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電子書籍
終の住処(新潮文庫)
著者 磯崎憲一郎
結婚すれば世の中のすべてが違って見えるかといえば、やはりそんなことはなかったのだ──。互いに二十代の長く続いた恋愛に敗れたあとで付き合いはじめ、三十を過ぎて結婚した男女。...
終の住処(新潮文庫)
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商品説明
結婚すれば世の中のすべてが違って見えるかといえば、やはりそんなことはなかったのだ──。互いに二十代の長く続いた恋愛に敗れたあとで付き合いはじめ、三十を過ぎて結婚した男女。不安定で茫漠とした新婚生活を経て、あるときを境に十一年、妻は口を利かないままになる。遠く隔たったままの二人に歳月は容赦なく押し寄せた……。ベストセラーとなった芥川賞受賞作。
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紙の本
結婚って何だろう。何年後かにまた読み返したい1冊。
2020/09/11 20:49
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タラ子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
30過ぎの男女が結婚するところから物語は始まる。
疲れたような、諦めたような表情が見られた、という一文や、既知の事実が自分にだけ知らされていないような感覚に男が陥る場面から、結婚初期の高揚感は全く感じられず、ただただこれから続く結婚生活に対する何やら恐ろしく、暗い印象が押し寄せてきた。
最初の不穏な印象どおり11年もの年月妻と男は言葉を交わさなかった。
そして男は気づく。『妻はもう何年も前から知っていたのだ。恐らく妻は、俺と結婚する以前から結婚後に起こるすべてを知っていた、妻の不機嫌とは、予め仕組まれた復讐なのだ』と。妻は知っていたのならなぜ結婚したのか、なぜ知っていたなら阻止する努力をしなかったのか。そもそも諦めから始まった結婚生活に何の期待もしていなかったのか。うーん、結婚は複雑だ。
不倫相手が、子供の頃にうまく育てられなかったイグアナを林に逃がすが、その女が、人間の背丈ほどにもなってどこへ行くことも許されなくなったイグアナは必ず自分のところに戻ってくると語る場面が印象的だった。
この場面が、子どもが自立するほどに年を重ねた男が最後妻と向き合い、妻のいるいえで死に至るまで妻とふたりだけで過ごすことを悟るシーンに結びついてくる気がした。
女は、どれだけ好き勝手にやっている男でも最後はきっと自分のもとに帰ってくるとみな信じている生き物なのかもとここで思った。
この小説全体を通して、固有名詞は全く使われていない。ある意味〇〇さんといったような固有名詞がついている方が、それは〇〇さんの話で自分は違うと思えたであろうが、あえて使われないことでこの物語がありふれた誰にでも起こるものとしてぐっと距離を縮めてくるのだ。
また何年後かに読み返したい1冊だ。
紙の本
嫌いではないですね
2017/02/09 22:12
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
初見の作家さんです。
どうして読む気になったのかは憶えてません。ただ時々、罪滅ぼしか食生活を見直すみたいに純文学とか言われるものを読んでいます。(笑)
例のよって例のごとく私にはこの作品の意味や価値はわかりませんでした。食事に例えたついでに言えば、体に良いと言われるものを食べたところでその良さを肉体的に実感することなど私はないのです。単純に美味しいか不味いか、要は好みがあるだけです。
ただ一箇所、「孤独」について書かれた部分は共感というか強く同意できました。
紙の本
フィルター越しの現実
2013/02/26 21:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ソレイケ - この投稿者のレビュー一覧を見る
一組の夫婦の物語だが、所謂分かりやすい「リアリティ」は希薄である。だが、完全な不条理劇ともワタシには思えなかった。「夫婦」という、基本的でありながら極めて社会制度的な関係が普遍的に持つ「何か」が非常に生々しく描かれているという印象を持った。最大公約数的に認知される「現実」を、ごく個人的な認識のフィルタを通して見えたものを正直に表現するとこうなるのかもしれない。「私にはこう見える」というわけだ。従って、形態的にはアレゴリカルなものとならざるを得ない。一篇が丸ごとそのまま世界の暗喩であるというような形の小説ではないだろうか。