荒涼館 四
荒涼館 4 (岩波文庫)
商品説明
「荒涼館からどんどんひとがいなくなるね」──エイダとリチャードが去った屋敷を守るエスター.彼女を殺人事件捜査のため深夜連れ出すバケット警部.ジャーンダイス裁判も終末が近づき,二つの視点で交互に語られた物語はついに大団円となる.レトリックを駆使し,ユーモアと批判を込め,英国社会全体を描くディケンズ芸術の頂点.(全四冊完結)
目次
- 凡例
- 第三巻のあらすじ
- 主な登場人物
- 地図
- 第五十章 エスターの物語
- 第五十一章 とけた謎
- 第五十二章 頑固者
- 第五十三章 捜査
- 第五十四章 爆裂
- 第五十五章 逃避行
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紙の本
社会風刺と謎解きに満ち、幸せの象徴を見出せる傑作小説
2024/03/30 21:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:永遠のチャレンジャー - この投稿者のレビュー一覧を見る
大都会ロンドンの虚栄を描かせたらディケンズに比肩し得る者はいない。名物の「霧」と「闇」が昼夜を問わず「真実」を覆い隠そうとしても、速記記者上がりのこの作家の眼を晦ますことは出来ない。
借財を抱えた父親が負債者監獄入りし、ディケンズ少年は靴墨工場で単純労働に従事する憂き目に遭う。落ちぶれ体験が、社会の制度悪や人間行動の裏表を嗅ぎ分ける鋭い観察眼と批判精神を育んだ。
寄る辺なき「孤児」を作品の主人公や脇役に据えるのも、一家離散に瀕したディケンズが抱えたトラウマ(外傷体験)を反映している気がする。欺瞞と腐敗、矛盾や怠慢、貧困に虐待、冷笑そして無関心…。
本作で浮浪児ジョーの唱える「主の祈り」が途絶えたとき、国王陛下、上下両院議員、教会聖職者に向けて「臣民の一人」「同胞の一人」「一人のキリスト教徒」が臨終を迎えたことを慟哭し、作家は「こうして毎日人が死んでゆく」のだと訴える。
本作には謎解き要素も満載だ。弁護士殺害事件の容疑者は三人。探偵役のバケット警部は元騎兵の男を逮捕し、貴婦人と元メイドの女を泳がせる。そして驚くべき仕掛けで真犯人を炙り出す。失踪貴婦人の探索は周到な追跡網を尻目に空しく「時間」だけが過ぎゆく。
悪名高き「ジャーンダイス訴訟」にとうとう大法官裁判所の審判が下る。エスターの親友エイダとリチャードの運命や如何に。虐げられた登場人物たちに、試練に見合うだけの「幸せ」が訪れますように…。読者の願いに、作者が渾身で応えた。
後見人の庇護と愛情に導かれた主人公エスターは美貌を失う病の後も、両親の非業の死を克服し、善き人となるべく心映え(良心)を決して失わなかった「ご褒美」として最愛のウッドコート医師の伴侶となる。古い屋敷ではなく新たな「荒涼館」の女主人に収まったのだ。
「家なき子」のエスターが、ついに彼女自身の「家」(家庭、家族)を手に入れた!
長く住めば住むほどその価値が高まるというお国柄の英国人の家は、まさに「城」であり、「人生の拠り所」となる幸せの象徴だと知った。
紙の本
ビクトリア朝時代を代表するイギリスの小説家ディケンズの当時の社会や政治を垣間見れる興味深い小説です!
2020/05/02 11:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、ビクトリア朝時代を代表するイギリスの小説家チャールズ・ジョン・ハファム・ディケンズによって1853年に著された長編小説です。ディケンズは、主に下層階級を主人公とし弱者の視点で社会を諷刺した作品を多く発表したことで知られますが、同書も、ビクトリア朝の腐敗した訴訟制度や倒錯した慈善事業、ひいては社会全体を批判的に描いた作品となっています。またある読者によれば、探偵小説の一面もあるとも言われています。岩波文庫からは4巻シリーズで刊行されており、同書は、その最終巻です。ぜひ、1巻から3巻とともにお読みください。