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危機の宰相
著者 沢木耕太郎 (著)
あのとき、経済は真っ赤に熱をはらんでいた――。1960年、安保闘争後の騒然とした世情の中で首相になった池田勇人は、次の時代のテーマを経済成長に求めた。「所得倍増」、それは...
危機の宰相
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危機の宰相 (文春文庫)
商品説明
あのとき、経済は真っ赤に熱をはらんでいた――。1960年、安保闘争後の騒然とした世情の中で首相になった池田勇人は、次の時代のテーマを経済成長に求めた。「所得倍増」、それは大蔵省で長く“敗者”だった池田、田村敏雄、下村治という3人の男たちの夢と志の結晶でもあった。戦後最大のコピー「所得倍増」を巡り、政治と経済が激突するスリリングなドラマを、ノンフィクションの巨星が活写する!
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紙の本
現在読んでも興味深い
2024/04/27 14:52
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
池田勇人と池田のブレーンであった田村敏雄と下村治を描いたノンフィクションである。沢木耕太郎も若い頃は提灯記事の仕事をせざるをえなかったのか、というとそうではないだろう。現在読んでも興味深いものとなっており、異に沿わないやっつけ仕事などではなかったことがわかる。
紙の本
所得倍増をめぐるスリリングなドラマ
2020/07/05 22:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つばめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『文藝春秋』1977年7月号に掲載された内容に基づき、29年後の2006年に単行本となり、2008年に文庫本として出版された不朽のノンフィクションである。「所得倍増」を掲げ総理大臣として君臨した池田勇人と、田村敏雄・下村治という二人のブレーンを核とする物語である。3人は大蔵省で長く敗者であった。池田と下村は大病を患い、田村はシベリアに5年間抑留された。その3人が、日本の高度成長時代を画策し、「所得倍増」を実現させていくストーリーは、スリリングなドラマである。著者の3人の敗者に対する眼差しは暖かい。一方、現実を批判するだけの学者先生には手厳しい。例えば、次のとおりである。
◆『朝日ジャーナル』誌上では、池田、下村、著名な経済学者である都留重人との間で応酬があった。所得倍増に懐疑的な都留は、池田に「それが実現しなければ大臣を辞職する覚悟があるか」と詰め寄った。政治家に一方的に責任を問い、責任を追及する側は、その弁論による責任を引き受けようとしない。◆東海道新幹線の計画に対して、交通論を専門とする今野源八郎東大教授は、鉄道斜陽化の趨勢の中で、どんなものでも消える前に超デラックス版を作りたがると皮肉った。
読書という観点からみると、池田は全く本を読まなかった。下村もむさぼるように読むタイプではなく、重要な書籍をいくつか読むだけで本質的なものを掴みだす能力のある人であったらしい。
紙の本
所得倍増計画という、とてつもない化け物
2019/04/03 21:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
はっきり言って佐藤栄作、岸信介といった個性的なというか顔自体が悪役じみた人と比べると印象が薄い。ただ、「貧乏人は麦飯を食え」と暴言を吐いた人かという印象しかない。しかし、この著書のおかげで印象が変わった。ずっと「60年安保」で盛り上がっていた反自民の空気は、いつ霧散したのかと思っていた。そうだったのか、池田首相の「所得倍増計画」というとてつもないスローガンを前にして庶民は「安保」より「収入」だと寝返ったのだ。そりゃそうだろうな。
紙の本
経済政策が奏功するための条件
2015/12/16 18:35
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:okh - この投稿者のレビュー一覧を見る
農業所得倍増という言葉が政権与党からあがっているようだが、人間の生活に、生き死にに関わる重要な政策なのに中身のない無責任な議論だと思えてしょうがない。「思い邪なし」が刊行時のタイトルのこの書籍を読むと、経済政策の立案には経済理論と現状分析の両輪なくしてはありえないし、そうでない政策は、民主党政権下のデフレ経済のように生活を破壊するものでしかないということがよくわかる。
主人公の下村治は、ケインズに学び実践したという意味でサミュエルソンに匹敵するのではないだろうか。アカデミズムと一線を画したためか、下村の知名度は今の若い人たちにはいまいちのようだが、城山三郎の「官僚たちの夏」の主人公と同じ時代を生きたエコノミストとして見直すと、奇跡の経済成長を演出した下村と、ホンダやソニーをつぶしたかもしれない通産官僚との対比が明確になる。
通産官僚が国民経済を守るという「正義感」を振りかざすと経済は停滞しかねず、対して、下村の実体経済の潜在成長力を正しく見通した上で、経済理論のセオリーにのっとって策定される政策との大きなギャップはなんなんだろう。
経済とは人間の感情とは独立して動くもので、まさに「冷たい頭脳と熱い心」がなければ、経済政策とは国を亡ばしかねないものだ。実際、長いデフレ経済は日本の社会に深い傷跡を残したし、衣食足りぬゆえに、人心荒廃したともいえる。世の中を明るくする経済を実現するにはどうすればいいのか。多少なりとも、国の行く末を憂えるような気概のある若い人には、ぜひこの本は読んでおいてもらいたいものだ。