貧しき人々
著者 ドストエフスキー (著) , 安岡治子 (訳)
中年のしがない下級役人マカールと、天涯孤独な娘ワルワーラ。二人は毎日手紙で励ましあい、貧しさに耐えている。互いの存在だけを頼りに社会の最底辺で必死に生きる二人に、ある日人...
貧しき人々
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商品説明
中年のしがない下級役人マカールと、天涯孤独な娘ワルワーラ。二人は毎日手紙で励ましあい、貧しさに耐えている。互いの存在だけを頼りに社会の最底辺で必死に生きる二人に、ある日人生の大きな岐路が訪れる……。後のドストエフスキー文学のすべての萌芽がここにある! 著者24歳のデビュー作、鮮烈な新訳!
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ロシアの文豪ドストエフスキーによる往復書簡形式の中編小説です!
2020/05/09 11:01
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、ロシアの文豪フョードル・ドストエフスキーの往復書簡形式の中編小説で、1846年に出版されたものです。同書は、初老の小役人マカール・ジェーヴシキンと少女ワーレンカとの間でおよそ半年に渡って交わされる往復書簡が中心的な内容です。その往復書簡では、お互いに身の回りで起きた出来事を報告したり、その時の心境が綴られています。その話の内容とは、ワーレンカの父親が事業に失敗して不機嫌となり、その後病気になってそのまま死んでしまったこと、それだけでなく債権者が押し掛けて家や土地も家具も全て持って行ってしまったことや、彼女がポクロフスキーという元大学生と交流し、亡くなるまで世話をしたといったことなどが書かれてあります。更にはゴルシーコフ家の赤ん坊が死亡して可哀想だとか、マルコフに関して二人が意見を対立させたり、マカールの友人のゴルシーコフが業務上横領の嫌疑が掛けられて懲戒免職となるが、裁判で無罪放免となるといった話も書かれています。何度も繰り返される手紙のやり取りの中でジェーヴシキンはワーレンカに愛情表現を伝え続けるのですが、結局ワルワーラはジェーヴシキンと別れてブイコフのもとに行ってしまいます。
文豪すぎるにも程がある
2012/03/21 14:43
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:koo± - この投稿者のレビュー一覧を見る
ドストエフスキーの処女作です。24歳の時の作品。色々な意味でイタい、そして切ない。この年齢にして中年男の悲哀をここまで描ききるとは。文豪すぎるにも程があります。
先日からトライの海外古典。一口に海外古典といえど、クイーンやクリスティなどのミステリ作品ばかりではありません。久々に純文なんぞも読みたくなりました。光文社古典新訳文庫ならとっつきやすいかなと図書館借り。
貧困にあえぐ19世紀旧ロシア。下位層の人々の日常を舞台に、下級官吏マカールと薄幸の少女ワーレンカの往復書簡で綴られる純愛ストーリー。ロシア・リアリズムって奴ですね。
新訳しかも書簡体のせいか読みやすいです。人物の相関関係が複雑なミステリの方が圧倒的に難解。舞台背景が自分の置かれている現実とかけ離れている分、歯の浮くような台詞も純化され、心に浸透します。
一歩間違えれば中年親父の妄想炸裂。冒頭でも書きましたが、色々な意味でイタく切ない。温度差を感じる二人の関係。特に結末なんて哀れで見てられません。
なんだかんだと美辞麗句を並べ立てるワーレンカですが、彼女の手記で最も印象的だったのは、昔世話をしていたポクロフスキー親子のことを綴った手帳の件。実は全編通じてそこに一番引き込まれました。ポクロフスキー青年への無償の愛をそこはかとなく感じます。皮肉なことに。
●シンクロする心の貧しさ
余談ですが、実はkoo-(マイナス)モードな最近の僕。理由は自己嫌悪。色々読んだり書いたりしているわりには、まるで身に付いていません。若い頃のように思考がドライブしない。元々不得手な記憶力は更に衰退。こうやってブログに向き合うが故に、頭の悪さに打ちのめされる日々。きっと若いころに勉強をしなかったせいでしょう。
もっと気の利いたことを書きたい筈なのに・・・。気ばかりが逸ります。
「ワーレンカ、私は老いたる無学な男です。若いころに学問を身につけ損ね、たとえ今さらあらためて勉強を始めたとしても、何ひとつ頭に入りっこありません。正直なところ、私は文章の達人ではありませんし、もう少し気の利いたことを書こうなんて気を起こしたら、結局、およそ下らないことを書き連ねてしまうことぐらい、他人からあれこれいわれなくても、嘲笑されなくても、よくわかっているんです」(P31)
厄年にこんなの読んじゃあ駄目ですね。本厄に翻訳、なんて笑えません。ともあれ徹底的に自分を卑下する中年男の悲哀がグサグサと突き刺さります。イタすぎるのは僕の方ですね。シンクロする心の貧しさ。
※「です・ます調」レビュー100本ノック。27本目。