紙の本
いやぁ、やっぱり★5つです。
2020/08/17 20:28
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投稿者:オオハシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
いやぁ、やっぱり★5つです。
ビジネスの世界に入って20年ぐらいでいろいろ経営に関する本も読んできたところ、昨今のVUCA時代で昨年出版されていた当初から気になっていたのだがようやく読めました。
(というより「両利きの組織をつくる」や「じわじわ死ぬ会社 蘇る会社」「シン・ニホン」「コーポレート・トランスフォーメーション」「世界標準の経営理論」などを経て、この本(大本)にたどりついた、というような流れ)
20年ぐらいで、それこそドラッカーだったりD・カーネギーのリーダーシップ本だったり、稲盛さんや松下さんの経営本だったり、もっと昔はソニーの本だったり、そしてシリーズものだと「ビジョナリーカンパニー」シリーズとか、昨今紹介した本だと野中先生の本だとか。(やっぱりそういう意味では複数の企業の栄枯盛衰を分析・考察したビジョナリーカンパニーシリーズは大好き)昨今だとデザインシンキングだったりアート思考DX関連だったりOODAループ思考だったりもする。
そんな感じでいろいろ読み進め、積み上げてきた中での2020年のビジネスパーソンがぜひ読む本だな、と思うところ、正直である。 周辺本をいくつか読んできていて、あぁやっぱり大本にはたどり着かねばね、と思ったけどやはり読んでよかった。 ほっとした。 (もちろんこれから「コーポレート・トランスフォーメーション」「世界標準の経営理論」も読みます。。)
あんまりレビューにはなってないですがとにかく読んだほうが(読んでおいたほうが)いいですこの本。
いつもの抜粋としては下記。(ほんとは入山先生のアツイ解説の部分から引用したかったがやめときます)
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P382
最も成功している企業がイノベーションストリームを構築し、両利きの行動をとっていることはもう明らかなはずだ。深化ユニットでは重視されるのは漸進型イノベーションと絶え間ない改善だが、探索ユニットでは実験と行動を通じた学習である。探索ユニットはスピンアウトせずに、深化ユニットの中核となる資産と組織能力を探索ユニット内で活用する。内部的に矛盾をはらんだ探索ユニットと深化ユニットを共存させるには、包括的で感情に訴える抱負、基本的価値観、幹部チームの強い結束力が必要になる。
こうした要素がすべて合わさると、探索ユニットは未来を見出す権限を与えられ、幹部チームは一定の尺度で有望な実験を行う選択肢(明日の主流事業への道を開くか、別の事業をさらに追加するか)が持てるようになるのだ。
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『イノベーションのジレンマ』で、クリステンセンは、経営者が論理的に考え、適切なオペレーションを行い、持続的改善に拘るあまり、最終的に破壊的イノベーションに対抗できず窮地に追い込まれる事例をいくつも挙げた。そして、破壊的なイノベーションを起こすために探索を行う組織(サブユニット)を本社組織とは別に作ることを推奨した。しかしその実態としては、多くの場合は本社から十分なサポートが得られないまま失敗に終わってきた。
この不都合を克服するために著者が主張するのは、この本のタイトルにもなっている「両利きの経営」である。
「成熟事業の成功要因は漸進型(Incremental)の改善、顧客への細心の注意、厳密な実行だが、新興事業の成功要因はスピード、柔軟性、ミスへの耐性だ。その両方ができる組織能力(Capability)を「両利きの経営(Ambidexterity)」と呼んでいる。
解説の入山章栄さんがその著書『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』の中で本書の著者タッシュマンの両利きの経営の研究に言及し、「世界の経営学で最も研究されているイノベーションの理論の基礎は「Ambidexterity」(両利き)という概念にあるといって間違いありません」として、イノベーションの分野においては、クリステンセンの示唆する方向よりもより深く研究が進んでいるとして紹介している。
何より、自社の方でもイノベーションにどのように対応していくのかという大きな経営課題に対する解決策としてこの『両利きの経営』が喧伝され、そういったこともあって手にとって読んでみた。
成熟事業では「深化」を進め、同時に新興事業においては「探索」を続ける。「探索」と「深化」とでは、求められる組織的な調整や組織能力が根本的に異なるため、組織的に意識をして仕組みとして実行することが現代における多くの企業では必要である。そのとき、その成否を左右するのは、テクノロジーでも、はたまた運ですらないという。何といっても最大の要因はリーダーシップにあるというのが本書の重要なメッセージでもある。なぜなら「概念上は簡単そうに見えても、多くの場合、実行するのはきわめて難しい」ため、リーダーシップによるトップダウンの実行が必要になるのである。
(なお、キーワードになっている「深化」と「探索」は、英語にするとExploitionとExplorerationと非常に似た語感の単語になっている。訳者は少しでも漢字を似せようとしたのかもしれない)
「組織の観点でいうと、深化がマネジメントの問題だとすれば、探索は基本的にリーダーシップの問題である」と著者は言う。「上級リーダーたちが優秀なマネージャーになったとき、組織は危険にさらされる」とまで言い切る。なぜなら、「短期的には、現状維持のためという口実は、たいてい説得力を持っている」からである。
「既存のビジネスモデルを活かして、未来の探索に役立つ形で既存の資産を再構成できる場合、リーダーシップがきわめて重要になる。...この能力は養っていく必要があるうえ、しっかりと守らなければ、すぐに失われてしまう」
本書の多くの部分はうまく両利きの経営ができたかそうか、成功・失敗両方の事例企業の紹介とその分析に当てられて��る。ざっと挙げると次の通りだ。
成功企業事例
・Netflix ... 郵便DVDからオンライン配信への転換に成功
・富士フィルム ... Kodakと違い多角化に成功
・Amazon ... 本のオンライン販売から多品種・中古販売、さらにはクラウド(AWS)やエンタメ事業にまで進出。顧客満足をコアバリューとしてトップダウンで徹底
・Ball Corporation ... 保存用ガラス瓶の会社から宇宙産業への進出
・USA Today ... 他の新聞社と違いトップダウンでオンラインへの転身を図り成功
・CIBAVision ... コンタクトレンズから新製品への移行に成功
・Flextronics ... 既存リソースを活用して海外で成功
・Cypress Semiconductor ... 継続的な新規事業の探索に成功
・IBM ... 新規事業探索のプロセスをCEOのリーダーシップの下で仕組化、組織として浸透
・British Telecom ... リーダーシップにより新規事業の立ち上げに成功
・Haier ... リーダーシップの下、戦略的に新規事業に取り組み
失敗企業事例
・Blockbuster ... Netflixとの競争に敗れて廃業。『NETFLIX コンテンツ帝国の野望』(お勧め!)にも詳しい。
・Kodak ... 富士フィルムと違い、写真フィルムビジネスから抜け出せず破綻
・SAP ... 新規プロジェクトが失敗
・Sears ... 全米に広がったが、サクセストラップに嵌り経営破綻
・HP ... ポータブルスキャナ事業の立ち上げに苦労
・Firestone ... 古いタイプのタイヤに拘り身売り
・RCA ... サクセストラップに嵌り、新規事業の立ち上げに失敗
・Cisco Systems ... 新規事業の探索を組織として実行しようとしたが、やり方が徹底できず多くが失敗
・航空会社 ... 格安航空の経営に失敗
例えば、最初の方で取り上げられるAmazonについてはかなり詳しく企業成長の経緯が説明されている。シアーズやIBMも大きく取り上げられているが、CIBAVisionやBall Corporationといった特に日本ではなじみの薄い企業にも焦点が当てられていて、それぞれの企業の物語としても面白く読める。
リーダーシップが重要だと言うが、リーダーがすべてを決定するということを意味するものではないのである。両利きの経営の成否はリーダーシップにかかっているのかもしれないが、それはリーダーがすべてを決めて取り仕切り、物事を進めるということではない。そうではなく、逆に組織として両利きの経営のCapabilityを備えていかないといけないのだ。例えば、Amazonのジェフ・ベゾスは次のように言う。
「私がすべてのアイディアを持っているわけではない。それが私の役割ではない。私の役割は、イノベーションの文化を構築することだ」
もちろん、何が新しい脅威であり、何に取り組むべきかを捉えるのはリーダーの仕事だ。
「企業のリーダーには、確実に新しい脅威を察知し、組織の既存資産を再構成して新しい機会を捉える責任がある。これが、組織のリーダーが果たすべき役割の本質なのだ」
多くの企業においては、現在の地位を築くにあたっての成功体験を有している。そのため、新しい機会や脅威が訪れたとしても既存領域ややり方を組織的に優先し、これまで磨き上げた組織能力を活用した守りに回ってしまう。著者はこれを「サクセストラップ」と呼び、多くの企業が陥る罠であるとする。『イノベーションのジレンマ』以来、何度も指摘されてきたものであるが、実行できている企業は少なく、多くの企業が経営破綻や身売りに追い込まれてきた。
著者の分析では、進化生物学的な観点から、「多様化(variation)」「選択(selection)」「維持(retension)」がその基礎になるという(頭文字を取ってVSRと呼ぶ)。企業も生物と同じように変化する環境に応じて進化していかなければ生き延びることができないというのがその認識だ。うまくこのCSRのプロセスを回すための組織能力を「ダイナミック・ケイパビリティ」と呼んでいる。変化が早まった現代において、こういったプロセスを恒常的に回して反復できることが「両利きの経営」なのである。その上で、組織がうまく両利きになれる状況は、「明確な戦略的意図」「経営陣の保護や支援」「対象を絞って統合された適切な組織アーキテクチャー」「共通の組織アイデンティティ」という四つの要素が揃わないと難しいという。そういった組織にするための方向性を指し示すのは、依然リーダーの役割かもしれない。
誰もが認めるように近年は一定規模の企業にとって、いかにイノベーションを創出していくのかが課題になっている。実際には、巻末解説の冨山さんが言うように「既存産業の大構造転換や大絶滅を起こすような破壊性を持つイノベーションを起こす確率について、自分自身、あるいは自社が起こす確率と、別の誰かが起こしてしまう確率とで、どちらがより高いかは自明である」ため、提携やM&Aも含めた「探索」が必要となってくるのである。したがって、「誰かが起こした(起こしつつある)破壊的なイノベーションに対して、どうすれば後手に回らずに的確に対応できるか?」が実際的な問いになるのである。そこに向けた組織力の醸成が必要となってくる。
言うは易し、行うは難し。
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『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(入山章栄著)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4862761097
『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』 (入山章栄著)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4822279324
『NETFLIXの最強人事戦略』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4334962211
『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4492503021
『NETFLIX コンテンツ帝国の野望』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4105071211
『アマゾンが描く2022年の世界 すべての業界を震撼させる「ベゾスの大戦略」』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4569837336
『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4822249816
『ワンクリック ジェフ・ベゾス率いるAMAZONの隆盛』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4822249158
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202004/
ベゾスの考えでは、小売業者は二つのタイプに分かれる。より多く課金する方法を探す小売業者と、より安くする方法を見つけようとする小売業者だ。アマゾンが常にめざしてきたのは後者であり、「きわめて低い利益率で、私たちは常に非常に心地よく事業運営を行ってきた」という。
アマゾンの売上高は2000年には27億ドルとなり、書籍販売から、ベゾスの言葉を借りると「買いたいものを探せば見つかる場所」へと変貌を遂げた。/
アマゾンの戦略を説明する際にベゾスが指摘するのは、顧客志向を打ち出す企業は多いが、そのうちの大半がそうなっていないことだ。その理由として、「企業はスキルを重視する。新しい分野に事業を広げようと考える際に、最初に考えるのは『なぜこれをやるべきなのか。自分たちにはその分野のスキルがない』点だ。こうなうと、企業の寿命は有限になる。というのは、世の中は変わっていくため、かつては最先端スキルだったとしても、すぐに顧客には不要なものとなるからだ。それよりも『自社の顧客には何が必要か』から始まる戦略のほうがはるかに安定している。この問いかけをした後で、自社のスキルとのギャップを調べていくのだ」。/
USAトゥデイの事例から学べること
第一に、カーリーが戦略的意図(「新聞ではなく、ネットワークになr」)をはっきりと打ち出し、探索ユニットと深化ユニットがいずれも同じ組織の一員として協力し合うべき、正当な理由を示した。
第二に、組織全体に適用される共通の価値観(公正さ、正確さ、信頼性)という形で、共通のアイデンティティを与えている。
第三に、最終的に配下の上級幹部チームが足並みを揃え、新戦略に尽力するよう徹底させ、熱心でない人は参加意識の高い人と交代させた。
第四に、探索と深化の両部門を構造的に分離させつつ、重要な接点のマネジメント(日次の編集会議)と運命共同体としての報酬制度を通じて、しっかりと統合が図られている。
最後に、カーリーとそのチームは、新組織を推進する勇気を持っていた。紙媒体の資源を転用して、新しいウェブプロジェクトに資金を回すといった意思決定は物議を醸したが、諸々の反対意見に屈しなかったのだ。/
経営陣が果たすもう一つの重要な役割は、新規事業と成熟事業の間のインターフェースを管理して、必ず起こってしまう対立を解決することだ。両利きの経営の付加価値は、成熟事業の貴重な資源を新規事業に適用できるところにある。リーダーシップが介入しないと、こうした事業は孤立したユニットとなり、ある事業から別の事業へとスキルや学習を有効活用する機会が持てなくなる。
しかし、最善の意図があったとしても、新規ユニットと既存ユニットの間には対立が起こるものだ。そこで経営陣が間に入らないと、ほとんどの場合、成熟事業が幅を利かせ、スタートアップは不利益をこうむる結果になる。少なくとも、新規ユニットが生き残れる事業だと証明できない限り、そうなるだろう。/
第三の重要な共通点は、探索ユニットを大組織から分離させることの重要性だ。既存の施設を使うことの効率性については議論が分かれるところだが、前述の事例はいずれも、���ユニットを本社組織から物理的に切り離していた。古い構造やプロセスから解放され、新しいスタートを切るうえで、こうした分離はきわめて重要だったと、新規事業のリーダーたちは協調している。このように距離を置かないと、古いマインドセットから生じる惰性によって、新規事業の成長に必要な焦点がぼやけ、熱量の低下を招きかねないのだ。/
最も成功している企業がイノベーションストリームを構築し、両利きの行動をとっていることはもう明らかなはずだ。深化ユニットでは重視されるのは漸進型イノベーションと絶え間ない改善だが、探索ユニットでは実験と行動を通じた学習である。探索ユニットはスピンアウトせずに、深化ユニットの中核となる資産と組織能力を探索ユニット内で活用する。内部的に矛盾をはらんだ探索ユニットと深化ユニットを共存させるには、包括的で感情に訴える抱負、基本的価値観、幹部チームの強い結束力が必要になる。/
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2019年出版
既存事業の深化exploitation
と
新規事業の探索exploration
同じ企業でこの相反する両利きambidexterity経営をしなければ、破壊的イノベーションが頻発するこの時代を生き抜けない
実在の企業を実例として解説しており、分かりやすい。
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会社の経営層や、それに近い人から、この本の題名が出ていたので読んだ。
結論から言えば、経営層向けの本と言えるが、上の人の意図を理解するために読むことは悪いことではない。
両利き経営に必要な4つの要素
1.明確な戦略的意図
2.経営陣の保護や支援
3.対象を絞って統合された適切な組織アーキテクチャ
4.共通の組織アイデンティティ
両利き経営の組織リーダーシップでは、誰かを送り込むだけでは不十分で、個人的にも積極的に関与する必要がある
両利き組織を導く原則
1.心に訴えかけ戦略的抱負を示し幹部チームを巻き込む
2.どこに捜索と深化との緊張関係を持たせるかを明確に選定する
3.幹部チームの対立に向かい合い、葛藤から学び事業間のバナンスを図る
4.一貫して矛盾するリーダーシップ行動を実践する
5.捜索事業と深化事業にちてのギロにゃ意思決定の実践に時間を稼ぐ
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成長を続ける大企業と、破綻に追い込まれた大企業。その差は何か?
成長し続ける企業は、
・既存の資産と組織能力を「深化・有効活用」しながら
・新規事業を「探索・開拓」している。
こうした経営を「両利きの経営」という。
十分な資源や組織能力を保有しながら、破綻もしくは倒産寸前に至った企業の共通点は、「リーダーシップの失敗」。
これら企業のリーダーは、新しい機会を感じ取れず、企業が繁栄を続けられる形で自社の資産を再構成できない。
ーーーー✂ーーーー
クリステンセンによると「破壊的イノベーション」の特徴は、
新たな製品・サービスの導入を通じて新規市場を創造すること。
当初は訴求力に欠けるが、技術が改良され品質が向上すると、既存プレーヤー間で価格崩壊と大規模破壊が起こる。
破壊に直面した組織は、
・成熟事業で競争しながら(深化)
・新しい技術やビジネスモデルを探求する(探索)
必要がある。
しかしクリステンセンは「探索と深化は同時にできないので、探索にあたるサブユニットをスピンアウトせよ」と言う。
私たちの研究によると、成熟事業と新規部門が断絶していると、新規部門の足が引っ張られ、身動きがとれなくなる。
そのため、両利きの経営が必要になる。
ーーーー✂ーーーー
両利きの経営を成功させるための要素は、次の4つ。
①探索と深化が必要であることを正当化する、戦略的意図。
②経営陣の積極的な関与と支援。
③探索事業と深化事業の距離をとりながらも、企業内の資産や組織能力は活用させる組織構造。
④探索事業と深化事業にまたがる共通のアイデンティティ。
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やはり理論に寄ると、文脈からは離れるのでどうしても抽象的でそりゃそうだ、という普遍的なものになりがち、は構造的なこと。深化と探索の両立、を自分の置かれている文脈で考えることが大事。ざっくり、深化にはマネジメント、探索にはリーダーシップ、という構図はわかりやすい。
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探索と深化。変化と進化。アマゾンの箇所が一番読みやすかった。凝りかたまりせず、柔軟に状況に適応していくことと、頑固に極めていくことと、その両方がバランスよく持てるのか、。
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「両利きの経営」とは、イノベーションで既存事業を強化しつつ(深化)、従来とは異なるケイパビリティが求められる新規事業を開拓(探索)すること。この実践法を、豊富な事例を交え説く。解説陣の説明が非常にわかりやすく、本書の理解を助けてくれる。
解説 なぜ「両利きの経営」が何よりも重要か
第1部 基礎編―破壊にさらされる中でリードする
第2部 両利きの実践―イノベーションのジレンマを解決する
第3部 飛躍する―両利きの経営を徹底させる
解説 イノベーションの時代の経営に関する卓越した指南書
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時代の変化に伴って企業も変わっていなかければ生存することは難しい。生物は概ね細胞の活動により寿命が定められる。一方で法人は外部環境への適応力が寿命を決める。
イノベーション・ストリーム:
組織能力(既存・新規)、市場(既存・新規)というマトリックスで狙いを定めること。
(過去の成功体験にしがみついて)探索に取り組まない企業は変化に直面したときに破綻する可能性が高い。短期的なバイアスによって、「老舗企業は常に深化に専念し、既に知っていることの活用にかけては腕をあげていくそれで、短期的には優秀になるが、徐々に力を失い、つぶれてしまう」。
基本的に深化とはこれまで以上にうまく事業を行うことだ。成功している企業は時間と共に顧客理解を深め、より効率的に顧客ニーズを満たせるようになる。それを反映させて、戦略を進化させ、組織能力と公式な構造と文化との間の調整を組織全体で行う。組織的な調整がぴったりと合っているほど、その企業が成功する確率は高まる。しかし、競争がますます激化し、利益率が低下する中で、企業は新しい顧客セグメントに対応するか、高利益率を狙える不連続的イノベーションもしくはアーキテクチュアル・イノベーションを通じて隣接市場へ移動しようとすることが多い。
シアーズの例で分かる通りリーダーが陥りやすい、罠はサクセス・トラップとして知られている。安定した環境では戦略、構造、人、文化の整合性が取れていることが事業の成功につながる。
探索と深化とでは、求められる組織的な調整や組織能力が根本的に異なる。
知の探索:自身・自社の既存の認知の範囲を超えて、遠くに認知を拡げていこうとする行為。
知の深化:自身・自社の持つ一定分野の知を継続して深堀りし、磨きこんでいく行為。
両利きの経営が行えている企業ほど、イノベーションが起き、パフォーマンスが高くなる傾向は多くの経営学の実証研究で示されている。
リーダーに求められる3つの行動:
1.新しい探索事業が新規の競合に対して競争優位に立てるような、既存組織の資産や組織能力を突き詰める。
2.深化事業から生じる惰性が新しいスタートアップの勢いをそがないように、経営陣が支援し、監督する。例えば、必要な資源を確保できるようにする。新規事業のリーダーはマイルストンの達成について、説明責任を負う。非生産的な摩擦を極力抑えて、新旧の事業間が交わる部分を管理する。
3.新しいベンチャーを正式に切り離し、成熟事業からの邪魔や支援なしに、成功に向けて必要な人材、構造、文化を調整する。
リーダーシップの5原則:
1.心に訴えかける戦略的抱負を示して、幹部チームを巻き込む
2.どこの探索と深化との緊張関係を持たせるのかを明確に選定する。
3.幹部チーム間の対立に向き合い、葛藤から学び、事業間のバランスを図る。
4.一貫して矛盾するリーダーシップ行動を実践する。
5.探索事業や深化事業についての議論や意思決定の実践に時間を割く。
冨山さんとWBSの入山教授の解説のおかげで内容も理解しやすかった。
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■両利きの経営とは
以下2点をリーダーシップを持って推進していくこと。
・知の探索
自身や自社の既存の認知の範囲を超えて、遠くに認知を広げていこうとする行為
・知の深化
自身や自社の持つ一定分野の知を継続して深掘りし、磨き込んでいく行為
既存事業の影響や支配を受けずに、一方で既存事業の持つ資産(含む情報、ノウハウ、人材など)にアクセス可能な状況で長期的に次のビジネスに取り組むこと。
成熟事業の貴重な資源を新規事業に適用できるところが両利きの経営の付加価値となる。
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企業が所謂「イノベーションのジレンマ」に陥ることなく、持続的に成功するためには、既存事業の「深化」と新規事業の「探索」を両立する必要があり、その実践に向けた経営手法やリーダーシップの要諦を明らかにした一冊。
既存事業が抵抗勢力となって「探索」を阻むのを避けるため、リーダーは「探索」と「深化」の両方を重視する戦略的意図を明確に示すとともに、双方に共通するビジョンや価値観を創造する一方、組織的には両者を分離しつつ必要な資源は融通できるような構造によって、探索活動を保護する必要があり、そのためには、矛盾や対立を受け入れながら対話を通じて事業間のバランスを保つとともに、時には理解を示さない幹部チームを刷新するといった荒療治も厭わない「一貫して矛盾する」リーダーシップ行動を実践する覚悟が求められる。
「両利きの経営」自体はそれほど目新しい概念ではないが、日本の富士フィルムを含め、豊富な事例をもとに構築された理論やフレームワークを通じて、なぜ両利きが必要なのか、その実行が難しいのは何故か、その困難を乗り越えるためにどうすればいいのかが明確に示されており、実践的な経営書として極めて優れた一冊となっている。
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不確実性の高い探索、すなわち、新たなビジネス開発を行いながらも、深化、すなわち現事業の改善によって安定した収益を確保する。両者のバランスを取って二兎を追いながら両者を高いレベルで行うことを、「両利きの経営」と本書では呼んでいる。
一般的に、企業には、事業が成熟するに伴いどんどん深化に偏っていく傾向がある。これをサクセストラップという。成功企業は、成功の要因を深掘りすることにリソースを割き過ぎて、市場や技術の変化に適応しきれないことがある、というか、そういう企業の方が多数派であると、本書は主張している。
「両利きの経営」を成功させるためには、リーダーの役割が決定的。リーダーは、既存の資産や組織能力を深化し、今日の収益源である成熟事業で競争しながら、新規事業を探索して未来の市場に備えなければならない。
「両利きの経営」に成功した経営者として、本書では、Amazonのジェフ・ベゾスが紹介されている。
成功、あるいは失敗した企業の事例が豊富に紹介されている。これが、物語として面白い。Amazon、シアーズ、富士フイルム、コダック、ネットフリックス、SAP、ファイアストン、IBMなど。
特にIBMの例は、「両利き」を会社の中に「仕組み」として組み込んだ成功例として紹介されている。
「両利きの経営」を実践するためのポイントを、本書では4つ挙げている。戦略的意図、経営陣の関与・支援、組織構造、共通のアイデンティティである。それらを実際に会社の中に根付かせるには、リーダーの役割が大きいと、本書は主張している。
うまく要約できているか心配であるが、本書のおおよその内容はこういったところである。
著者は、2人の学者であり、本書では示されていないが、この主張には、エビデンスがあるはずである。
既存ビジネスを深化・進化させ、より良いビジネスにしていくこと。どんなビジネスにも寿命があるはずなので、既存ビジネスを強くする活動ばかりではなく、将来に備えて、新規のビジネスを創出していくことの両方が必要、というような書き方をすれば、当たり前のことを言っているだけのように思える。
本書のポイントは、豊富な事例の紹介と、その分析から得られた、「両利きの経営」を成立させるために必要な要件の明示である。事例の中では、特にIBMのものが面白く、また、説得力を持っている。
本書は、一つのビジネスをどのようにうまく運営していくか、という話ではなく、一つの企業全体をどのように繁栄させ続けるか、ということが主題である。従って、会社の経営者、あるいは、会社全体の戦略に大きな影響力を持つ人が読者である。そういう意味で、限られた読者向けの本であると思うのだが、結構、話題になっている本だ。そのあたりは、少し不思議。
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産業構造の変革に直面している、世界中ほぼすべての会社のための本。どうすれば効率性の向上によって既存の資産と組織能力を「深化・有効活用(exploitation)」しながら、十分に「探索・開拓(exploration)」するための準備ができるか、というテーマを掲げています。クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」を土台にしつつ、違うのはクリステンセンが「探索」組織は「深化」組織と距離を置き、独立で判断スピードを上げていく組織論がイノベーション実現の要諦であると主張しているのに対し、「探索」と「深化」の両立を高い次元でバランスとるマネージメント=「両利きの経営(ambidexterity)」というリーダーシップが必要だとしているところでしょう。冒頭のアマゾンでジェフ・ベソスが繰り返す「探索」と「深化」の繰り返しが圧倒的で、つまりベソスが持っているコンピテンシーを普通の経営者が持てるか?という問いかけに感じてしまいました。まさに「社長はつらいよ!」。IBMとシスコとの違い、コダックと富士フィルムは紙一重にもおもえます。
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クリステンセンの「イノベーション・ジレンマ」で理解したが、実行力の構築が困難だ、と感じていた人にとっての良書です。
現業強化の深化、新事業の探索の両立に関する考え方のフレームワークの例があり参考になるはずです。
しかしながら、もう1歩踏み込んだ事例解説にならないと、既存事業が強い組織での実行力を作るにはイメージがしづらいと思います。