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ピラミッド
北欧ミステリの帝王、ヘニング・マンケルが生んだスーパースター、イースタ署の刑事クルト・ヴァランダー。そんなヴァランダーが初めて登場したのは、ガラスの鍵賞受賞の『殺人者の顔...
ピラミッド
ピラミッド (創元推理文庫)
商品説明
北欧ミステリの帝王、ヘニング・マンケルが生んだスーパースター、イースタ署の刑事クルト・ヴァランダー。そんなヴァランダーが初めて登場したのは、ガラスの鍵賞受賞の『殺人者の顔』だが、本書は、ヴァランダーがまだ二十代でマルメ署にいた頃の「ナイフの一突き」「裂け目」から、イースタ署に移り、ベテランとなった「海辺の男」「写真家の死」を経て、『殺人者の顔』直前のエピソードで、飛行機墜落の謎と手芸洋品店放火殺人事件を追う「ピラミッド」に至る、5つの中短篇を収録。ヴァランダーの知られざる過去を描いた、贅沢な作品集。
目次
- 著者まえがき
- ナイフの一突き
- 裂け目
- 海辺の男
- 写真家の死
- ピラミッド
- 訳者あとがき
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紙の本
いかにしてヴァランダーはヴァランダーになったのか
2018/05/24 03:09
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
あぁ、もうちょっと読んでいたかったのに、読み終わってしまった・・・。
『殺人者の顔』から始まる<ヴァランダー警部シリーズ>、日本での翻訳時差はありますが、本編は1990年・ヴァランダー42歳の時点からのスタート。本書はファンの声にこたえて作者が「『殺人者の顔』のヴァランダーに至るまでの彼の人生の軌跡」を点描でまとめたもの。なので短編集ではあるものの、ヴァランダーのそれまでの人生を描いた長編と考えることもできるわけで。
それだけのキャラクターへの愛着を読者に持たせるとは・・・やはりすごいなぁ。
5編収録、ヴァランダーの年齢順。
『ナイフの一突き』は1969年6月の出来事。ヴァランダーは22歳でまだ警官、しかもマルメ警察所属。刑事課のエース・ヘムベリに食いついたら離さない気質を見込まれて刑事課の手伝いをし、これが捜査官としてのヴァランダーの将来を決める事件に。のちに結婚し離婚するモナとはまだ恋人時代なれど、「この二人、絶対うまくいかないよ・・・」という空気はくっきり(まぁ後付けですけど、なんで結婚したんだろうね、この二人)。
『裂け目』はこの中でいちばん少ないページ数なれど、ヴァランダーの警察官人生においてのターニングポイント。1975年のクリスマスイヴ。、仕事においては彼は警部補になっているが、モナと結婚して娘のリンダが生まれているがすでに夫婦仲は破綻気味のため次の夏にはイースタ署に転勤することになっている。より田舎に行くことで仕事に費やされる時間を少しでも減らせるように(だからもうマリアガータンのあの家に住んでいる)。「この国はどうなっているのか? どうなっていくのか?」とヴァランダーが心底思った最初の事件かも。
三作目の『海辺の男』からはイースタに完全に舞台が移るので、いつものシリーズの空気感たっぷり。この事件は1987年4月なのでイースタで働き始めてもう10年経っていることに。リードベリに対するヴァランダーの尊敬の念が眩しい(なので体調不良を訴える彼に「早く病院に行って検査を受けて!」と言いたくてたまらない)。
『写真家の死』は1988年4月。この一年でヴァランダーは捜査官としての確かな実績をイースタで示したようで、実質上のリーダーになっている(その割に相変わらず思いつきが先行しての個人プレーが多く、自分でも反省している)。このあたりからイースタ署の懐かしのメンバー勢揃いという感じで、なんだかうれしい。風邪をひきやすくてすぐ休んじゃうマーティンソンとか、せっかちなハンソンに実直なスウェードベリとか!
そしていちばんの長い『ピラミッド』はプロローグとエピローグ付きでもはや短編ではない。スウェーデンの片田舎にいながら犯罪は国境を越え、普通の人と思っていた人たちの意外な裏の顔が存在することが意外でなくなってくる時期に。でもそのことにヴァランダーはまだ慣れないし、慣れたくないと思っている。
この事件は1989年から1990年にかけて、つまり最後は『殺人者の顔』の冒頭とクロスする形で幕を閉じる。なんて素敵なファンサービス!
描かれているのはヴァランダーの捜査官としての成長と、人間としての苦悩、<新しい時代の犯罪>の着実な気配。
それにしてもヴァランダーの父親は困った人だ・・・私だったら絶対縁を切っているけど、ヴァランダーは時に癇癪を爆発させつつも最終的に父親を許している。その関係は正規のシリーズにも続いていくものだけれど、<家族>というのもまたこのシリーズにおけるサブテーマのひとつだからかなぁ。
あぁ、次の作品、読みたい!
紙の本
北欧の正統派ミステリー中篇集。
2018/11/23 02:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
帯には短篇集とありますが、日本文学的には中篇集です。
お腹いっぱいの600ページ超で、途中でだれることなく
がっつり楽しめます。刑事ヴァランダーシリーズの作品の一つです。
評判に納得のいく読みごたえでした。
五つの作品が収められています。
二十代で恋人のモナの機嫌をとるのに必死だったマルメ署のころ。
イースタ署に異動してモナと結婚したころ。
捜査官に出世し、家族をかえりみなかったころ。
ベテランになり、わがまま老人と化した父に振りまわされるころ。
ミステリー本編とからめて、ヴァランダーの生きざまが透けてみえるのが
見どころの一つです。
警察官の単独行動は厳禁という原則を、
ヴァランダーはしばしば破ります。
謎を考えぬき、手がかりを見つけ、状況に穴をあけてと、
典型的な仕事バカのヴァランダー。
単独行動は捜査にのめり込んでいった結果なのです。
わたしには冒険ミステリー小説に思えました。
シャーロック・ホームズの系統ですね。
それくらいヴァランダーはよく動くのです。
ホームズほどの洞察力はなく、私生活に振りまわされていますが、
それがかえってミステリーの弱点を補っていて、
実体感を高めていると思います。
どの作品も満足度が高かったです。
なかでも、警察官なのに刑事の素養に目覚めて暴走をくり返す
一作目が好きですね。ナイフの一突きという作品です。
目の前で起きた課題を解決したいと思うあまり数々の失態を
くり返します。 若気のいたりと思っていたら、ラストに驚かされました。
そして作品の雰囲気を理解しました。
この作品集において、謎解きは物語の推進力の一つです。
本筋はヴァランダーの人間性との対話に思えました。
読ませてくれますよ。
紙の本
シリーズ初の短編集
2018/09/30 17:50
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:J・P・フリーマン - この投稿者のレビュー一覧を見る
「殺人者の顔」以前のヴァランダーを描いた短編集。短編といってもほぼ中編くらいの文章量はあります。ヴァランダーの成長が見ることができます。それに父親とのやりとりがも一度見れてうれしいです。ただ、表題作の「ピラミッド」は、五編の中では一番したかなと。ちょっと矛盾があったり 一連の殺人が麻薬がらみの事件とわかってから解決までが冗長かなと思えるのが残念。他の作品がトントン拍子に解決しているから余計そう思ったのかな。