ウール 下
著者 著者:ヒュー・ハウイー , 訳:雨海 弘美
世界滅亡後、地下144階建てのサイロ。このサイロには何か途方もない秘密がある――。機械工から保安官へと任命された直後、陰謀にはめられたジュリエット。扉を開け、外に出た彼女...
ウール 下

商品説明
世界滅亡後、地下144階建てのサイロ。このサイロには何か途方もない秘密がある――。機械工から保安官へと任命された直後、陰謀にはめられたジュリエット。扉を開け、外に出た彼女の見たものは!
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未来版“ノアの箱舟”といった内容でした
2016/11/26 10:39
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
未来版“ノアの箱舟”といった内容でした(概要は文末に一括)。標題の「ウール」とは、サイロから外界を観察するための監視窓の清掃(窓拭き)に出される清掃人が持つ“布きれ“のことらしい。
今のところ、この作品が何故ベストセラーなのか理解できない。未来世界像の描写も、事件の描写も淡々としており、今一燃えない。更に、翻訳の問題なのか、意味不明の文脈が幾つかあり、何しろ読みにくい。上巻の終わり近くなってやっと少し面白くなってきたが、文章はやはり冗長で今一乗れない。
下巻に入るとやっと物事の繋がりなども明確になり、活劇的要素もふんだんで俄然面白くなるのだが。やはり、サイロの基本的な構造や大きさ、例えば150階ほどあることは明記されているのだが、1階の高さが何処にも表現されていないため、上から下への移動時間の感覚がつかめないなどが面白味を削いでいるような気がした。
<概要>
人類が滅亡した理由は明かされていないが、どうも一度人類を浄化するために、必要最小限の人間を50のサイロ(地下約150階建てで数千人が永久に居住できる地下都市)に分散収容する計画が実行され、地上は死の世界となり、生存者は50のサイロの住人のみの世界で、サイロごとにその秘密を知る人間は一人に限定され、更にサイロ間の連絡はその1人のみが許されており、他の住民はこうした秘密を全く知らずに生まれ育ってきた世界。舞台はそのうちの一つのサイロである18号サイロで始まる。外の世界のことに関心を持つことは重大犯罪と見做され、サイロから外界を観察するための監視窓の清掃(窓拭き)に出されるが、外は汚染された死の世界であり、清掃に出た人間は死刑を執行されたと同じことになる。しかも、外界に出るための防護服は意図的に短時間で崩壊するように作られたものであった。清掃の刑に服した女主人公ジュリエットが奇しくも仲間の助けによってその陰謀から逃れて隣の17号サイロに辿り着くことで話は急展開を始める。第一部は、18号サイロの独裁者が死亡し、ジュリエットが17号サイロから18号サイロに戻ったところで終わる。
本作は、『サイロ』三部作の第1部に相当するもので、第二部『シフト』、第三部『ダスト』で完結予定だという。
<『サイロ』三部作>は全部揃えてから読み始めましょう
2016/03/27 09:46
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ディストピアもの・ポストアポカリプスものってアメリカ人好きだよなぁ、と思うことが多いのだけれど、それはそのまま「日本人だってセカイ系はやってるじゃん!」と言われたら言い返せないということに気づく(個人的に“セカイ系”がなんなのかよくわからないのですが)。 これも時代とそれが醸し出す空気の産物ということなのかも。
どちらにせよ、流行モノであるからには玉石混交(そして狭義の“セカイ系”には否定的かつ未熟な要素がかなり多いらしいが)。 ダメなものには当たりたくない、どうせ読むならいい(面白い)ものを!
それをかなえてくれるのが<サイロ三部作>である。
発売してすぐに買っていたのですが、「一気読み必至」とのことだったので第三部が出るまで待ってました。
世界各国で翻訳版が出ていますが、装丁がいちばん優れているのは日本版かと。
まず第一部、『ウール(WOOL)』。
章立てが「編み目を決める」・「ほころび」・「縒り合せるよりあわせる」とかなのでてっきり毛・羊毛というイメージの“ウール”なのかと思っていたら、実はある短縮形だとわかったときの驚きといったら! ← わかるのは結構後半です。
近未来、世界の終末後のどこか。 生き残った人類は地下144階建ての<サイロ>の中で限られた資源をフルリサイクルしてどうにか暮らしていた。 最上階のカフェテリアがかろうじて地表に接し、外の世界を見ることができるものの有毒ガスが充満しているため生存には適さない。 サイロから外に出られるのはレンズの「清掃」をする者だけ。 しかし「清掃」に行った者は誰も帰ってこなかった・・・これまでは、という話。
読者にとっては当たり前のことでも、この物語の中では当たり前ではない、ということにはっとさせられる場面が何度もあって、そのあたり作者はすごくうまいなぁ、と思う(たとえば白い結束バンド、あたしならすぐはさみで切ってしまうが、ジュールスはゆっくり逆方向からゆるめて取り外す。 再利用するために)。 そんな感じでまったく違う世界の中に読者としてすんなり入り込めるのは、そのようなディテールの積み重ね故かと。 そして職人気質の人たちの思考は国や時代が変わってもあまり変化がない、というのもなんだかうれしい。
それしか知らなければユートピアなのに、疑問を持ってしまうとディストピアになる、という感覚は二元論的で、だからキリスト教圏の人たちに受けるのであろうか。 アメリカ人がディストピアものにはまるのはキリスト教をはじめとする一神教で、<終末観>が根底にあるから? 日本人がセカイ系に共感しがちなのは社会として個人として未熟だから?
などといろいろなことを考えるのは読了後で、読んでいる最中はページを追いかけるので精一杯です。 いろいろ不明な点もありますが、そこは三部作通してわかることかもしれず、ということで置いておく。
早速続編『シフト』に入っておりますが、時間軸的には『ウール』より前。 『ウール』の直接の続編が『ダスト』のようです。(2015年10月読了)