慎重に扱うべきものでもある
2023/01/25 13:24
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
外国人がイメージするアメリカ合衆国とは違うアメリカを描き出す自伝。構造的に生み出され続ける白人貧困層の生活がわかるが、著者によるバイアスも強く働いてもいるので、あくまで情報の一端として慎重に扱うべきものでもある。
ラストベルトと言われる地域に住む人々
2024/07/30 05:21
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投稿者:チップ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヒルビリー(田舎者)レッドネック(首筋が赤く日焼けした白人労働者)ホワイトトラッシュ(白いゴミ)と呼ばれる階層出身の著者が自身の体験を書いた本
日本にいると肌感覚で理解できない部分が多い。
その理解できない部分がアメリカの分断の深層なのだと思う
トランプかハリスかどちらが勝利するにしてもアメリカの分断問題は避けて通れない大問題だと思う
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光文社から新たに創刊された文庫レーベルの第一弾ということもあり、購入、読んでみた。
タイトルの”ヒルビリー“とは、田舎者という意味だそうだが、作者は自らの出自を、スコッツ=アイリッシュの家系に属する労働者階層の一員として働く白人アメリカ人であり、また彼らが移住し住み着いたグレーター・アパラチアの地理的環境(著者の一族はケンタッキー州東部出身)が生活文化に及ぼす影響の重要性を強調する。
この地域はトランプ旋風の時期に、"ラストベルト“としてとみに有名になった。かつて炭鉱や鉄鋼業などで栄えた地域が荒廃し、明日への希望もなく、アルコールや薬物依存となる者も多い、そんな地域。
本書は、そのような地域に生を受けた著者が、厳しい家族環境の中で暮らした幼少期から社会的に成功するまでの人生を振り返った回想録であるが、自らが育った家族の歴史や家庭の様子が実にリアルに描かれている。
実の父親とは幼少のうちに別れてしまい、母親は付き合う男性を次々に変え、遂には薬物中毒になってしまう、いわゆるネグレクト状態。著者が何とか心身の安定を保てたのには祖母がいて、愛情を注いでくれたからだった。
そして、本書を魅力あるものにしているのは、一個人のサクセスストーリーに止まらず、現在のヒルビリーに典型的に見られる、地域の衰退や住民の生活の荒廃について、広くアメリカ社会全体の中での問題として捉え、人々がどうしたら向上心を持ち、幸せになり得るのかを、常に念頭に置き、考えているところにあると思う。
抽象的な問題としてではなく、かけがえのない一人ひとりの人生の問題として考えさせられる、読み応えのある一冊。
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1984年にアメリカの白人労働者階層として生まれた著者が半生を綴った回想記。著者のバックグラウンドとなる生前の家族史にも触れる。労働者階層を抜け出すことに成功し、アメリカ国内で分断された二つの世界を知るにいたった著者が、現代アメリカの白人貧困層の問題を考察する。「ヒルビリー(田舎者)」は白人労働者階層の謂いの一種で、類語として「レッドネック(首すじが赤く日焼けした白人労働者)」「ホワイト・トラッシュ(白いゴミ)」がある。本文約420ページ。文庫版独自の要素はない。
全15章にわたって時間軸に沿って家族関係中心に著者の人生を振り返る。第1章は著者の祖父母のルーツであり著者にとっても思い入れのある土地である、ケンタッキー州南東部の炭田地域にあるジャクソンの紹介に始まる。そして、あまりにも早い妊娠のためにジャクソンを逃れた祖父母がたどりつき所帯をもったミドルタウンは著者とその母が住む町であり、本書の主要な舞台となる。
ラストベルト(さびついた工業地帯)に位置する著者が育ったミドルタウンは工業衰退の影響も大きく、荒んだ環境にある。著者がとくに振り回されたのは、次々と夫やボーイフレンドを取り替え、薬物依存におちいる母親であり、不安とともに成長期を過ごす。ただし著者にとって幸運だったのは、彼を愛して貧しいながらも労働者階層から抜け出すための手助けを惜しまない強烈なキャラクターの祖母や、優しくしっかり者の姉があったことだった。本書の三分の二ほどまでは、複雑な家庭環境に翻弄されて一時は学校生活からのリタイアの危機にもあった著者が、祖母の助力もあって高校を卒業するまでを振り返る。
その後、学費免除の目的も兼ね、思うところあって入隊した海兵隊での4年間によって自信をつけた著者が、大学生活を経て、さらにはほとんどの入学者が富裕層で占められる名門法科大学院に入学し、労働者階層からの脱却を果たして「アメリカンドリーム」を実現するまでを描く。第11章の大学入学以降は、白人労働者階層以外の世界を体験した著者が見た、同じアメリカ国内でも文化的にはっきりと分断された、貧困層と中流層以上の世界の格差や、政治について考察するエッセイとしての記述が増えていく。とくにエリートが集う法科大学院在学中に著者が受けるカルチャー・ショックの数々は印象的で、私自身のアメリカ人のイメージが富裕層や中流層寄りであることにも改めて気づかされる。
現代アメリカを舞台にした私小説的な面と、その背景となっている社会を分析する要素をあわせもつ著作として読むことができた。著者自身の人生経験や、所々で紹介される社会学的なデータから、環境が人に与える影響の大きさがありありと浮かぶ。ふたつの世界を経験したことで、著者による現代のアメリカ社会への思いも一面的ではなく複雑だ。そこには、貧困層の実情を知らずに政策を実行する権力者たちの無理解への批判と、怠惰に生活保護受給費で暮らすことに慣れきった一部の住民たちへの嘆きが混在する。そして、白人貧困層への画一的な解決策の存在については、もっとも明確に否定される。
「多くの生���にとって本当の問題は家庭内で起こっている(あるいは起こっていない)ことにある、という事実を認識しなければならない」
白人労働者階層が抱くリベラル派への反感や、巻末の解説で補足されるトランプ元大統領への共感については、本書が啓発するポイントとして特徴的だ。弱者救済を掲げながらも、知らず知らずのうちに表れる上から目線で独善的な姿勢への密かな反発は、アメリカや政治といった枠に限らないとも思える。
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なぜトランプ大統領のような人が大統領になれたのか、今でも人気があるのか不可解だったが、この本を読んで腹落ちした。プアホワイトが這い上がれないのは彼ら自身に問題があるというのが筆者の主張で、世界一の経済大国である米国で、仕事をサボって怒られるとキレてやめる、きちんと働くことが大事だということがわからない、という人々が一定数いるということに衝撃を受けた。そして、その結果貧困に陥ってもそれは他人のせい、外国人労働者が彼らの職を奪っていることや、政府の無策の結果、と考えるため、負のループから抜け出せない。かつては教会が勤労の大事さなどを教える役割を果たしていたがそれが少なくなったことや、周りにお手本になる大人がいないことで、貧困が再生産される。給付金をいくら渡してもこれでは問題は解決しないだろう。
日本でも、同じような貧困家庭が増えているのではないだろうか。こうした格差拡大は、社会の不安定化などの歪みとなる。貧困家庭に生まれても、教育や進学の機会が保証される仕組みが必要と考える。
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アメリカの取り残された人々の実態。自分が悪い境遇にいるのは他人や政府のせいにする、仕事もせずに生活保護でくらす、正しいことがわかっていてもそれを行えない等々、とても衝撃的。日本もこうなるのか、あるいはもうなっているか?こういう人がアメリカにはたくさんいて、陰謀論とか信じてしまって、トランプとかに流されてしまう。
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増える貧困層への支援と現状
米国の貧困層で生きる人々は黒人のみならず白人も多く、仕事がなく薬物依存者となり、家族・育児放棄も増えている、と言う。日本でも親の育児放棄など「個人主義」が旺盛となり親のわがままがそのまま家庭を崩壊させている。そんな中で子供に必須なのが「教育」であり「家族の安定」であるということだ。貧困な子供への支援団体(クリスマスプレゼント=生活用品)を寄付するは中々良いアイデアだ。日本も今後こういった貧困生活者が増えることは間違いなく、一層「個人破綻」して国から援助(年金より良い生活ができる)を受けた方がいい人が増えるのは目に見えている。
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最近、貧困や格差、そして分断が社会問題として語られることが増えてきた感じがするのですが、その根底にあるものが少し透けて見える一冊です。
この本は白人労働者階層出身のアメリカ人の著者が2016年に発表した回想録。離婚を繰り返すシングルマザーの母に悩まされ続けてきた著者が、祖母との生活の中で精神の安定を取り戻し、海兵隊から弁護士になるまでを、社会の問題点とともに綴ります。
社会問題云々は置いておいて、普通にエッセイや読み物として読んでも面白かった。いわゆるアメリカの白人労働者階層の人間観、家族間、そして文化。そうしたものも新鮮だし、著者の子ども時代はかなり波瀾万丈で、こう言ってはなんだけど読み応えがあった。
離婚と再婚を繰り返し、子どもに愛情を注ぐこともあれば時に突き放し、ついにはドラッグにも手を出してしまった母親。そうした母親に対しての愛情と憎しみが混ざった複雑な心情も読まされる。
一方で世話になった祖父母に対する感謝の念や思い出を語るシーンなんかは、国は違えど共感できるところも多く感情移入しやすいのではないかと思います。
まあ、ところどころでアメリカらしいといったらなんだけど、かなり過激なエピソードもあるのだけど…… でもそれも愛すべき(?)キャラクターとして受け入れられる。
著者自身が自分はなぜ、貧困から抜け出せたのか社会学や統計のデータから考察している章もあります。
産業構造の変化、あるいは高度化によってから繁栄から置いていかれた労働者たち。保守的で自分たちの家族や仲間しか信頼できない人々は、人種が多様化し様々な人の権利が保障されていく中で、自分たちが置いていかれていると感じてしまう。
そして生まれた諦めや閉塞感、政治不信。
トランプ大統領につながるアメリカの分断。その根っこにあるものの一部が、ここから読み取れるように思います。
産業構造の変化について行けなかった人たちは、寂れた地元で低賃金の職に就くことしかできない。すると教育の格差も生まれ、子どもたちがそこから脱出しようにも、周りにモデルケースになる大人もおらず、結局格差が固定化されていく。
著者自身は祖母のおかげで、勉強の大切さを忘れなかったことでチャンスをつかみ、その後、海兵隊やロースクールで自分と階層の違う人たちのつながることができ、貧困層から脱出できたと語っています。
こうやって見ると、単にお金の支援だけでなく、教育の機会、健全な人間関係や家庭環境、地域や地元の環境など、多くの複合的な問題が、今の格差や分断につながっていることが分かる。
書かれているのはアメリカの白人労働者層の話だけど、今の日本の問題につながる部分も多くあるようにも思いました。こうした下からの声が届く社会であってほしいものだとつくづく思います。
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ヒルビリーという単語がそもそもわかっていませんでした。
よく使う英辞郎というウェッブ辞書を見ると、「山岳住民」「田舎者」とあります。私は後者の意味でぼんやり覚えていましたが、本作の内容からより正確には、アイルランド・スコットランド系のアパラチア山脈付近に定住する白人労働者階級、という階層の方々ということで理解しました。
では本作はそうした階層へのエレジー(哀歌)とは何かというと、この階層の悲惨さややるせなさ、貧困や無気力のスパイラルについて描いているものです。実際には本作は、筆者のサクセスストーリーといってもよいでしょう。ただし、それは厳しい環境から奇跡的に起きたものであり、何とか這い上がれた自分とほかの周囲との違いがほとんどないこと、そしてまた自己の周囲にある悲惨がまた繰り返されることも暗示しているようでもあります。
・・・
印象的だったのは、それまでに筆者が知らなかった『(海兵隊員としての、大学生としての、イエール在学生としての)あたりまえ』を教えてあげる人・コネクションがヒルビリーには圧倒的にかけているという事実です。
ちなみに『あたりまえ』は『面接のときは海兵隊のアーミーパンツでいかない』というごくごく初歩的なことも含みます。
繰り返される養父の変更(母親の結婚離婚)やそれに伴う引っ越し等、落ち着かない家庭環境にあり勉学などやる気もなかったところから、祖父母の絶えざる慈愛をうけて何とか高校を卒業し、その後海兵隊へ入隊、除隊後はオハイオ州立大学へ進学、その後イェールの法科大学院を卒業したという筆者。とりわけイェールでの学業・就職活動ではコネクションによる情報提供やメンタリングがあるものの、本人は全くそうした社会的資本を持っていなかった為に非常に苦労したと語っています。
この社会的資本やコネクションの欠落は、ヒルビリーである筆者や、ヤク中になったり貧困にあえいでいた友人たちにも同様のことが言えます。どのように這い上がればよいかを伝えるコネが圧倒的にかけているのだと思います。というのも、少しでも上層に上がれる余裕がある人は、まずは引っ越しをしてその地域を離れてしまうからです。
・・・
では色々知っている人がいればそれで事足りるかというと、それもまた違います。過酷な環境にいる子供たちを鼓舞する・守る大人が必要なのです。
本作ではその役目は祖父母でありました。でもこれは政府のお金云々ではどうにもなりません。『愛をもって家庭を守ろう』などとたわごとを言っても個人主義の昨今、響くものでもありません。
ましてや成人年齢が精神年齢ではないことも問題をややこしくしています。
ヒルビリーではなくても、私だって結婚して子どもをもってもまだ自分が子どもだという気分が抜けませんでした。自分がやっと大人に近づいたなと感じたのはマジで最近です。つまり、子どもが子どもを育てているようなものです。だからこそいろいろな面で支えてあげる大人が必要になります。
筆者の祖父母はその点、移住・��っ越しした核家族であり、周囲の手助けのなさが家庭環境を冷たいものにし、スパイラル的にその子どもたる筆者の母に影響したと考えているようです。
ただそれだと日本はかなり核家族化していますよね。共働きが増加している昨今、日本の方親家庭は本作のようにスパイラルの入り口にいる可能性はあるかもしれません。心配です。
・・・
ということで、米国下流社会の作品でした。家族の大切さを痛感しました。
本作はトランプ大統領当選時に話題なったそうで、彼のような単純だけど響くメッセージが『ヒルビリー』受けしたということのようです。
でももしそれ程にヒルビリーの影響が大きかったとすると、そのボリュームが大きくなったことにこそ驚きがありそうです。
改めてアメリカという国の不可思議さに驚きつつ、興味が湧いた次第です。
本作、米国のエスニシティに興味があるかた、格差社会に興味がある方、等々にはおすすめできると思います。
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非常に興味深い内容だった
アメリカという国も一括りにはできないし、どんなに救おうしても救えない人もいる
最後は自分でどうするかだけど、そう思えるかも環境による
その環境もどれが正しいのかはわからない
日本でもそれは無理筋なんじゃないの?っていう政党もあるけど、あの人たちはあの人達の言葉が響く人たちに届けばいい
地方と都市、貧困層と富裕層 見えてるもの環境が違うし、入れ替わらないから分断が起きている
アメリカも一枚岩じゃないし、社会福祉も無限じゃない中でどこまでの人を助けるべきかね
助けないことによる暴動もすごそうだしな
中々、衝撃的な内容でした。主人公の生活が生々しいので感情移入も出来るし、ドキュメンタリーとしても楽しめる
不思議な本だった
ここからは
中身のメモと言うよりは、感じたことのメモに近い
4章からが面白かった
スコッツ=アイリッシュの話
アメリカにいる白人の労働者階級
あとからの移民なのと血気盛んな人が多かったから警察、消防とかの危険な仕事や工場勤務とかが多い
街の荒廃の進み方、貧困者たちの生活を見る本
消費者(労働者)がいないところは、経済が回らないので荒れていく
そこに大きな労働者が抱えられる製造業があると街が潤う。しかし、それがなくなれば、消費者(労働者)がいなくなる
家を持っているとそのコストが払える人が出ていく
残るのは、家という借金を持っている人になるし、その人たちは借金で首が回らない貧困の人たち
大きな製造業が衰退を迎えたときが街の終わり
特に今は、その場にいる人を雇う工場が人件費の安い海外に行ったりする
そこでそこそこな暮らしをした子供たちは甘やかされて育った割にブルーカラーを軽視してるけど、家族が働いてるから大丈夫だろうと当てにする
製造業には寿命があり、雇用がないのに
この辺の衰退していく街は日本でもこれから大きく始まると思っている
そして、家から出れない人たちが、苦しんでいく
勉強することがホワイトカラーへの道だが、それへの道を知らないから教育に力を注がない
何もせず抜群に出来る人だけが、できると思っている
→そういった経験がないからみたい
教会に行く人は幸福度が高いというデータがある
行けるような人が幸福なのかの解明は難しいけど、協会に行くからだという意見もある
→教会に行くことで生活習慣が整うし、悩みも共有してコミュニティを教えてくれたり、そういう周りとの共感で良くなるのかも
所属は面倒だけど、心を安定させるもの
学校は狼を羊にする機関ではないし、無理
狼として、家庭で育てられた子どもたちを聞き分けよくするのは無理
だから、荒れた学校に行かない選択(金があること、家で教育されていること)がサイクルから抜け出すために重要になる
家族でもなんでも良いけど、自分のいるコミュニティが安定しているかは子供にとって重要というか全てかも
主人公は祖父母か姉���役割を握ってたのに、そこから離れて不安定になる
でも、祖母の迷惑をかけたくないというジレンマ
貧乏もどこかに線引があって、その線の近くにいるけど政府の保護を受けない人たちが一番苦しい
政府の援助を受ければ生きられるなら、働かなくとも生きていける
(コスパいいというやつ)
自ら薬物中毒とかになっても救われるならそっちがいいのかというリアルさを感じる
第9章の後半からまとめに入る
貧困が続くには合理的でない人達の生活がある
短期的な快楽に埋もれている。その中でも慎ましく生きている人もいるけど、割合は減っていく
学習性無気力や自分への過小評価を拭い去ることのできた海兵隊
努力不足を能力不足と考えない
キツいものを乗り越えることで能力が向上し、お金の教育含め、生活の指導が入ったことで今まで知らなかった生活力が上がっていく
集団での共有された信念が一人ひとりの行動に大きな影響を与えている
白人労働者階級は国を、社会制度を信用できていない
→アメリカンドリームで這い上がれないじゃないかという感覚
半分は自身が怠けていることもあるが、努力できる環境がないことと制度があることに気づくこともできないし、無駄だと思っている
現に周りは落ちぶれていて、客観的に見て厳しいと感じている
だから、批判の目を自身に向けられない
そして、助けてくれない政府が悪いと考える 敗者であることは自分の責任ではなく、政府のせいだと刷り込まれていくことで努力すら出来なくなってくる
これはアメリカの中でも異常な状態でアフリカ系やラテン系の移民よりも圧倒的にそういう人達が多いというデータもある
13章
社会関係資本の違いに驚く、関係があることは幸運で、幸運は優秀さを上回る
それ以外にも親に聞けばわかることを教えてくれる人がいるかは大きい
この本ではないけど、児童相談所とか出身の人は就職するときの何気ないアドバイスを貰う人がいないのが大きな負担になるらしい
たしかに、大人の社会と子どもの社会はルールが違うので、困ったときの相談相手って大事だよな
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この人たちの思考、主張が矛盾に満ちていることが確認できた。
とても慎重に書いている感じ。
一方的な糾弾でなくてよかった。
「努力の不足を能力の不足のせいにしてはならない」
この人がトランプ派議員になったと知って驚いた。
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いい本でした。白人労働者階級と言う一定層がどんな生活をしてどんな問題があるのか自分の陥ってた状況を客観視していてあぶり出している。
このヒルビリーがトランプ支持者層のラストベルトと言われた地域の白人のパワーが票となってアメリカを動かして行くとしたら日本も真剣に色々と考えて行った方がいいと思った。
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なにかと騒がしいアメリカ今期大統領選、共和党トランプ大統領候補が副大統領候補にJ.D.ヴァンス氏を指名した、とあり著書を読んでみた。
ヴァンス氏は1984.8.4生まれ。2016に発表で執筆時31才。自身の生い立ちと曾祖父母からの流れを記す。冒頭に「ヒルビリー生活に終止符を打ってくれた祖母と、祖父に本書を捧げる」とある。この賛辞が本書の内容を表し、ヴァンス氏の現在の心境を物語っている、と読み終えたあとは実感を持って感じる。
発表当時、ラストベルトの生活を綴った本としてベストセラーになったようだが、確かに親類縁者との絆と土地のかもしだす雰囲気、自身の生い立ちは、現在のヴァンス氏の背景を知る上でとても興味深い。
さらに前書きには、(2016の)自分は上院議員でもなければ、州知事でも、政府機関の元長官でもない。また大会社の創業者でもなければ、世の中を変える非営利団体を立ち上げたわけでもない。(自分は)やりがいのある仕事に就き、幸せな結婚をして、家と犬二匹を飼っている、それだけの人間だ、とある。・・それが副大統領候補である。
次々に代わる「父親候補」、次第に薬物に依存する母親、ついに高校2年(10年生)になり祖母のもとで暮らし、初めて安定した生活環境を得て、学業にも身が入るように。大学へは行くつもりだったが、従妹の勧めで海兵隊に4年いけば復員兵援護法で学費も払える、ということで、海兵隊ののち地元のオハイオ州立大学、そしてイェール大学のロースクールへ。そこで出会った同級生と結婚、とここまでが描かれる。
なぜがんばれたのか、それは高校でいい先生にも恵まれたが、なんといっても、祖母の家で「幸せだった」からだという。母親の色恋沙汰で翌月はどこに住んでいるかわからない、ということが無くなったからだという。
「ヒルビリー生活に終止符」とあるが、ヴァンス氏の曽祖父母はアパラチア山脈麓の丘陵地帯ケンタッキー州ジャクソンに住み、自らを「ヒルビリー」と呼んでいる。先祖はスコッツ=アイリッシュでアイルランド北東部のアルスター地方出身。祖父母は1947年、祖母が若すぎる妊娠をして隣のオハイオ州ミドルタウンに移り住み17才と14才で結婚。なので、ヴァンス氏にとってのケンタッキー州ジャクソンは年に1度か2度、祖父母と母と共に里帰りした、祖母の兄弟のたくさん住む心の故郷のようなものらしい。ジャクソンでは47年当時、多くの男は近くの炭鉱で働き、そこから出た祖父はミドルタウンに来てアーコムという大手鉄鋼会社に職を得た。そしてヴァンス氏のいうところでは、一族でケンタッキー州ジャクソンに留まった者より、そこから出て行った者の方が経済的にはいい暮らしをしているという。
高校まで暮らしたミドルタウンでも医者や弁護士など、町でもいい暮らしをしている人はいたが、自分の育った環境とはどうも違う環境の者がいる、というのはイェール大のロースクールに入ってからだったようだ。イェール大ロースクールでは州立大学出身はほとんどおらず、多くは名門私立大学出身だったといい、家に招かれても、そこには穏やかな雰囲気が流れてい���、自身の育った喧嘩と暴力の絶えない家庭、というのは無かった、それがカルチャーショックだったようだ。
安定した父親不在で育ったヴァンス氏にとっては大叔父叔母たち、そして母の兄と妹、そして自身の姉と、親類縁者の存在と絆を強く感じているようだ。
「ラストベルト」という言葉が出てくるが、冒頭にその地図があり、五大湖の南3つの、ミシガン湖、エリー湖、オンタリオ湖、に臨む、ウィスコンシン州東部、イリノイ州東部、ミシガン州南部、インディアナ州北部、オハイオ州全部、ペンシルベニア州西部、ニューヨーク州西部があてはまる。・・ということが分かった。今までは言葉だけでよく分かっていなかった。
2016発表
2017.3.20初版第1刷 図書館
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2024年7月に感想を書いています。今年はアメリカ大統領選挙の年です。現職大統領を擁する民主党は現職大統領であるバイデンさんを党の代表に決め、共和党は前大統領であったトランプさんを党の代表に決めました。民主党では、バイデンさんのテレビ討論での失敗や、公式の場での失言が重なり、選挙戦からの撤退を表明し、現副大統領のハリスさんを党代表に掲げるようです。
前置きが長くなりましたが、共和党党大会でトランプさんが副大統領候補として選んだのが、J.D.ヴァンスさんでした。どんな人物なのかを知りたくて、日本でもノンフィクションとして話題にもなっていた『ヒルビリー・エレジー』の著者だったので、本書を手にしました。アメリカの貧困層の生活を詳らかに活字にした回想録です。回想録と言うと、活躍した人物が引退後に出版するものというイメージがありますが、著者が31歳の時に書いたものです。子供時代、本当に悲惨な現実が毎日の繰り返しになっていることが語られます。毎年のように父親が変わり、その度に引越しを繰り返す。薬物依存症でもある母親との関係や、暴力が日常的な家庭で過ごすことがどんなものかがわかります。
家とは、帰ってくる場所であり、安心、安全な場所ではなく、学校が終わってもできるだけ家に戻りたくないと思うほど、親同士の喧嘩や母親からの暴力があったようです。姉のリンジーさんと祖母のボニーさんが彼の味方になってくれる人たちです。
そんな中であるタイミングで祖母とともに暮らすようになり、著者の環境が落ち着きだします。貧困が世代を超えて繰り返し生み出される社会の実態を日常生活の積み重ねで語りかけてくるのが本書です。
その後、海兵隊に入隊〜除隊、オハイオ州立大学を卒業後イエール大学ロースクールに入学・卒業します。映画も制作されています。NETFLIXで昨晩見ました。書籍は時系列に語られていますが、映画はまた違ったアプローチがされていて見応えもありました。どちらもお勧めです。
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トランプの支持基盤となるアメリカ白人労働階級層。彼らの多くはアパラチア山脈付近のオハイオ州、ウェストバージニア、ケンタッキー、アラバマ、ジョージア、インディアナ、テネシーと言った地区や、ラストベルトの付近に居住しながら、退廃的で暴力的な文化慣習を維持しながら保守的で日和見的な生活を営んでいる。トランプ大統領に副大統領候補として指名されたJ.D.ヴァンズは、この地区で不安定な家庭環境のもとに育ち、努力を否定する街から、エリート街道へ突き進んできた。そこで伝えることは、華々しい出世ストーリーではなく、社会や家庭環境、周囲の人間の思想がいかに人間を規定するかである。筆者が恵まれた環境に成し上がってきたのは、ひとえに周囲の人間のサポートであり、アメリカ社会のリアルを伝える作品。こう言った社会分断、貧困などの問題は決してアメリカだけの話ではなく、日本でも明確にみられる現象である。あなたの周りの人で恵まれている人、上手くいっていない人、いつも不満を言いながら、低賃金で働く人、彼らがどうしてその状況に至ったかを周囲の環境、地域、政治などの観点から考えてみる良い機会だろう。