電子書籍
少女とは
2016/12/24 19:01
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投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
「少女」という言葉に隠されたもの。表裏。陰陽。美しく麗しく、清らかなだけじゃない「少女」。中を開いてみれば、どろどろとした黒い血が流れている。でも少女はその可憐さで周囲の人間をまやかす。いとも簡単に。それは裏切りでもなく悪意もない。少女だけに許された特権。戦前〜戦後と少女も様変わりした。少女の持つ薄汚さは普遍だが、その表現のされ方と受け取られ方と純粋度の質は低下。それは世界の汚れ方と比例する。今は昔の少女達。あなたもこの物語の中にいる。自分が隠していた本性を見つけ、驚愕ののち甘く懐かしい気持ちが到来する。
紙の本
言葉にできない
2018/06/26 01:36
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投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
共通するのは時代。
――戦争の前後
現代より人間がむき出しな時代を背景に、
そんな殺伐からは遠そうな少女を軸に、
ときに蚊帳の外から、
ときに巻き込まれて、
人間の生き様を映していく短編集。
少女性を
白い無垢なイメージだけでなく、
思い通りに行かない世情の中でも
逞しく自己実現を為していく存在として描いているように見えた。
電子書籍
少女だった私たちへ
2019/04/15 22:22
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投稿者:きなこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争前後の少女達のお話。
浮世離れしているのに急に現実的に感じるのは戦争という背景が見え隠れするからかもしれない。見た目はきっと周りの少女と変わらないのに心の奥底に恐ろしく美しい炎をもっているような主人公たち。
少女とはいつの時代も弱くて守られるべき存在、そんな概念を覆されるお話の集まり。
紙の本
少女外道
2016/11/07 13:29
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投稿者:によ - この投稿者のレビュー一覧を見る
短編集だからと休憩本に細切れに読んだのは大失敗。
皆川さんの書くお話は溺れるように読みたいし、容赦なく沈められるから美しいのに!というのを、よく理解しました。
再読するときは静かな場所で一気にいこう。
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2010年に出た単行本の文庫化。
『鳥少年』『結ぶ』と、追加で収録された短篇があったが、こちらは追加収録作は無し。
単行本で読んだ時は表題作の『少女外道』に惹かれたが、文庫版で読み直してみると『標本箱』と『祝祭』がじわじわと効いてくる毒のような印象を残した。
『巻鶴トサカの一週間』の、ややコミカルなタッチで展開する描写も捨てがたい。
解説は『abさんご』で芥川賞を受賞した黒田夏子が書いている。確かに『abさんご』で見せた、虚実の狭間に向かおうとする指向は皆川博子とも通じるものがあるなぁ、と思った。
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少女外道
巻鶴トサカの一週間
隠り沼の
有翼日輪
標本箱
アンティゴネ
祝祭
ほぼ前作に共通している語りの特徴としては、
現在→振り返り→現在、か、現在と過去を交互に示すか。
大過去、近過去、現在、という構成もある。
共通した心情としては、死への憧れ、あるいは死への漸近。
29p 清浄と淫らって、一つのことだと思うわ。
45p 未だあらぬ池の面を、夕風が吹き過ぎた。→凄まじい幻視。
157p いきなり互いの魂の割れ目に嵌りこんでしまった。
187p あなた……わたしかしら。
254p 凄まじい落日の一刻に遇えた。生と死が水平線でせめぎ合っていた。横雲の間から最後の光芒を放ち、空の裾に金紅を孕ませ、陽は沈みつつあった。すべてが闇に浸されていく中で、海と空の境は金泥渦巻く戦場であった。→マルセル・シュウォブを思い出させる、これぞ文章の力!
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私のような薄っぺらな読み手にはこの物語の深遠に届くことなく、上っ面だけを愛で酔うくらいの事しか出来ないのがなさけない。7編の中で「標本箱」が一番好き。
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表題作が特に気に入りました。
人は誰でも己の中に"外道"な部分を持っていて、それを隠しながら生きそして老いていく。
「倒立する塔の殺人」の次に好きです。
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「蝶」よりアウトローな感じは薄いと感じたけど、相変わらずの薄暗さ。
「標本箱」と「有翼日輪」が、よい倒錯でした。だけど前者はちょっとオカルト?なのが…不意打ちでなじまないけど、設定が好きなので
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なんだかただならぬ雰囲気のタイトルですが、第二次大戦前後の、ごくありふれた人々の生活と心情を、ノスタルジックに綴った短編集です。皆川作品に惹かれるのは、ほのかに死と狂気の香りが漂う深刻な内容であるにもかかわらず、声高に何かを語るでもなく、かといって暗くなり過ぎることもなく、独特の文体でさらりと描いているところにあるような気がします。生は残酷で美しく、あまりに儚いものです。だからこそ、人のいとなみが健気に映るのかもしれませんネ。どの作品も実に味わい深い、魅力的なものでした。
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現実と幻想と、夢と記憶と、彼岸と此岸と、それらのあわいをふわふわと漂っているみたいな感覚。
そこに血の匂いが立ち込め、死の気配が漂い、すべてを見下ろしている「神」的なものの存在を感じさせる。
やっぱり皆川博子さんの短編はすごい。
「戦時中」の「少女」という視点が、すでに大きな仕掛けになっているのだと思う。
慎ましく生きることを望まれ、純真無垢であることが当たり前だった少女の中に、芽生えてしまった「外道」性。それが少女たちの心の中に隠されて、沼の奥深くに沈められているうちに、ここまで大きな幻想に成長したのだろうか。
それでいて語り手が、その「少女」自身ではなく、(神的な)第三者であったり、成長したその後の少女の視点だったりする。だから読み手が物語全体を俯瞰しているような、さらに言うと戦中から現代までの時空さえも飛び越えてしまっているような感覚にもなるのだろう。
あちら側とこちら側のあわいを漂う、というよりも、現実も幻想も、夢も記憶も、彼岸も此岸も、寧ろそれらすべてを超越している感覚、という方が正確なのかもしれない。
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再読。数ある皆川作品の中でも特に好きな短編集。
「少女外道」というタイトル通り、「少女」という存在が発見した(見る側にとっては発露というほうがしっくりくるような)「外道」についての作品ばかりが収められている。黒田夏子さんの解説を読んで気づいたけど収録作中で涙を流した少女は「祝祭」の少女だけ。涙を流すという行為が少女としては一等外道。
何が外道だこれしきと感じる人もいるかもしれないけれど、客観的に見てどの程度外道であるかなんてどうでもよくて自分を外道だと思うその心が大事なのです。
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「少女外道」というタイトルとあらすじに惹かれて読みました。7話からなる短編集です。
順番に感想を書きます。
「少女外道」
表題作です。
あらすじには『(割愛)久緒は、あるとき怪我を負って苦悶する植木職人・葉次の姿を見て、自分が苦しみや傷に惹かれる「外道」であることを知る―。』とあります。
期待して読んだのですが、わたしの想像していた「外道」とは少し違ったので、この本、ちょっとわたしの好みとずれてるんじゃないだろうか、大丈夫かなあと思いました。
うまく言えませんが、本当に怪我をしてしまった人には不憫で惹かれないのです。
そういう意味では主人公は本当に「外道」ですね(笑)
「巻鶴トサカの一週間」
これはけっこう気に入りました。
特に最後の二人で車に乗っているところ。
数か月前にわたしもお葬式に参列したので、火葬場の様子がよく描写されているなと思いました(どこのお家でもいっしょなんですね、きっと)
「隠り沼の」
時系列と登場人物が覚えきれず、何度か読み返しました。
兎、焼いたからという言葉は冒頭の集会での話にリンクしているのでしょうか。
「有翼日輪」
最初のお話が想像と違ったことと、その後の2話も好みとちょっと違うなあと思っていたのですが、ここらへんからお?と思い直し始めました。
とにかく結末がぞっとします。
彼の中では足場から落ちてもギイは死なないことになっていたのでしょうか。
憧れとそれを自分だけのものにしたい、という気持ちは女性的なイメージがあるように思います。
でも金閣寺(三島由紀夫)も男性だったので、男女関係なく、そういう気持ちを持つと悲惨ですね。
モールス信号に覚え方があるとは知りませんでした。
思わずハーモニカと口に出してみました。
「標本箱」
これは気に入りました。
しかし他のお話もそうですが、時代と一人称がころころ変わるので、頭を切り替えるのが大変です。
「アンティゴネ」
戦犯になった兄の遺骨を拾いにマニラに行く、というのが"アンティゴネ"のストーリーにリンクしているということでしょうか。
それと梓と江美子のこともリンクしているのかもしれません。
バレエの一件のあと、梓は江美子に声をかけなかったけれども。
「祝祭」
手鞠の中に指を入れるってどういう気持ちなんでしょうか。
身代わりになりますように、ということなのか、いつでも傍に置いてほしいということなのか。
針で刺したくらいで包帯なんて巻くかなあと思っていたのですが、伯母は見抜いていたのかもしれません。
最後の1ページの文章がとても美しく、気に入りました。
表紙にさんごの写真が小さく載っています。
加工されたものは別として、さんごそのものの形は血管や骨に見えてあまり美しく思えないのですが、一枝ウン千万を欲しがる人がいるのですよね・・・。
どこに飾るのでしょうか。玄関の棚の上とかですか。
夜見たらまさに骨みたいで怖そうです。
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どれも少しずつ人の道から外れた話だが、そういうものを扱う作品に強く心惹かれたことはない。それは、自分が正常であることの証明となんとなく思っていたが、この本を読んでみて、自分の中にも「外道」の部分が潜んでいると気づく。
人の心の闇を、おどろおどろしいだけではなく、美しく鮮やかに見せてくれ、自分ひとりではたどり着けないところへ連れて行ってくれる。80歳を超えている筆者の作品を、これからも1篇でも多く手に取っていけるよう願っている。
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【この感覚は、決して悟られてはならない――】人には言えない歪みを抱きながら戦前〜戦後の日本をひとり生きた女性を描く表題作のほか、名手・皆川博子の傑作短篇七篇を収録。