紙の本
不思議の作家・川上弘美氏の不思議な日常が垣間見られるエッセイ集です!
2020/08/23 12:16
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『神様』(パスカル短篇文学新人賞)、『蛇を踏む』(芥川賞)、『神様』(紫式部文学賞)、『溺レる』(伊藤整文学賞)、『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)など数々の傑作を発表しておられる川上弘美氏のエッセイ集です。うつろいゆく季節の匂いがよびさます懐かしい情景、日々の暮らしで感じたよしなしごとあれこれ考えます。うつつと幻のあわいの世界をゆるやかに紡ぎ出す、不思議の作家・川上弘美氏の不思議の日常が垣間見られる一冊です。じんわりとおかしみ漂う第一エッセイ集です。
紙の本
川上弘美を病室で読んだ日
2002/11/24 22:32
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
十一月も終わりに近づくと、背中をとんとんと押されているように慌ただしくなる。街にクリスマスツリーが何本もにょきにょきと立ち並び、山下達郎の切ないメロディが流れる。今年もあとわずか。今年もきつかったなあと思ったり、何も変わらないやとため息をついたり。そして、今年の一〇大ニュースの投票が始まったりする…。
今年。年明け早々、生まれて初めての入院をした。大腸にポリープが、ふたつ出来ていた。何人かの人にそのことを云うと、よくできるんだよと澄ました顔で反応されるのがこそばゆい感じだった。なにしろこちらは、生まれて初めての入院なのだ。真剣に入院の支度をした。ちょうど明日から修学旅行に行く小学生みたいな気分である。「うたのしおり」の代わりに、川上弘美の本を二冊、パジャマの下に入れた。「神様」と「おめでとう」。その時は気にしなかったが、今からすると入院するのにふさわしい書名であった。
病室に一〇日いた。昼はそうでもないが、夜になるとじわじわと寂寥感が広がってきた。これが入院というものかと、すこし悲しくもあった。そんな僕に川上弘美の文章はほかほかした日溜りのようであった。四角ではなく丸いような。フロージングではなく畳のような。夜ではなく昼、そう夕暮れが近い冬の午後三時四〇分のような。そこだけが暖かい幸福な時間だった。同室のカーテンがひかれたもう一人のベッドから、携帯電話でメールしている淋しい音がカチカチとした。
この本は九九年に刊行された川上弘美の、第一エッセイ集の文庫本である。彼女の文章を読むと、あの病室の淋しい音を思い出す。あの音は自分の存在を世界に伝えようとしていたにちがいない。川上弘美も、そう感じる瞬間(とき)があったはずだ。「時が過ぎて、わたしの文章の癖みたいなものも多少変わって、今読むと気恥ずかしいようなところもあるのですが、あの頃の空気がなつかしくもあります」(文庫判のためのあとがき)。
生まれて初めての入院の間に、四十何回めかの誕生日を迎えた。今年もあと一ヶ月となったが、あの病室の空気がなつかしくもあります。
紙の本
「ふっ」と笑いながら読みました。
2021/02/19 21:28
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投稿者:satonoaki - この投稿者のレビュー一覧を見る
どこまでが事実なのかわからないようなエッセイです。
いや、エッセイ自体私も少々作り物の粉を振りかけて書くこともあるので、川上さんが引き出しから粉を出してきてもおかしくありません。
笑わせるおいしい味の文章でした。
「パソコン通信」だなんて、懐かしいですね。
ポケベルも懐かしいです。
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デビューするまでの苦労、子ども時代外国で過ごしたこと、など。意外な感じ。どちらも他の人が書けばただの苦労話って感じだけど、川上弘美はするっと通り抜けて行く感じでなんとも見習いたいと思ってしまう。あと、パソコン通信も意外だなあ。理科系の大学を出ていることをほんとに忘させてしまう人なのだ。それよりなにより、子どもがいる生活とは思えないわぁ。
世間に流されずに真剣にだらだらしている姿を見て、「私ももっとだらしなくしても許されるかも」と元気が出ました。
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恋を語らずとも、女を語らずとも、男を語らずとも、友を語らずとも、生活を語らずとも、仕事を語らずとも、こんなにも語るべきコトは残っているのだな。
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「あるようなないような」なんてあいまいなことをいうと、「いったいどっちなんだよ」と分かりきった突っ込みを受けることがあります。物事をできるだけ単純に理解したい欲求もありますが、それはよく失敗します。僕の脳みその限界なのか、頭が混乱して、ボーとしてしまうだけです。頭の中は「うむむむ・・・エ・ビ・か?」ぐらいのもんで、難しい顔して考えてる振りしてます。
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言っちゃえばつまらなくて読みきれなかった駄作エッセイだとわたしは思ってる。だけど、2作目の「ゆっくりさよならをとなえる」と合わせて読むと、あら不思議。わたしにはこの本がとっても意味のある駄作に思えたのだ。
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川上弘美のふわりとした、日本酒をほんのり含んで酔っぱらってしまったような文章がいい。小説も良いけども、エッセイにもそのふわりとした感じがあって、なおかつ健やかで、日々をこうして暮らしていけたら幸せだろうと思わされる。
タイトルにやられました。
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この人の、あわあわとした、でも、うっかりくつろぎすぎていると、まったく予期しないところからうわぁ、という気にさせられて油断のならない文章が好き。漱石の「文鳥」を読みたくなってしまった。
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やっぱりこのひとの文章だいすきです! ただあとがきにもあるとおり、今と若干ことばの使い方がちがう。 別に嫌じゃないのだけれど、「このひとがこういう言い回しするなんてめずらしい」、と思ったりする。
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川上弘美さんのエッセイ集。
この人のゆるゆるとしているけどゆるぎない感じ。
なにげないけど、にじみ出ているもの。
そんな『感じ』にすごくシンパシーを感じます。
中にドラえもんとのび太に関するエッセイがあって、
自分が若くて少し傲慢だったころは
のび太の依存心が好きではなかった。
でも大人になると、できることできないこともわかってくる。
ドラえもんと名前を呼んで、道具でひと時の夢を見て癒されて、さあ頑張るかとまた現実に帰ってくる。
そんな気持ちがわかるようになったし、だれか疲れた時にドラえもんのようにひと時のやすらぎを
与えることができる。
そんな人になりたいなっていう気持ち。
なんだかわかる。
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たまに無性に読みたくなる
通算十回目くらい?
おかげで、何か困った目にあったときには「驚愕したコアラ」というフレーズが出て来てしまう
文体にはわりと古めかしいところもあるし、単語にしても今はあまり使われないものも多々でてくるのに、ひらかな表現が多いせいか、ぞんがいにするりと読めてしまう
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川上弘美さんのエッセイは「ゆっくりさよならをとなえる」を読みましたが、これはそれより少し前に出たエッセイ集です。
川上弘美さんのエッセイや書評は読みやすく視点が的を得ていて、唸らされます。
「かばん症」
川上弘美さんは、心配性なので、かばんにたくさんの荷物を入れて歩くということです。時々手ぶらで歩きたくなり、実行することもあるそうです。
私も荷物が増えてしまうタイプです。
車なら良いのですが、交通機関を利用したり、背中に背負う場合は大変ですから、工夫して軽量化を図っています。
でも失敗もあります。
よけいなものを抱えたり、必要なものがなかったりです。
「海のもの」
川上弘美さんは、海水浴はあまりしないけれど、海岸を歩くのは好きだということです。
歩いていて見付けた海草を持ち帰って、名前を調べたりしたということですが、さすがは理科系の人です。
小説を書くときには、名付けられていない海草を拾うような気持ちで書きたいと仰っています。
名前が付いていることは、つまらないことだと川上弘美さんは言います。
「図書館と屈託」
川上弘美さんは図書館が好きです。
色々な図書館の想い出を語ります。
大学の時には授業に出ずに図書館で小説を読んでいたそうです。
図書館で読書することで気持ちが紛れるというのはよく分かります。
私にも高校時代の図書館、大学の図書館、勤務先の図書館、住んでいる地域の図書館の想い出はあります。
懐かしい記憶です。
「武蔵野のこと」
川上弘美さんが生まれ育ったのは武蔵野と呼ばれる地域です。
40年前は草深いところだったということです。
国木田独歩の「武蔵野」は有名ですが、今は都市化していると聞きます。
太宰治が心中した玉川で子どもの頃は遊んでいたそうです。
「私の一冊 夏目漱石『文鳥』」
川上弘美さんは漱石なら『夢十夜』かと思っていたそうですが、『文鳥』も良かったということです。
漱石の持つ滋味がこの作品に凝縮されていると言っています。
『文鳥』は教科書にもよく取りあげられています。
しみじみした味わいのある作品だと私も思います。
「恋文」「近代俳句」
川上弘美さんは俳句をなさっています。
川上弘美さんは言葉にならない感情を拾い上げている作家だと角田光代さんが評していましたが、俳句をなさっていることが修行になっているのではと思いました。
川上弘美さんの俳句を読んでみたいと思いました。
「エレクトロニックカフェに行った」
「インターネットにアクセスできるパソコンが置いてあって飲食もできる場所」ということから、これはいまのインターネットカフェのことでしょう。
初期のネットカフェの様子が分かります。
インターネットも普及し始めた頃の話です。
「あるようなないような」
これは1から9まであります。
色々なことをしているが、どれが1番で2番でということはなく、どれも面白いということで日常の雑記を面白く描いています。
川上弘美さんは早寝早起きです。
当時はパソコン通信と呼ばれていたインターネットのアクセスは深夜が多いというのは今も昔も変わらないですね。
深夜の賑わいを「一夜にして成って一夜にして滅んだ帝国の興亡」のようだと評していたのには吹き出しました。
11月になると散歩に行きたくなるというのも面白かったです。
公園や美術館の散歩の想い出が書かれています。
冬に向かう季節の11月は散歩に適していると私も思います。
晩秋は歩いていて気持ちいいです。
感じる力も最も高まってくるような気がします。
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存命中の女性作家で唯一「読みたい」と思える川上弘美のエッセィ。
内容ももちろん全部いいんだけど(作中に出てくるコンピュータの古さにびっくり!)、川上さんが母親と話していて、「相手の悪口は無視しなさい」的な(言葉は全然違うけど、そういう内容)ところがすごく印象に残りました。
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何度ふきだしたことか。
電車なので控えめにしつつ、もういいやと。
印象に残ってるのは「きー」と鳩の話し。
「きー」は、最近の私は人に瞬間的に切り返せないので気持ちがわかる。
鳩は、ででぽぽの表現が好き。
うちのベランダにも鳩がやって来て時々糞害がある。
何とかならないかなぁ。