紙の本
圧巻・・・
2022/01/20 10:20
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
近松門左衛門の「国姓爺合戦」は、歴史だったか国文学史だったかで習い、その名称は、しかと記憶されていた。でも、それ以上、何も知らなかった。
川越宗一さんの直木賞受賞後第1作である本作は、その「国姓爺合戦」のモデルとして知られる鄭成功の人生に、創作を加え、その母の時代から描いた壮大な物語だ。
かなり史実に忠実に描いているらしいが、一人一人の人間の内面も描かれているのでそこは創作だろう。しかしそのおかげで、スリリングなエンタメとして楽しめる。
海賊ものや歴史ものには余り関心がなかったが、ついつい引き込まれてしまった。
「熱源」に続き、歴史に生きた人物に魂を吹き込む、川越さんの熱量はすごい。圧巻。
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冒頭の海の描写からワクワクして一気に読み終えた。母はとことんカッコいいし、父はいきなりとんでもないことになっちゃうし、史実を基礎にしながらも随所で著者の想像力が炸裂している。そして、その創造部分が何より活き活きとしていて爽快!
これを読んでから史実に触れる方がワクワクするだろう。ドラマ性に溢れたエンターテイメント活劇。面白い。
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【東アジアの海を舞台に描く、直木賞受賞第一作】明の海寇を父に、日本人を母に生まれた福松は、台頭する清に抗い、海に居場所を求めて闘い続ける。鄭成功の半生を新たな形で描く。
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国性爺合戦をモチーフとしていて、福松(のちの鄭成功)が幼少期に中国にわたり将軍になり台湾統治に至る、という史実には沿っているが、この物語の主題はそれではないような印象を受ける。
この物語は中国が明〜清へ変遷しゆく時代に、中国、日本(平戸)、台湾の地で生きた人の犠牲にした物、手に入れた物、失ったもの、手に入れたかった物を通して浮かびあがるそれぞれの信念の物語だ。
自分の信念故に突き進み周囲を巻き込む人々は英雄なのかエゴなのか、例え理想的と思える考えがあったとしても、人間には感情があり思い通りにはいかない。
自由を求めて海に出た人々の、文字通り波瀾万丈な人生、あらゆる選択をしてきたけれど、それぞれやはり無念さが残る。果たしてどうすれば良かったのか?
と感じながら読んでいたがそのモヤモヤを終盤6章〜終章が全てさらってくれる。
個人的には施大宣(シータイソワン)の語りの部分がとりわけ良かった。
私も「人は誇りがないと生きられないものだ」と言った蛟(カウ)という人物に魅かれていたからだ。
架空のキャラクターである蛟(カウ)の登場と女海賊で鄭家の頭となる松を母に持つ福松という架空の設定が、多くの実在の人物の内面を際立たせており、物語に引き込まれる。
三国志の人形劇を観て、ごっこ遊びをしていた幼馴染3人が将軍になり国姓爺と呼ばれるまでになる。そしてのちに国性爺合戦という演劇のモチーフになる人生まるごと夢か現か。
姓から性へと字が変化していることに天命は移ろいゆく定めだとの儚さも感じる。
唯一ひっかかったところは、登場する女性全員がさっぱりしすぎていて強い人である(それは生きる為に常に選び続けなければいけない人生だったからなのだろうが)という事だ。狡さや可愛らしがもう少し感じられたらこの女性達に感情移入できた思う。
しかし壮大なストーリーを楽しんだので、次回作も楽しみにしたい。
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国姓翁合戦は昔耳にしたことがある。本書の最終章にある浄瑠璃の世界だ。母親の松から生まれた福松の一生だ。波瀾万丈の一生を描いた感動の作品だ。徳川幕府が出来て間もない時代壮大な一生を送った生きざまは凄まじいがこれもまた自分が選んだ道だ。良い作品に出会えて感謝❗️
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天は、人の中より有徳の人を選び、天下を統べよと命ずる。これすなわち天命。
天命は血脈によって継がれるが、もし徳を喪えば、天は別の人に命を下す。
天命の革まるを革命という。
世に名を成す者は決断の連続だ。
正しかろうが、間違っていようが、その決断は史実に残る。
幼名を福松、平戸で生まれ育った幼子は、ゆくゆくは倭寇の頭領、鄭成功として歴史に名を刻む。
明の滅亡に際し、清への抵抗勢力として戦ったのち、台湾を東インド会社から開放した海賊の親玉。
家を守るため、実母を放逐し、重臣に裏切られ、友を失い、元々の目的を果たせず葛藤するも、決断を重ねていく。
天命がなければ、ならば天を海が飲み込むまで。
天命に抗い続けてもなお、鄭成功が目指した国とは。
媽祖と呼ばれた海賊の女頭領がいた。
子を成した夫を殺し、福松と名付けられた子は平戸藩に出仕する田川家に預けられて育つ。
海ならば、どこへでも行ける。
まだ少年の福松を連れに来た母に従い、福松は大陸へと渡る。
海賊、鄭家の頭領、鄭芝龍の息子、自らを鄭森と改めた福松は、鄭家を守るためには政治の中枢に入り込まなければと考える。
しかし、明の世は終焉に近づき、代わりに清の革命が起きようとしていた。
鄭家を守るため、居場所がない人の拠り所となるために戦いの日々に身を投じる。
いくつもの決断の果てに、母と決別し、仲間に裏切られ、友を失うことになっても。
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国性爺合戦のモデルとなった、鄭成功こと福松の一生を描く。海神の異名を持った母の元に生まれた福松は、母が頭領を務める海賊の一員として、幼い頃に、当時の中国である明に渡る。海賊の一家を守るため、そして一家に貢献するために、官僚になる道を選んだ福松だが、国家としての明が危うくなり、一家を活かすための道を模索する。一家のため、自分の目標のために、すべきことを悟り、自ら選び、実行に移していく。
自分で見定め、そして自分で選んだ道だからこそ、最後まで航り切る。結果はどうあれ、物語として面白かった。実の母を裏切り、育ての母や親友を犠牲にしてでも突き進んだその志が美しくもあり、悲しい。
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11月-12。3.0点。
鄭成功の物語。産まれてから、明を復興させる戦い、晩年までを描く。
スピード感あって読めるが、いかんせん馴染みのない人物だったので、頭への入りが弱めだった。
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「天地に燦たり」、「熱源」と魂を揺さぶられた川越宗一氏の新作とあって、期待して読み始めた。前2作も被差別民や生まれつきどうしようもないものを背負わされた人々が、諸々翻弄されながらも懸命に生きる姿が印象的な作品だけど、今回も基本設定は似ている。舞台は日本から台湾、中国へと移り、江戸時代初期、中国では明の末期頃というところ。読み始める。前半はいい。いろいろ絡み合って話しがコロコロ展開していく。が、後半は必然性が感じられない主人公の空回りがただ続くのみで、そこにドラマが感じられないのが残念。前2作で感じた読後のスッキリ感のない、尻すぼみな作品でした。
しかし、海賊稼業の戦闘シーンなどを盛り込んで作品の幅を広げようと試している感もあり、次作にまた期待したいと思います。
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中国で明から清へと王朝が変わる中、海賊の松(まつ)の子供である福松(ふくまつ)が、中国や台湾を舞台にして成り上がろうとする物語。海神とは福松の母親のこと。その子である福松が、人々と出会い、清と戦をしながら福松の志(民に居場所をつくること)を一貫して実現しようとする。福松が少年時代に出会った甘輝(カンフイ)と施郎(シーロン)の活躍なども含めて、この時代の三国志のようである。中国の人名が読みにくかったり、福松の立場が変わると名前が変わることなど、読むときに混乱しないように注意する必要もあるが、全体的にスピード感もあり、するすると読める。
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鄭成功という名は知っていたけれど
実際どういう人物でどういった人生を
送ったのかは知らなかった。
福松の母(松)が海賊という設定は
読んでいて興奮するもの。
最後まで夢を諦めない想いに胸を打たれる。
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鄭成功が平戸で知り合った中国系の海賊と日本人の娘の子供という出自で
台湾にたどり着くのは彼の人生の中では最後の一時であり
それまではほぼ鄭一族として海賊の首領としての活躍というが大きい
彼の時代に語られていた台湾はフォルモサといわれ
ポルトガル語系で 美しい島 美麗島とも通じる
それはヨーロッパの人々や鄭成功達中国や東南アジアから追われた人々が
辿り着いた島は美しいはずだという希望が込めれれていた気がしてならない
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直木賞受賞作『熱源』の著者の作品。
前作が良かっただけに、そのギャップで残念さがハンパない。かなり、まとまりのない駄作じゃなかろうか。
近松浄瑠璃「国性爺合戦」や歌舞伎演目で有名な国姓爺(鄭成功)を主人公に、膨張、暴走極まりない中国に物申すという点では、時宜を得た作品になるのではと期待もしただけに残念。
人間関係も、大きく変更し、フィクションの部分を大いに含まらせているのは面白いが(そもそも、どこまでが史実で、どこがフィクションなのかも良く知らないけど)、その設定も活かせてない。
予備知識も乏しいまま読み始めたので、序盤は「松」の話なのかと思った。著者のインタビューなどをググっていると
「最初は鄭成功ではなく、母親の田川マツ(作中では松)に興味を持ちました。中国人海賊と国際結婚し、後の英雄の母である彼女の数奇な人生に惹かれたんです」
とある。女海賊の体で登場した松、『村上海賊の娘』(和田竜著)の二番煎じにもなりかねなかったが、孤高の女頭領のキャラは、ジブリ映画のクシャナ殿下、エボシ御膳を彷彿させ悪くなかった(言葉少なく策謀も働かせない愚直なところは、SW ep.7のキャプテン・ファズマ的でもあった)。その興味のままに「松」目線の物語としても良かったのではなかろうか?
時代の求めに応じて、女性の自我、地位向上なども盛り込もうとしたのだろうか。福松の妻董友のキャラもそこそこ際立っていたが、「全て、あたしが選んだ道だ」と言わしめる終盤の見せ場も、それまでのグダグダの右肩下がりの展開の中では、むりやり取ってつけたかのようで、イマイチ高揚感を得られなかった。
中国人と日本人のハーフが、台湾や香港まわりの海域で活躍する。非常に時宜を得た物語になる可能性があると思うだけに、力作『熱源』をものした著者なだけに、なんとも盛り上がりに欠けた、まとまりのない物語となっていて、残念でしかたがなかった。
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主人公「陸では生きられない者の居場所を作る」
???「おまえの作る天下からも、弾かれる者はいるぞ?」
「国性爺合戦」のモデルとなった英雄・鄭成功を描く……という触れ込みで拝読しましたけど。
歴史小説というのはアレか?
キャラの気持ちを3文以上掘り下げたら作者は血を吐いて死ぬ呪いでもかかってんのか?
ってくらい、主人公以外の出てきたキャラはその場その場の気持ちを描写されるだけで『おしまい!』の尻切れトンボが連続でした。
えっ妻たちのホームドラマ無いの?!
主人公とのなれそめ的エピソード描写は!?
レオ・コープについて要所要所で掘り下げることがあるんじゃねえんすか!?
えええ!?
これがラノベとかだったら、
『陸じゃ生きてけない女傑の息子に生まれましたが、中国皇帝を目指すことになりました』
ってタイトルで、まず松さんの描き方から変わると思います。ていうかそっちの方が読みたい。
下手な演者の布袋劇(プータイシー)かって感じで。
板切れに目鼻描いたよりはましでも、『血肉の通ったキャラクター』というより『演者のあやつる木偶』感半端ない。
序盤のヒロイン、松さんの描き方とか不満垂れ始めるときりがない。
「台詞が少ない寡黙なキャラクター」であることは分かるけど、描写が上っ面すぎて、何を好み何を憎むかすら曖昧なのは困る。
歴史小説とは、歴史小説を読みなれた読者以外には、娯楽として消化不良の元という感想をもつのは、次の
『かけおちる』
を読んでからにしようと思う。
本作に限って言えば、娯楽として消化不良の元。
戦乱の時代に七転八倒、母からは千尋の谷に突き落とされ、妻7人とのあれやこれやを活写した『陸じゃ生きてけない女傑の息子に生まれましたが、中国皇帝を目指すことになりました』だったらよかったなぁ!
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明から清にかけての中国と海賊の話。
中華と夷。親と子。
実話がベースと知り、エンターテイメントとして成立させた腕に感服。