境界線

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このコロナ禍にあって、遡ってまた東日本大震災に関する小説を読むことになるとは……いや、よかったです。読めたことも、またそのことに思いを馳せられたことも。

あの震災の衝撃は、想像力の逞しくない私にとっても相当なものだったので、目の当たりにした方々の心情は想像を絶するものがあります。

どんな時であっても、どんな境遇であっても、自分を見失わず、自分らしく、しなやかに生きたいと……願えることすら幸せなのだろうなと思う今日なのでした。

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　東日本大震災で行方不明になっていた妻の奈津美が遺体で発見された。宮城県警捜査一課の笘篠は現場に向かうが、遺体は全くの別人で…

　タイトルの通り、境界線がキーでした。
　震災でその境界線を超えてしまった者、踏みとどまる者。
　役所の個人データがそんな杜撰な管理で下請け業社に引き取られたかもしれないと思うと、フィクションとは言え、やりきれない部分もありました。

　笘篠の典型的な刑事の家庭の最後の会話も又、遺憾でした。
　認めたくない現実に打ちひしがれた悲痛の叫びが、本当に切ないラストでした。

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これは俺の事件だ。－再びの、宮城県警、笘篠と蓮田。『護られなかった者たちへ』を再読し『境界線』へ。－二人を分け隔てた境界線はどこにあったのか。－こちらも再びの登場、五代。物語の第四章【孤高と群棲】が事件の背景を、この物語の始まりと終わりをくっきりと浮かび上がらせた。

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「護られなかった者たちへ」の続編。
面白かったのですが、護られなかった者たちへと比較するとストーリーが薄く感じてしまいました。

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「護られなかった者たちへ」の続編。
東日本大震災から7年後の2018年。気仙沼の海岸で、笘篠の妻と思われる遺体が発見される。
遺体の確認に向かう笘篠だったが、発見された遺体は全くの別人だった。気仙沼署と上司の計らいにより、捜査を続ける笘篠だったが、また笘篠の妻と同様に震災で行方不明の被災者の名を語る人間が何者かに殺害される。
2つの事件から、震災の行方不明者の戸籍を売買している人間がいることに行きつく笘篠たち。
戸籍売買の裏には、震災をきっかけに人生が変わった一人の人物の存在があった…
他の方もレビューに書いているように、前作ほどの衝撃はない。犯人に対しても、震災を「境界線」に戸籍売買に手を染めたと言う動機には、同情しようがない。
今年で東日本大震災から10年。
ほとんど取材をしないと言う作者だが、この震災体験はどのような気持ちで書いたのだろうか？
登場する地名、小学校名は実在するもの。
実際に被災した人が読んだら、どんな気持ちになるだろうか？
特に門脇小学校については、在校していた児童は通常時の避難訓練のおかげで、全員が避難し、津波での被害者はいなかったことで知られる。
確かに下校した児童が何人か亡くなっているが、誤解を招くような書き方をするならば、実名は出してはいけないと思う。
旧門脇小学校も、南浜地区も震災直後から毎年復興の様子を見て来ただけに、被災者の気持ちを考えると、決していい気持ちはしない。

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「護られなかった者たちへ」に登場した笘篠刑事の続編。
彼には、妻と息子がいたが、東日本大震災による津波で行方不明になっている。ある日、女性の遺体が発見され、免許証から笘篠の妻だと判明する。ところが、実際に遺体の顔を見ると、別人の顔だった。何故？
宮城県を舞台に大震災によって色んなものを失った人達が、個人情報や「願い」による闇を取り扱いながら、事件解決へと奔走します。

まもなく、東日本大震災から10年。改めて震災が、あまりにも大きく影響を及ぼしていて、事の重大さ・重圧さを感じました。その中で隙をついた個人情報や人々の願いを巧みに利用した犯罪。よくそこまで発想するなぁと思うくらい、盲点をついていて、逆に凄さを感じてしまいました。

この作品では、様々な「境界線」が多く登場します。「生」と「死」、「売る」と「買う」といった相反する2つのものが存在することで、その境界線が生まれます。それが引かれた瞬間、運命が左右しますが、それに翻弄される登場人物の人生が、何とも悲しみや辛さ、苦みなど一言では言い表せないことだらけでした。

被害者、加害者どちらもそれぞれの人生があります。この作品を読んでいると、単純に「善」と「悪」の区別がつきにくく、複雑な気持ちにさせてくれました。

色んな「闇」の部分が垣間見れましたが、どんでん返しはないものの、心にズシンと響いたミステリーでした。

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失ったものでも取り戻せるものもある。五代に何かを取り戻させた鵠沼。五代もまた鵠沼に取り戻させることができるのか。笘篠の決断は彼の何かを進めるかもしれない。それでも受け入れられない人もいる。
あれから10年。境界線のこちら側にいる者としてできることは、せめて忘れないということだけなのかもしれない。

無理などんでん返しのこだわりなしでよかった。

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「護られなかった者たちへ」続編。面白い設定だと思ったが、１作目と比較すると淡泊な印象。追うものと追われるものの両面を描いているのだが、二兎を追う者は一兎をも得ず、の感。

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宮城県警シリーズ？第2弾

行方不明者の名をかたる被害者という着想は良いのですが、刑事側の物語はともかく犯人側の物語に感動が薄かったです。
「護られなかった者たちへ」の続編なので、登場人物が重なるのですが、本編は五代がクローズアップされたことが良かったです。
笘篠も妻子に対して一区切りついたので、東日本大震災10年目の作品としては成功はしていると思います。