紙の本
新しい仕事と生活についての提案書です!
2018/11/13 09:04
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、著者である渡邊氏の生き方を綴ったストーリー仕立ての一冊です。「定職にもつかず、気が付けば30歳になっていた。どんなことでもいいから<ほんとうのこと>がしたい!」という一文は、私たちが生きる現代社会の一面をよく表しています。それをきっかけに田舎でのパン屋さんが始まるのですが、実際に市場に出回っている腐らないパンの不思議さ、劣悪な労働環境などに驚き、「自分は菌本位のパンをつくろう」と思い立ちます。このストーリーには資本主義の本質、経済の本質が詰まっています。ぜひ、多くの人々に読んでいただきたい一冊です。
電子書籍
お店に行ってみたくなる
2017/05/27 05:03
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:プロビデンス - この投稿者のレビュー一覧を見る
パン屋さんなのに「腐る」経済とは?と驚いたが、大変読みやすく面白かった。なんとパン作りとマルクス経済が同じような視点で説明できるとは。強いて言えば、じゃ、老後はどうやって暮らすの?とか突っ込みたくはなったが、それでも、著者の真摯な経済理念とその実践活動には魅了される。日本を代表する経済学者もこのくらい面白く読みやすい本が書ければいいのに、と思った。
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自然酵母にこだわるパン屋さんのお話。
本書には、とても素晴らしい考えが書かれていると思いましたし、立派だと思いました。しかし、今の世の中では、なかなか出来ないことだとも思いました。
世の中の食に対する意識や知識がもっともっと高まらないとこういうパン屋さんが受け入れられるのは難しいのが現実だと思いますが、応援したいと思います。
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菌の声を聴け
「田舎」への道のり
搾取なき経営のかたち
著者と奥さんが歩んできた田舎のパン屋への道のりを書いた本。そしてパン屋はパン屋だけではなくなった。
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前半は、ちょっと乱暴だけどとってもわかりやすいマルクス経済学の紹介。後半は「里山資本主義」の実践論になっている。
原発事故という思わぬ要因があったとはいえ、その実践の場を、いっときは岡山県の奥地、そして今はすぐ隣の智頭に求めてくれたのは嬉しい。機会があれば車を飛ばして行くことができる。
勝山は偶然にも里山資本主義を最初に実践していた製材会社がある。竹細工の「飯かご」という伝統工芸品を作っている平松幸男氏もいる。何時の間にか、地域から変革が始まっている。
窒素の地中に吸収されるルートに、稲妻があり、そのおかげで稲が豊かに実ることがあるとは知らなかった。古代人の「確かな目」を著者は感心している。
タルマーリーは天然の菌だけでパンをつくるパン屋さんであると、同時に智頭町に移って野生酵母だけでつくるクラフトビール製造所にもなった。改装を重ね、勝山の新しい名所にもなりつつあったパン屋を閉じるのは、地域の人の理解が得られたのかどうかは不安なところだけど、いたずらに利益を求めて支店を作ったりして規模を大きくしない、やりたいことを極めるという姿勢は評価したい。ともかく一度行ってみたい。
2017年4月16日読了
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ツイッターなどで見かけ、気になっていた本書。
いつか読もう読もう、と思う内に、気がついたら文庫になっているではありませんか!
イーストなどを使用せず、天然酵母や天然麹菌によってパンをつくり、店を経営する著者による本書。
面白いのは、マルクスの『資本論』をはじめ、いくつかの経済書を引用しながら、彼らがつくるパン、経営、労働についての考え方を言葉にしているところ。
複数の論点、かつ、著者の学生時代も含めると長いスパンの話を扱っているにもかかわらず、構成がとてもよく整理されているので、するすると頭に入る。
何より、著者が30歳にしてはじめて本格的な社会人として働きはじめてから遭遇する様々な理不尽や矛盾が、とても他人事とは思えず、はらはらさせられ通しである。
今の資本主義社会の中で、おカネがあふれ続けている……というくだりで、ふと『千と千尋の神隠し』の“カオナシ”を思い出す。
実体のない経済がどんどん膨れ上がりバブルが爆発することと、映画でのカオナシのくだりはとてもよく似ている。
カオナシは、銭婆のもとで仕事を与えられて穏やかな横顔をみせるようになるけれど、じゃあおカネは?
本の中で、著者は菌の声を聴いてパンをつくっているけれど、もしおカネの声を聞くことができたら、どんなことを言うだろうかと考える。
私のお財布の中のおカネたちは、もうちょっと大切にして、少なくともすぐレシートで財布のなかパンパンにするのはやめて、と怒っているかもしれないな。
資本主義社会の中で、どのように気持ちと生活の折り合いをつけて生きていくか。
正解のない問いに、果敢に挑む著者夫婦の姿が印象に残る1冊でした。
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利潤は出さなくていい。事業を持続していくことが大事で、拡大する必要はない。ここに共感できるかどうかが、この本(および作者の主張)が好きになれるかどうかの分かれ目じゃないかと思う。自分は大いに共感する。ポストハーベスト農薬?小麦アレルギー?のせいで、パン屋さんは鼻や肌が悪くなっているのが職業病だというのに驚いた。そういえば近所のパン屋さんは全身白衣にビニール手袋をしてる。衛生対策だと思ってたけど、小麦粉が肌に触れないため、もあるのかな。少し前に小麦を食べないのが体にいい、みたいなのが流行ってたけど、あれはおかしいと思う。これまで人類は千年以上小麦を食べて生きてきたんだよ。体に悪いわけないじゃない。悪いのは農薬とか遺伝子組み換えとかだと思うのだが。
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パン職人の経験や考え方を述べている。菌の奥深さがわかりとても興味深い。このパンを食べてみたいと思った。経済に対する考え方も独特。マルクスと労働力の話は、普段は考えないが、なるほどと再認識することができた。
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この前加計呂麻島に行った際、天然の麹菌で作るお酢の味の芳醇さにびっくりした。何の気なしに読んだこの本にも麹菌の驚異的力の話が書かれている。自然に寄り添う生活はほんと並大抵にできることではないし、この本に書かれていることは努力の末大成功した一例に過ぎないのかもしれない。しかし、たとえ世界が進化しても、変わらない、変えられないことには素直に従って生きていく、そんな人生を少しでも味わいたいと思った。
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読み進めながら、まったく違う分野で仕事をしているのですが、うなるところが多々ありました。
たとえば、イースト菌と自然の菌の違い。とにかく速く仕事ができる人たちを集めて効率だけを重視したイースト菌と、いろんなやつがいるけれどひと味違ったものが作り出せる自然の菌。
そして手のかけ方とかとか。
仕事や教育の分野でも非常に参考になることがたくさんあります。
まずはタルマーリーさんのパンを買ってみたくなりました。
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酵母は意志のある生き物なのかもしれないと思った。タルマーリに行ってみたいし、各地に同じ志の人々や生活が増えれば嬉しいなぁ。
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田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」
「まちづくり」「地域活性化」「共生社会の実現」…。
そういうテーマを掲げて取り組まれている物事に、違和感を感じることがある。
それって、本当に「まちづくり」につながるのかな?
一過性の盛り上がりで、本当に「活性化」するのかな?
障害のある選手のパフォーマンスを観ること、パラスポーツを応援することと、
社会を変えることは、どうつながるんだろう?
パン屋さんの本を読んで、違和感の謎が解けた気がします。
著者の渡邉格さんは、天然の菌でつくった酒種をつかって発酵をさせたパンをつくって売る「パン屋タルマーリー」の店主。
高校卒業後、紆余曲折して、25歳で大学に入学。
31歳からパンの修業をはじめて独立した人だ。
本書では、渡邉さんの人生の歩みを紹介しながら、
パンをつくることになった理由、
原材料、水、菌、働き方、暮らし方に関するこだわりなどが紹介されている。
効率的で利潤を追求するパンづくりではなく、
利潤を追求しないパンづくり(腐る経済)を大切にしている理由が解説されている。
渡邉さんは、次のように書いている。
田舎に暮らして5年あまり、「まちづくり」「地域活性化」の名のもとで、「腐る経済」とは正反対のことが行われている現実を何ども目にしてきた。
地域の「外」から引っ張ってきた補助金で、都会から有名人を呼んで、打ち上げ花火のようなまちおこしのイベントをやってみたり、地域の「外」から原材料を調達して、地域の特産物をつくったりする。
これでは地域には何も残らない。潤うのは、イベントを仕掛けた都会の人たちであり、販促やマーケティングが得意な都会の資本だ。
使われた補助金も、都会からやってきた連中のところへ流れていく。結局、「外」から肥料をつぎこんで、促成栽培で地域を無理やり大きくしようとしても、地域が豊かになることはない。むしろ肥料を投入すればするほど、地域はやせ細っていく。
ここで思ったのは、パラリンピックの関連イベントも「同じ」ということ。
「外」からのお金で開催されているし、
まさに「打ち上げ花火」みたいに思えるものもある気がするし、
大きな額のお金が動き、大規模な出来事が起こった結果として、何が残るのだろう、
たぶん、ほとんど残らないだろうなと思うからだ。
「パラリンピックを盛り上げよう」という時、
一体、何を「盛り上げる」のか。
パラリンピック開催で、「共生社会の実現を目指す」というけれど、
「盛り上げる」ことと、「共生社会」が、なんだか遠い。
「外」からでなく、「内」からのアプローチを考えないといけないし、
「内」からの小さなアプローチを実行して続けていくことしかない気がしている。
タルマーリーの渡邉さんは、発酵を通じてできる食(パンやビール)で「ほんもの」を目指すことで、
「外」からではなく、地域の「内」から「まちおこし」「地域活性化」にアプローチをしている。
ああ、ほんもののパン、食べにいきたい。
ほんものを目指す人たちに出会いたい。
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フィットネスビキニ選手の安井友梨さんがブログで紹介されていたタルマーリーのパンが食べたい食べたいと念仏のように来る日もつぶやいていたところ、夫が購入してくれました。一口食べたとたんに大ファンになり、ネットで調べているとオーナーの書籍が見つかり今に至ります。パンと経済を共存するにはどうすればよいのか、パンが好きなだけではいけない、しかしパンが好きでなければ総合芸術作品は作れない。オーナーのパンに対する哲学が余すところなくちりばめられています。パン好きの方も米派の方も是非ご一読を。
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発酵界ではちょっとした有名人の渡辺格さん。千葉の田舎で完全天然酵母のパン屋さん「タルマーリー」をはじめ、震災後には鳥取県の智頭町の廃校(?)になった幼稚園跡地でに移転。今は、元給食室でクラフトビールも作っています。智頭町は図書館で町おこし(岡本真さん関わってる)もしているので、今回のイベントにはピッタリでは。
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効率や利潤の追求から離れたところで、自然と向き合い、その中で自分たちが生きていく(生かされていく)ことを実感していく。素敵な生き方だと思う。