こんな本を待ってました!
2021/09/01 16:47
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投稿者:タンジェリン - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本を読んだ後に再びサリンジャーを読み返せば、新しい発見が止まらず、さらに深く読む事が出来る。サリンジャーの作品はこんなにも一貫性があったんだ、と目から鱗が落ちた。
大きな衝撃を受けた読後感だったけれど、私のサリンジャーの作品に対する想いには変化がなく、その神秘性や、言葉では言い表せない優しさのようなものをさらに深めることが出来た。
「それを言っちゃぁお終いよ」(=そこまで丁寧に解説してくれちゃおしまいよ)と、きっとサリンジャーも空の何処かでこの本を手に苦笑いしていると思う。
サリンジャーの切実な姿
2022/09/28 14:13
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
『謎とき『ハックルベリー・フィンの冒険』』がフーダニットなら、本書はほとんどの読者が自殺と信じて疑わないシーモア・グラスの死の真相を探るハウダニットといったところか。狭義のミステリー的読解を期待するとやや肩透かしかもしれないが、サリンジャーという作家の切実さに迫るものとなっている。
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
この小説を完読したら、直ぐにナインストリーズを、再読して欲しいです。かく言う自分も、そうしたらこの小説の深さ、が理解できました……気になるのは翻訳口調の文章。仕方ないですが、マイナス要因
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小説を読むとはこんなにもスリリングな体験だったのか!、という思いを与えてくれる驚愕の書。ただでさえ謎が多い作家、サリンジャーの傑作「バナナフィッシュにうってつけの日」を主軸に、グラス家の謎、そしてサリンジャー自体の謎に迫る文学評論。
短編集『ナイン・ストーリーズ』の冒頭を飾る「バナナフィッシュにうってつけの日」では、グラス家の長男でシーモアが動機不明の拳銃自殺を遂げる。この長男の自殺は残る兄妹たちに大きな影を投げかけ、続く『フラニーとゾーイ』などの様々な作品を貫く1つのモチーフとなっている。
しかし、本当にシーモアは自殺だったのか?、という問から本書は始まる。この謎を解き明かすために本書では徹底的に緻密なテキスト読解が行われていく。本書のスリリングさとは、非常に高いレベルでのテキスト読解という文学批評そのものが、1つの謎を解き明かすというエンタメ的な”謎とき”の面白さを包含している点にある。
京大文学部の名誉教授でありアメリカ文学の巨匠、若島先生も帯で「興奮した」というコメントを寄せているが、もうその通り。スリリングすぎて頭がクラクラする驚愕の一冊。
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面白かった〜!これくらい読み込めたら、楽しいよね。言われてみれば、なるほどそうだよねそうだよね、と思うし、新たな疑問も湧いたり、確認したくなったり。
”読みきれない”読みの楽しさよ!
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ここまで読み込んでいく姿勢がすごい。原作を読み直しながらこの本を読み返す必要がある。この本自体がミステリー。
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こんな切り口で本を読み解く。思いもかけなかった世界へと連れて行ってくれた。
最後の拳銃の一発が禅の公案、拍手の真理へと繋がり、ビー玉遊びやビリヤードと玉の触れ合う(meet)ことへの固執に昇華する。
奥深い世界で、面白かった。
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作品が発表された順番だったり、17年間の空白なども読み解きの鍵になってる。
ドラえもんに連れられて、タイムマシンで冒険してるような気持ちになった。
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推理小説のように「誰なのか」がわかるわけではない。ただ、文学にはそういう世界の構築ができるわけで、こういう読み方も理解はできる。というか、そういう、言わば日常にへばりついた常識に囚われすぎた理解の基準を変えていくべきなんだろうな。明快にすっきりわかる、というより、そうした深い理解を要求していく一冊。サリンジャーに興味がなくても、文学に興味のある人なら面白く読めると思う。
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すんごい読み解き!
ナインストーリーズ何度も読んでるのに、こんなたくさんの記号が隠されていたなんて!
ちょうど今年はハプワーズを読んで、なんなんだこれは?と思ってたとこだったけど、
あの作品も今作を読んでみると納得できた。
しかし、すごい!
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読む前は帯の言葉が大げさに見えたけれど、読めば確かにその通りと思った。そんな解釈はありなのか?と初めは思ったものの、グラースサーガだけでなく、ほかの作品にも散りばめられているサインを丁寧に集めて示されれば、これもありかと納得できる。とてもおもしろかったし、サリンジャーを再読して自分でも確かめたくなった。
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サリンジャーの小説が好きで、一通り読んでいると言う人なら絶対ハマる! 読むのが止まらずついつい夜更かししてしまう本。テキスト分析のすごさに圧倒される。
サリンジャーは「ライ麦」が超有名だけど、残念ながらそれしか読んでないという人には何を言ってるのかわかんないかも。そのため、誰にでもおススメ!というわけにはいかないんだけど。いや、でも、超おススメ。
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”そうなのだ”と言われたので、”そうなのか”と思ってしまいました
何はともあれ謎解きがシンプルに楽しかった
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途中鳥肌がたった。17年に渡って、しかも時間を遡って書かれたグラスサーガの大いなる仕掛けに。
そして何度も読んだ『ライ麦』のラストシーンの解釈に、泣きそうになった。
サリンジャーすごい。でも竹内先生の謎ときが本当にすごい。
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『ナイン・ストーリーズ』の巻頭を飾る短篇「バナナフィッシュにうってつけの日」は、『ライ麦畑でつかまえて』についで有名なサリンジャー作品だろう。そのラストシーンは主人公の謎めいた死で終わる。これは普通、自殺と解釈される。だが、もし自殺ではなかったとしたら?
たしかに注意深く読んでみると、途中から一人称が固有名詞ではなくなり、若い男(野崎訳では「青年」)となっている。もしサリンジャーが意図的にそのように書いたのだとすれば、死んだのは誰なのか。自殺ではなく他殺なのか。だとすれば、誰が誰を殺したのか。ここから著者の壮大な旅が始まる。
本書はあまり一般向けとは言いがたい。本というより論文である。主題そのものは「バナナフィッシュ」だが、その解読にあたっては、サリンジャーのほぼ全作品を射程としている。私も読んだことのない、あまり馴染みのないものも含まれる。しかし、それなら読みづらいかというと、そうではない。
正直に吐露すると、私は本書の主張がどこまで妥当か、明確には判断できない。同意できる部分もありつつ、少々穿ち過ぎではないかと思うところもある。もし穿ち過ぎでないとすれば、それは作者サリンジャーが入念に、とても用意周到に、そうとしか読めないように、単語をひとつひとつ選んで書いていることになる。サリンジャーはたしかにそういう作家だが、それにしてもこの「事件」は証拠がとにかく多すぎる。
かつて柳瀬尚紀氏が『ユリシーズ』における自身の見解をジョイスの遺族に手紙で送ったところ、一笑に付されたという。本書の主張を世界中のサリンジャーの読者、研究者はどのように受け止めるだろうか。頭がおかしいと思うだろうか。私にはわからない。頭がおかしいのは一体誰なのか。