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ひとり膳 料理人季蔵捕物控
著者 和田はつ子
江戸に梅が咲き始めた如月、一膳屋“塩梅屋”では、梅見弁当の準備がはじまった。先代長次郎が生前、書き残していた「能代春慶、三段重提げ弁当、梅見鰤、ひとり膳」という言葉が気に...
ひとり膳 料理人季蔵捕物控
ひとり膳 (ハルキ文庫 時代小説文庫 料理人季蔵捕物控)
商品説明
江戸に梅が咲き始めた如月、一膳屋“塩梅屋”では、梅見弁当の準備がはじまった。先代長次郎が生前、書き残していた「能代春慶、三段重提げ弁当、梅見鰤、ひとり膳」という言葉が気になる主の季蔵……。そんなある日、おき玖は父・長次郎を偲ぶ梅見に出かけたが、大雨が降りはじめ、梅の木に雷が落ちたという知らせが塩梅屋に入った。おき玖を案じた季蔵が急いで迎えに行くと、屋敷内で“夜光の珠”が盗まれたと大騒ぎになっていた――。「梅見鰤」「饅頭卵」「吹立菜」「ひとり膳」の全四篇を収録。料理に支えられ生きてきた者たちの、人を想う切なさとあたたかさに溢れた大人気シリーズ第十一弾!
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紙の本
影の者らしからぬ異例の結末。
2016/11/30 10:19
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
第一話「梅見鰤」では事件の影すらなく、料理の具体的な話が中心であるが、話の中で何故か「鰤尽くし」の話が謎かけ的に再三に渡って出てくる。あれまと思って第二話「饅頭卵」に進むと突然、10年前の悪事へと繋がる事件に遭遇することになる。初めは些細な“夜光の珠(真珠らしい)”紛失事件なのだが、どうも不自然な展開をするうちに関係者が毒殺(與助)・刺殺と相次いで殺されてしまい、一瞬にして大事件となってしまう。毒殺された與助は、10年前に奉公していた大店の女店主から一人娘の世話は見るとの約束で、大店の放蕩息子の殺人の罪を被って八丈島に島送りとなったのであるが、その一人娘は謎の他殺体となってしまう。與助は、その真相を突き止めようとしていた矢先に毒殺されてしまったのである。ひょんなことから與助の今際の際に立ち会った季蔵とおき玖は犯人捜しを決意しての第三話「吹立菜」突入である。この後、どうも料理「鰤尽くし」との因縁話絡みの大事件へと発展しそうな気配である。第三話は予想通り、料理「鰤尽くし」との因縁話へと繋がる短い一話で、10年前に先代の塩梅屋店主・長次郎と交流のあった“儀平次”(昔は南町奉行所所属の隠密廻りだったが故あって料理屋を営んでいる)が登場し、料理「鰤尽くし」との因縁話や今回の大事件への手掛かりとなったところで第四話「ひとり膳」へと繋がる。10年前の真相を探るうちに、儀平次も殺され、更には阿片であくどく遊興費を稼いでいた放蕩息子までも殺されるにおよびようやく今回の真犯人が見えてくる。それは、店の将来を心配し、放蕩息子を分家して娘に婿養子を取らせて大店を守り、更に放蕩息子にもそれなりの生活を保証することでそれ以上の悪に染まらないようにと配慮して、その世話人に頼んだ同じ薬種問屋の店主であった。真相を知った季蔵の元に烏谷が暗殺命令をとやってくるが、今回の結末は少々異なる。余りの非道さに怒り心頭に発した季蔵は、“白洲”に引き出したうえでの処罰を望み、自らが囮となって真犯人に自供させてお縄にするという結末である。ムーーー、これまでの悪人でもっと悪辣な奴が幾らでもいたのに、今回だけ何故“お白洲”なのか・・・・・・。まあ、偶には変化をつけてみたかったのであろうが、人気シリーズものとしては一つの形を守った方が良さそうだし、今回の事件では敢えて“お白洲”にという必要が無かったような気もするのだが・・・・・・。