商品説明
21世紀の日本人は「あの戦争」から何を学ぶべきなのか?
書籍の刊行から10年を経て、いまも読み継がれる名著、待望の電子化!
対米戦争の目的は何だったのか? 陸軍エリートはどこで間違えたのか? 特攻、玉砕、戦艦大和……開戦から敗戦までの疑問を徹底的に掘り下げ、20世紀日本最大の失敗を最高のメンバーが論じた。その議論は戦略論、組織論、日本人論、エリート論など広範囲にわたり、戦後70年を過ぎたいまなお、輝きを失わない。
議論された人物、歴史的な出来事などに詳しい注がついているので、近現代史の入門書としても最適。
【目次】
<第一部>座談会 あの戦争になぜ負けたのか
1.対米戦争の目的は何だったのか
2.ヒトラーとの同盟は昭和史の謎
3.開明派・海軍が持つ致命的欠点
4.陸軍エリートはどこで間違えた
5.大元帥陛下・昭和天皇の孤独
6.新聞も国民も戦争に熱狂した
7.真珠湾の罠 大戦略なき戦い
8.特攻、玉砕、零戦、戦艦大和
<第二部>あの戦争に思うこと
●空しかった首脳会議(半藤一利)
●八月九日の最高戦争指導会議(保阪正康)
●私の太平洋戦争観(中西輝政)
●果たされなかった死者との約束(戸高一成)
●戦わなかった戦争から学ぶということ(福田和也)
●戦争を決意させたもの(加藤陽子)
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
小分け商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この商品の他ラインナップ
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
「なぜ負ける戦争、勝算なき戦争をしたのか」
2008/12/16 07:35
11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:CAM - この投稿者のレビュー一覧を見る
『文藝春秋』2005年11月号掲載の座談会記事を新書化したもの。 出席者6人は、半藤氏(1930年生)、保阪氏(1939年生)、中西氏(1947年生)、戸高氏(1948年生)、福田氏(1960年生)、加藤氏(1960年生)であり、戦前生まれ2人、敗戦直後生まれ2人、高度成長期生まれ2人から成っている。戦前生まれの半藤氏、保阪氏は、自分自身の戦闘体験はないものの、大東亜戦争関連の著作も多く、戦争経験者である将兵の多くと自ら直接にインタビューした経験を豊富に持たれている方。残りの4人は、戦争については観念的に学習したのみの方々と言えるだろう。
それにしても、2009年は昭和84年にあたり戦後64年であるから、敗戦時に15歳であった方が存命であるとしても満年齢が79歳。 大東亜戦争を、銃後であっても現実に体験した方々は次々に世を去られていることであろう。そして、本書では、話題となった将官についての簡単なプロフィールが欄外に注として記されているのであるが、あらためて感じるのは、多くの将官が、戦闘で、戦争裁判で、さらには自決により亡くなられてはいるものの、相当数の方々が戦後まで生き残っておられたということである。しかしながら、それらの方々も当然ながら次々に亡くなられているから、現在の日本には、現実に戦争というものを肌身で経験した人間は全くいなくなってきている状況だということである。したがって、これから発表される日本人の手になる戦争論は、その対象について全く「実体験」を持たない人間によるものになるということになる。考えてみれば恐ろしい事態である。
その反面では、時間の経過ということの結果として、秘密資料の公開が始まるという利点がある。しかしながら、中西氏は、本書の巻末付論の中で、大東亜戦争関連史料について「日本側に関する限り、今日かなりの史料が公開されてきているが、戦勝国側のものは、実質的に言って(中身の重要性に鑑みて)まだ半分も公開されていないと言ってよい」とし、真珠湾問題関連史料についても大量の非公開状態が続いており、論争が絶えない最大の理由はそこにあるだろう、と述べておられる(p.236)。
我々が「あの戦争」について考える時、「あの戦争になぜ負けたのか」という問いを発すれば、その前に「なぜ負ける戦争、勝算なき戦争をしたのか」という問いが必然的に出てくる。 本書では、冒頭の「対米戦争の目的は何だったのか」において、半藤氏は「対米英戦争、太平洋戦争に関する限り、私は目的は一言で言ってしまえば『自存自衛』だと思っています。侵略戦争ではない、防衛戦争だ、ということです」(p.11)と言い切っておられる。中西氏も支那事変と対英米戦の違いは戦争目的にあったのであり、「対英米戦は『自存自衛』の戦いだと国民の末端まではっきりと理解できた」、これに対して「支那事変は、その始まり方から言っても、そうした『大義』を感じることは難しかっただろうと思うんです」と述べておられる(p.184)。 私も、1941年の対米開戦前とその後の問題とは明確に区別して論じられるべきであると考える。
中西氏は、また「マッカラム文書」についてもふれて、「以後、アメリカが国策的に日本を挑発していったのは間違いない」と述べている(p.26)。淵田美津雄氏も、トルーマンが大統領が退任後、淵田氏に対して「真珠湾事件は両者有罪だよ」「いまに史実として両者有罪であることが明らかになるだろう」と語ったということを述べておられる(『真珠湾攻撃総隊長の回想』講談社p.365)。 また、最近渡部昇一氏がよく引用されるように、マッカーサーも上院軍事外交合同委員会において、「したがって、日本がこの前の戦争に入ったのは主としてセキュリティーのためだった」(Their purpose, therefore, in going to war was largely dictated by security.)と証言している。
私は、だからと言って、「あの戦争」を先制したことが正当化されるとか、その愚かさが軽減されるとか言うつもりもないし、むしろこれらの事実こそ、日本人の政治的未熟さ、国民意識の浅薄性、欠陥を露呈していると思う。 堀栄三氏が『大本営参謀の情報戦記』で述べるように、「情報戦」という観点から見れば、日本は米国の掌の上でいいように弄ばれていた、情報戦争の観点からみれば大人と子供の闘いであった、というのが実相ではなかろうか。本書でも、半藤氏は、ルーズベルトが「私は日本を3ヶ月間あやしておける(to baby)」と発言したといわれていることを紹介している(p.221)。中西氏は、本書において「VENONA文書」にもふれているが(p.239)、国際政治が戦勝者の公表史観だけで割り切れるほど単純なものでないことだけは確定的に言えることだろう。
現首相の祖父である吉田茂元首相は、アメリカ軍の駐留について、頭の悪いやつは占領が続くと思えばいい、頭のいいやつは番兵を頼んだと思えばいい、しかし、番兵はいつか必ず引き揚げるときがくる、その時が日米の智恵比べの始まりだよ、と語っていたという。 経済的、軍事的に、米国の圧倒的優位が揺らぎ始め、それは我が国との安保条約の見直しに繋がっていくことは不可避であろう。そして、中国及び朝鮮半島の情勢が相変わらず不安定な状況下で、でき得る限り平和を保持していくための国防論、国際関係論を構築していかなければならない我々の責任はますます重くなってきている。
本書は、雑誌座談会を増補した新書版で300頁にも満たない書ではあるが、以上のような観点からも、類書に加えて読まれるべき価値が十分にある書だと考える。
紙の本
繰り返さない
2015/10/20 14:05
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
なぜ負けたのか。なぜ始めたのか。なぜこんな作戦を実施したのか……。
現状を把握し先を見通し手を打つことが何と難しいことか。たとえそれができ(るはずであっ)ても、関わる人間にも左右される。「陸軍は……だけれど海軍は……」という人もいるが、本書を読むとどっちもどっちだとわかる。
同じことをまたしていないか、ニッポン?
紙の本
そして、まだ負け続けるのか。
2006/06/26 21:29
14人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GTO - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本の主題は、あの戦争から『卑屈な「自虐史観」や幼稚な「自慢史観」を超えて、何を学んだらいいのだろうか』(p.194)である。戦後の約30年間は、各国の公文書が未公開であったことやGHQの思想統制と情報操作によって画一的な第2次世界大戦観が日本を席巻してきた。それが、戦後50年を過ぎ少しずつ公文書が公開され新事実が明らかになってきて、(今もまだ未公開なものが多いが)やっとこのような座談会が行えるようになってきた。やっとこれからというところまで来たという感じだ。昭和天皇に関してはやや好意的な発言が多い気がするが、イデオロギー的な発言が少ないので、読みやすい。
わたしたち、戦後世代は先の大戦に多くの先入観を持っている。曰く
・海軍は戦争反対だったが、陸軍が強引に戦争に突入した。
・国民が何も知らないうちに、軍部が独走して戦争に突入した。
・開戦通告が遅れたため、真珠湾攻撃は米国の予想しない奇襲になってしまった。
・日本は国際法を守らず捕虜を虐待したが、連合軍は厚遇した。
・戦前の日本には民主主義がなかったので、一部の為政者によって誤った進路を選択させられた。(戦前は暗黒の時代)
・戦争は悪いことだから、してはいけない。(研究することも)
それらは、持たされてきたといってもよいのだが、(この件に関しては、『「眞相箱」の呪縛を解く』も詳しい。)一度そのような先入観を白紙に戻して冷静に昭和の歴史を振り返ることが必要である。その第一歩(入門)としてこの本は読まれるべきだろう。
特に情報戦や外交上の失策に関しては、戦後しっかりした検証はされていないままで、それが現在の経済敗戦・教育敗戦につながっているように思う。米国と中国に挟まれた日本外交は、単なる反米・親米や反中・親中ではうまくいかない。また、それらの国に対する国民感情もうまくコントロールできているとは言えない。社会組織の問題としては、日本はいまだ『本音は言わないままで、お互い少しずつ目標値をあげていくうちに、いよいよ収拾がつかなくなる、虚構が肥大化する、そしてどうにも対応できなくなる』(p.209)という癖を克服できていない。
若者に読んでもらうことを考えているならば、人名や事件名に、注だけでなくルビをしっかり振るとよかった。現在の日本の歴史教科書は、経済的側面を主にとりあげていて、軍部の責任というわりには、緒戦の勝敗を記すだけで、実際にその作戦を立案した人物や指揮した人物の名前はほとんど出てこないからだ。
紙の本
最近のきな臭い状況だからこそ、読むべき1冊
2016/10/14 19:07
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本がなぜアメリカとの戦争に踏み切り、そして負けたのかという点について、近代史に造詣の深い6名の方が対談形式で述べる本。「なぜ負けたのか」よりも「なぜ国力に圧倒的な差があったアメリカとの戦争に踏み切ったのか」という点に関する部分には、ちょっときな臭い雰囲気になりつつある今日、考え直す意味は深いと感じます。
対米戦争に限らずほとんどの戦争が「自衛・自存」を大義名分に始められ、ブレーキをかけるはずのメディアも政権や大衆に迎合していく流れであった事などは同じ過ちを繰り返さないためにも知っておくべき事実であると思います。
なぜヒトラーのドイツと同盟を結んだのか、海軍・陸軍エリートはなぜ判断を誤って開戦に向かったのか、開戦以後の戦略は存在したのか、など8つのテーマに分けて議論されています。
物凄く深い議論が展開されているのに、私自身の近代史に関する知識不足で、いまいちよく分からない印象を受ける箇所もありました。でも逆に言うと新書サイズでここまでの内容の本だけにお買い得なのかも。歴史(特に近代史)はちゃんと勉強しないといけませんね。