紙の本
思考のレッスン2
2004/09/18 19:46
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:後藤和智 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間は論理的にものを考えるといわれており、また、子供の考えることは前論理的だといわれる。しかし、果たして本当にそうなのだろうか。
例えば、会議や話し合いなどで相手の顔を見て、その顔つきからその人が信頼するに足る人であるかを判断する、ということは、果たして論理的といえるか。または、マスコミにおけるいわゆる「今時の若者」を報じるものでは、渋谷とか原宿、あるいは秋葉原などに出向いて、「「今時の若者」はみんなこんな感じだ」と論評してみせるものが多いが、それは果たして論理的といえるだろうか。あるいは、「レタスには食物繊維が多く含まれている、だからレタスをたくさん食べなければならない」と考えている人も、もしかしたら少なくないかもしれない。
我々が普段何気なく行っている行為である「考える」ことについて、本書は認知心理学の立場から近接している。本書によると、一般に「推論」と呼ばれる行為は、基本的に自分の知識や経験に立脚している、という。これをボトムアップ型の推論という。また、「推論」はそれまでの環境や文脈によって行われることもあり、これをトップダウン型の推論という。我々は、このようなトップダウン型の推論とボトムアップ型の推論を同時に行うことによって、先を予測することができる。しかし、思考にはバイアスやステレオタイプがつき物である。なので、人間の思考は時として論理的なものから逸脱したり、あるいは失敗する。
本書は、確立・統計に関する推論も取り扱っている。例えば、コインを何回か投げる試行で、4回くらい連続で表が出ると、「もうそろそろ裏が出るだろう」と考える人は少なくないだろう。しかし、コインを投げて表が出る確率と裏が出る確率はともに2分の1であり、連続して表(あるいは裏)が出るという「偏り」が出たほうが、かえって自然である。逆に人間に乱数表を作らせると、「乱数」にこだわるあまり変なものができてしまう、という。
こうやって「考えること」に、心理学的な側面から一定の「意味」が与えられることによって、我々の「考えること」に対する「考え」は深まっていくのではないか。もちろん、本書を読むことによって、我々が即座にバイアスやエラーを排して考えることができるわけでは断じてない。しかし、「考えること」の構造を理解することによって、物事に対して一定の距離をとって、あるいはちょっと立ち止まって考えてみる、という態度を養うことはできるかもしれない。
蛇足だが、ベストセラーとなった正高信男『ケータイを持ったサル』(本書と同じ中公新書!)の第5章を信じ込んでしまっている人は、ぜひ本書の第1章を読んでいただきたい。正高氏が「ウェイソンの4枚カード問題」で壮大なヘマをやらかしていることがわかるはずだ。
(〈思考のレッスン〉の1はダレル・ハフ『統計でウソをつく法』(講談社ブルーバックス)、3は谷岡一郎『「社会調査」のウソ』(文春新書)の書評に掲載してあります。)
紙の本
「考える」ということはどういうことかを科学的に解き明かそうとしています!
2016/03/04 09:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、認知心理学について知りたい方々にとっては、絶好の一冊です。それほど分量もなく、とても読みやすい平易な文章で書かれています。特に、認知心理学のテーマである「考える」ということについて、科学的な検証が行われ、その意味が解き明かされていきます。教育関係者や教師を目指す学生さんには、ぜひ、読んでいただきたい一冊です。
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基礎ゼミ課題図書の一冊。認知心理学の本で、推論を扱っています。なんで論理ではわかるのに、直感ではわからないのか・・・その答えがわかります。
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批判的思考、認知科学の入門書として最適。様々な問題がかなり授業で使える
カテゴリーに基づく帰納推論、4枚カード問題、確率判断、ベイズの定理、ヒューリスティクス等
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市川先生による認知心理学・認知科学の推論・類推・意思決定・確率判断などに関する概論書。
これを読んでから一段上の解説書に入ることを勧める。
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自分たちの日常生活では、多くの推論が用いられている。推論の学問的側面から、我々が無意識のうちに使っている推論の特徴までを幅広く解説している。事例を交えて解説しているので、とてもわかりやすかった。人間が実際にする推論には、その人が持つ知識、信念、期待などの要素が関わっており、判断を誤ることがあるのはそのためなんだなと思った。直感で片付けてしまっていることも、時にはちょっと冷静に考えてみると、面白い発見があるかもしれないね。
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本書は、認知心理学の本です。ですが、副題にある通り、入り口としての
位置づけですので、総評としては読みやすく、面白かったと思います。
ただし、行動経済経済学を学んでいる方にとっては、既知な情報が多いと
思います。なぜなら、心理学(認知心理学を含む)と経済学を併せて考えられたのが
行動経済学ですから。
内容は、人々は推論を常日頃行っている。しかし、その推論はほとんどが演繹的ではない。
帰納的考え方によるものである。また、色々な心理的作用によってバイアスがかかる。
よって論理的でもなく合理的でもない場合が多い。人間はよく間違える。しかし、
弱い部分を見つめ直し、より洗練された思考法を身に付ける事は可能である。
本書の中で、統計的思考訓練を受けた学生とそうでない学生では、やはりある問題に
対する正答率が異なる。まぁ、当たり前ですが要は「勉強しましょう」という事です。
勉強すれば、論理的思考力が付き間違いを減らせますよと。
そして、本書のポイントは、
1.人間は論理的ではない。視覚的なイメージを操作して考える。(イメージさせる)
2.同型的図式表現(ルーレット表現)
3.認知的不協和理論
の3点です。2は、タクシー問題といった論理的には正しい解が、感覚的には
どうにも納得できないという難問を解くためのツールです。
(※タクシー問題は、本書を参考にしてください。)
まぁ、やはりイメージは大切ですね。認知心理学的に証明されたのですから、
誰かに何かを伝えるときには、なるべくイメージ出来るように伝える。
そして図式化する。私は、元は建築出身なので図で考える事は好きなのですが、
そうでない方は、訓練した方がいいかもしれませんね。
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福澤一吉氏(『議論のレッスン』)推薦。推論に関する話題を認知心理学的側面からまとめたもの。推論にはどのようなものがあるのか、また推論にはどのような心理学的プロセスが働いているのかなど、議論の構造とダイナミズムを考える上で知っておくべきことが満載されている。
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論理学、認知心理学の最初の書物としては最適。今でこそ行動経済学その他、この分野の入門書は数多くあるが、平易でありながら、根源的である点で群を抜いていると思う。
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2010/8/16再読了。
人間の推論に関する記述的な研究の奥深さを理解。人間の内面や他者、外部との関係を良く考慮しないと人間のモデル化は難しいと感じた。
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数学を学ぶと必ず通る道には確率がある。高校や大学で。数学好きな僕だから、確率は面白かった、でも少しだけ苦手だった。その少しだけの理由が、この本の中あった。確率のなかに潜む心理。心の中で隠れて動く統計。それを少々難しく、でもできるだけわかりやすく、そしてちょっと楽しく教えてもらった。認知心理学とかなに?って人な私でも、楽しく読めた。むしろ、知識の少ない私みたいな人にぴったりだったのかも。
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認知屋と自ら称する市川伸一氏の書。
論理学、認知心理学の入門書として最適。簡単な言葉で、本質的を付くあたりが素晴らしい。
内容としては、認知心理学の事例の紹介と、人間の論理的な特徴を述べている所が面白い。下記を見て興味を持ったら読んでもみてもいいかもね。
人間の特徴
・ベイズの定理が難しいのは、人間にとって納得し難い答えがでること
・「仮に」と前置きしても、それを事実のように扱う
・暫定的な間違った事を答えとする
・記憶を圧縮し、解凍できないまま忘れる
・故障原因を探る時、原因の確率高いものとして①と②があるけど、①ばかり調べること
①典型的な稀な現象
②典型的ではないが、よくあること
認知心理学の事例
・4枚カード問題
・ヘンペルのパラドックス
・新人王の2年目のスランプ
・三囚人問題
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ベイズの定理とは、ある仮説の正しさに対する“事前確率”と、その仮説のもとでデータが得られる“条件付き確率”とから、逆に、あるデータが得られたもとで仮説の正しさを確率的に求める定理である。
今、3つの仮説(H1、H2、H3)があったとし、それぞれの仮説の事前確率が、
P(H1)=3/6、P(H2)=2/6、P(H3)=1/6、であったとする。
また、各仮説のもとでXという結果が得られる確率(条件つき確率)が、
P(X|H1)=3/10、P(X|H2)=2/10、P(X|H3)=1/10、であったとする。
今、Xが得られたときに、仮説H1正しさ(事後確率)を求めると、
P(H1|X)={P(H1)×P(X|H1)}÷{P(H1)×P(X|H1)+P(H2)×P(X|H2)+P(H3)×P(X|H3)}
={3/6×3/10}÷{3/6×3/10)+2/6×2/10+1/6×1/10}
=9/14
となる。
要するに、仮説H1がもともと正しいとする確率(事前確率)とその仮説のもとでXが得られる確率(条件つき確率)を掛け合わせたもの(分子)を、Xが得られる可能性の総和(分母)で割ったものが仮説H1の確からしさ(事後確率)となる。
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推理・推論の誤り、思考回路をつまびらかにする学問。それが認知心理学。4枚カード、ペイズの理論、三囚人の問題、ギャブラーの誤り、ヒューリスティックスという曖昧な判断。具体例を用いながら、分かりやすく解説する、入門書、導入的な新書。人間の思考というのは、おもしろい!これが認知心理学の神髄だろう。
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認知心理学の中でも特に「考えること」に焦点をあてた教科書的な本。人間がどのように考えているかを理解するための基礎知識がまとまっている。