紙の本
一人の船頭の目を通して見た北方史の物語が幕を開ける。正義感の強い主人公の立ち回りが痛快。
2016/12/11 17:40
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投稿者:大阪の北国ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
いよいよ嘉兵衛の兄弟たちが結集し「高田屋」の旗揚げとなる。
待望の北前船「辰悦丸」が竣工し、嘉兵衛が船頭となり松前に向けて出航する。
司馬先生による松前藩史も展開されるが、それはこれほど無能で私腹を肥やすことだけに専念し、「住民のための政治姿勢」を微塵も感じさせない呆れた支配層も珍しいと云うトーンで語られていく。極端な秘密主義を貫いたのは、幕府からの搾取を恐れたかららしいが、自らは搾取のし放題という驚くべき藩である。しかも搾取の対象が謙虚で礼儀正しいアイヌだというから恐れ入る。所謂弱いものイジメである。われわれも昭和の世になってからの近現代にも周辺諸国に似たようなことをしていたのではないかと謙虚に振り返らないといけないと考えるものである。
さて、正義感の強い嘉兵衛は、その松前藩の下級武士たちとの諍い、小競り合いを起こしながらも、最上徳内、三橋藤右衛門という人情味溢れる幕臣達と出会っていく。いよいよ北の海を駆け回る嘉兵衛の生涯を懸けたドラマの幕開けだ。
北方でのロシアとの接触や国防、また日本人の起源を知る上でも、「オホーツクから樺太・シベリアと日本の関わり合い」は日本人として知っておかなければならない大変重要なテーマだと考えるが、歴史教科書では幕末から維新の数十年の出来事として数行の記述しかないのは、教科書執筆者達の勉強もしくは見識が足りないのではないかと思わざるを得ない。少しは本編や「ロシアについて」などの司馬先生の本を入口として、自らの研鑽を積まれんことを期待するものである。
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主人公の高田屋嘉兵衛はいよいよ独立。自身の船で松前に初めて向かう。
本の半分以上は、司馬遼太郎の恒例の脱線、というか時代背景の説明に費やされる。
当時の蝦夷地(北海道)を管理していた松前藩は権益にあぐらをかき、蝦夷(アイヌ)を搾取していたのみならず、藩運営ならびにアイヌ虐待の内情を幕府に対して隠ぺいしていた、との由。
一方でロシアは資源を求めてアジアに進出しつつあったため、虐待されているアイヌをロシアが取り込むことで北海道における影響力を増してしまうことを懸念した幕府は、北海道の東半分を直轄領としてしまうところで3巻は終わる。
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自前の船・辰悦丸が完成。松前から箱館(函館)まで行く。幕府の役人・高橋三平と親しくなり、三橋藤右衛門、最上徳内も船に乗せる。北風との軋轢なども書かれています。この巻は途中、蝦夷地と松前藩、近江商人、アイヌの人々の説明がかなり続いて、航海時のテンポのよさが急に落ちるので、多少辛抱がいります。
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嘉兵衛がいよいよ船頭として頭角を顕わし、蝦夷地を訪れ「日本」を外から見る目が入ってきて、ぐっと面白くなる。
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あらすじ(裏表紙より)
エトロフ島は好漁場であったが、すさまじい潮流が行く手を妨げ、未開のままだった。しかし幕府は北辺の防備を固めるため、ここに航路を確立する必要を痛感して、この重要で困難な仕事を嘉兵衛に委ねた。彼の成功は、蝦夷人にも幕府にも大きな利益をもたらすであろう。が、すでにロシアがすぐとなりのウルップ島まで来ていた。
高田屋嘉兵衛の絶頂期でしょうか
エトロフ島での活躍が本巻の主題です
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「司馬遼太郎」の歴史小説は全部読もうと考え、ブックオフで見つけて一度に購入。あらすじを読んで自分の好きな戦国、幕末ではなく、江戸後期の話であったので、ずっと積読のままであった。
しかし、読んでみて、非常に面白かった。というより、日本にこんな人物がいたのかと知ると日本に生まれてよかったと思えた。主人公の「高田屋嘉兵衛」の人としての偉大さには勇気を与えられたし、その商人哲学には強く感銘を受けた。
ストーリーとしては中盤から終盤の内容もいいが、自分としては序盤から中盤までの商人として主人公が活躍し始めるまでの展開が好きだ。この本を読んで物語の舞台である灘近辺、北方領土にも興味を持てた。
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いよいよ、嘉兵衛は自らの巨船で蝦夷(北海道)に渡る。当時の蝦夷における松前藩及び幕府の対応についての記述は興味深い。
既に、幕府(田沼意次)がロシアという外圧を意識し始めていた。
司馬遼太郎の小説は、所々に史実及びその考察が入る。
・朝鮮は中国以上の儒教国家になり、20世紀初頭になるまで貨幣がなく、自ずと商品経済は発達しなかった。(日本は室町時代から旺盛な商品経済の世になり、これが封建制度の亀裂となっていく)
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嘉兵衛の商売が軌道に乗り始め、大船を造り、念願の蝦夷入りをし、そこでカルチャーショックを受けて帰って来るまでの話。嘉兵衛はたびたび郷土主義を離れた大局的なものの考え方を持っていることが書かれているが、本巻においてはこれから心持ちとしては「蝦夷の人となる」と発言している。思うに、虐められて郷土を飛び出し、ある意味根無し草的であった自己が初めて確立するまで、が描かれているようだ。ようやっと確立した嘉兵衛という人物がこれからどういう事件に会い、どう立ち向かうかが楽しみ。
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主人公はどんどん蝦夷地にのめりこんでいく。
商売はご飯を食べるだけの暇つぶしであり、本質は冒険をしたいがために、商売をするとのこと。
生き残っていくのは純利益をたくさんだせばいい(そのほうが儲けれる)のだが、儲けるのもほどほどにしないと、手入れが入ったり、世間様から白い目でみられるという。
なんでもほどほどがいいのだ。
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この物語のテーマがよく見える巻でした。世の中は商売や諸事のことで人の上下関係を作りたがる。だけど、本来人に上下などないっていうことを主人公を通して強く感じれました。自分も世の中のそういうところに従わない気持ちを持とう。
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いよいよ嘉兵衛は蝦夷地にあがる。財産がなくても次の航海で利益が得られると信じて船を建造する度胸はすごいと思う。そして、利益は次の船出で、多くの人々に品物を届けるためと言い切る嘉兵衛を、格好いいと思う。
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アイヌ人を酷使する松前藩は豊富な海産物を独占している。北辺にせまる大国ロシアから北海道を守ることには、まったく関心の無い松前藩であった。和人に虐げられるアイヌの人々は、ロシアと手を結ぶこともあり得る。そんな際どい時期に、幕府が東蝦夷地の経営に乗り出す。嘉兵衛は己の商売のみで行動するのではなく、そこに住むアイヌの人々を救おうと幕府の手助けをすることになる。
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江戸幕府は、東蝦夷地をアイヌを奴隷のように酷使することによって一方的に搾取することしかしない松前藩から直轄地へとチェンジ!
その直前に幕府の要人と偶然親交を結んでいた嘉兵衛さんに大きなチャンスがやってきます。
しかし、それはハイリスク&ハイリターン。
もちろん嘉兵衛さんは突き進むんだろうな…。
いろんな意味で大きな流れが時代を新しい局面に向かわせようとしている力を感じました。
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読んだきっかけ:古本屋で50円で買った。
かかった時間:7/2-7/22(21日くらい)
あらすじ: 蝦夷地の主・松前藩は、アイヌの人々を酷使して豊富な海産物を独占していたが、この内実を他に知られるのを恐れ、北辺に迫る大国ロシアの足音を聞きながら、それを隠し続けた。漸くにして嘉兵衛が巨船を作り上げ、憧れのかの地を踏んだころから、情勢は意外な展開を見せ始めた。幕府が東蝦夷地の経営に乗り出したのだ。(裏表紙より)
感想: 弟嘉蔵の結婚。そして、薬師丸・長慶丸二艘の船で、嘉兵衛はせっせと商いを続ける。無理な航海をしてでも動くのは、無論辰悦丸の支払いに充てるためである。こうして辰悦丸は竣工し、「高田屋」は営業を開始した。
兵庫の北風家との仲にいくぶんかのひびを抱えながら、彼らは同時に、行き急ぐように寛政丸、春日丸を竣工し、商いを始める。
それぞれの船を高田屋で担いつつ、嘉兵衛は辰悦丸で蝦夷地を目指した。
蝦夷地では、松前藩が幕府の目を欺きつつ、アイヌに過酷な労働をさせて利益をあげている。現在の幕府は、戦国時代から長い月日がたち、おいそれと戦争を行うことができない。そして各藩への遠慮ももっており、松前藩を簡単に指弾できない。
そんな中、嘉兵衛は蝦夷地で幕府の蝦夷地探索の幕臣たちに出会い、強く惹かれる。
この人たちの力になり、蝦夷地を本土と同じく開けた土地にしたい・・・。
幕臣たちも、嘉兵衛の、ただの商人以外の心持ちに期待し、彼に蝦夷地解放へ向けての援助を願う。
こうした状況の中、寛政11年(1799年)正月、幕府は東蝦夷地を、松前藩より7年租借することと直接経営を行うこと勧告した・・・。
(続く)
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3巻に入り、一気に話が進む。
高田屋がはじまり、「高田屋嘉兵衛」の物語になる。
北前船のしきたり、松前藩の状況、アイヌたちの扱われ方、など、引き込まれていく。
厚岸に商売とは別件で向かうなど、今後に繋がるであろう話も出てきた。残り半分。ここからどう進むのか。