、日本の衛生状態について考察している。赤痢や小児霍乱( コレラ )は全く無く、マラリヤによる熱病は多くはない。排水や便所に起因する病気の種類はないか、非常にまれ。すべての排出物質は都市から人の手によって運び出され、農園や水田に肥料として利用される。土壌を富ますためには、他に函館から多くの魚肥が持ってこられる。
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大森貝塚発見で有名なモースの日本滞在記。基本日記形式であり、日々の記録ではあるが当時の日本についてのかなりまとまった観察(貝塚発見時のことも含まれる)が書かれている。特に庶民の生活がうかがわれることが特徴か。自身によるイラストも相まって明治初年の日本をするために良い本だと思う。外国人に対し外面をよく見せているだけかもしれないが、今の日本人とはかなり違う面もあるようだ。
一部訳語に古い言葉が入っていると思ったら翻訳自体が1939年のものとのこと。もう少し注を付けるなどした新訳がほしいところ。
なお、この本はかなり省略されているようで、原本は東洋文庫で3冊とのこと。そちらはどうなっているのかちょっと見てみたい。