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ゴー・ホーム・クイックリー
著者 中路啓太
終戦直後の昭和二十一年の初め、最高司令官総司令部(GHQ)の方針に従い、国会内の委員会で政府試案をまとめたが、GHQは拒否。そればかりか、GHQ憲法改正案を押し付けてきた...
ゴー・ホーム・クイックリー
商品説明
終戦直後の昭和二十一年の初め、最高司令官総司令部(GHQ)の方針に従い、国会内の委員会で政府試案をまとめたが、GHQは拒否。そればかりか、GHQ憲法改正案を押し付けてきた。この案を翻訳し、日本の法律らしく形を整え、新憲法の下敷きにせよ、というのだ。
わずか二週間で翻訳にあたることになったのは、内閣法制局の佐藤達夫。吉田茂外相と話す機会を得た佐藤は、GHQ案の問題点をまくしたてる。それを聞いた吉田は、佐藤に言った。
「GHQは何の略だか知っているか? ゴー・ホーム・クイックリーだ。『さっさと帰れ』だよ。総司令部側が満足する憲法案を早々に作っちまおうじゃないか。国の体制を整えるのは、彼らがアメリカに去って、独立を回復してからだ」
終戦直後、日本は自治権を失った。
この小説は、昭和天皇の戦争責任をたてに、GHQから、憲法改正案を押し付けられようとも、未来の日本国民のため、日本という国家の矜持のため、懸命に戦った官僚と政治家たちの熱い物語である。
かつて司馬遼太郎は、『坂の上の雲』で、明治という時代の明暗と、近代国家誕生にかけた人々の姿を小説にした。
自らの保身しか考えない官僚と、未来へのビジョンを提示しない政治家がはびこる現代だからこそ、著者は、「国のために戦った」男たちの姿を描いた。
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紙の本
ノンフィクションのような小説
2020/09/24 09:27
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投稿者:コアラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「戦争に敗れ,日本民族の自主性がまったく否定されようとするこの厳しい時代環境の中で,日本人の誇りを保つべく,徒手空拳で悪戦苦闘する委員たちの立派さは,誰が何と言おうとも,自分だけは知っている」という一文が,このノンフィクションのような小説の要約になっている。主人公たる佐藤達夫は委員ではないが,作者はこの法務官僚である佐藤こそが徒手空拳で悪戦苦闘した人物であると描いている。それに対して自分たちの価値観と異なる文化や言語を理解せずまた理解しようともせず,ひたすら上から目線で国際法違反の無理難題を押し付けるGHQの役人の醜悪さも描き出している。いわゆる「人類の最先端の文明とはどういうものか,未開な日本人に教えてやろう」という態度である。1964年まで公式に人種差別をしていた人々が何をいうかと笑ってしまう。チョイ役で出てくるベアテ・シロタも道化師を演じている。