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ひきこもりはなぜ「治る」のか? ―精神分析的アプローチ―
著者 斎藤環
「ひきこもり」研究の第一人者である著者が、ラカン、コフート、クライン、ビオンの精神分析理論をわかりやすく紹介し、ひきこもる人の精神病理を読み解くとともに、家族の具体的な対...
ひきこもりはなぜ「治る」のか? ―精神分析的アプローチ―
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ひきこもりはなぜ「治る」のか? 精神分析的アプローチ (シリーズCura)
商品説明
「ひきこもり」研究の第一人者である著者が、ラカン、コフート、クライン、ビオンの精神分析理論をわかりやすく紹介し、ひきこもる人の精神病理を読み解くとともに、家族の具体的な対応法について解説。ひきこもりとニートの違いなど、「ひきこもり」の現在が解き明かされる。 ――以下、本文“はじめに”より『なぜ「治る」のか?』という、ちょっと奇妙なタイトルには、いろいろな意味が込められています、その一つは、「必ずしも病気とはいえないひきこもりを治療するとはどういうことか?」という問いかけです。そう、ひきこもりは、それだけでは病気ではありません。だからこそ、社会参加に際しては、さまざまな支援や対策が有効であり得ます。しかし、ひきこもりは治療によって「治る」こともある。ならばその過程は、精神医学的に、というよりは精神分析的に、どう理解することができるのか。…」
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紙の本
斎藤環氏にはいろいろと思うこともあるのだが、この本だけは教えられることが多かった
2011/10/10 21:43
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ひきこもり」の問題に少なからず関わっている身でありながら、常に引っかかっていることがあった。それは「ひきこもり」が精神医学の問題なのかどうかということだ。
もちろん、「ひきこもり」の中に少なからず精神障害を背景としているものもあるし、「ひきこもり」が続くことで二次的精神障害を生じるものもあり、その点に関しては精神医学が資するところは大いにあると思う。ものの報告によれば、「ひきこもり」の大半に何らかの精神障害の診断がつくとも言う。だが、その一方で、現在の精神医学的診断がどうしてもつかない「ひきこもり」もあるという。
そこで考えてしまうのだ。「ひきこもり」は精神医学的問題なのか?
一般的には「ひきこもり」の第一人者とみなされている斎藤環のこの本は、私のこの疑問に答えてくれる内容だった。
著者自身が、
「今までの私の著書や講演は、もっぱら具体的な方法論を中心としたものばかりでした。もちろん、それはそれでわかりやすく実践的であるとの評価をいただいたこともあります。しかし本来なら、まず理論があって、その応用としての実践があるというのが、物事の順番であるはずです」(はじめに)
と述べているように、「ひきこもりの支援や治療のあり方について、主に理論的な面から解説」することをもっぱらとしている。そして、著者がその理論の基盤としているのが精神分析学だ。その中でもラカン、コフート、クライン、ビオンに準拠しながら「ひきこもり」を解説している。いずれも(細かい理論の内容は異なるところも多いが)自己が成長するには他者を必要とするという立場をとっているかと思うが、こここそが「ひきこもり」の問題なのだろう。それは本書のいろいろなところでも述べられている。
「ひきこもりに対しては、人間関係そのものが治療的な意味をもちます」(p.17)
「ひきこもりを脱するためには、どこかで必ず「第三者の介入」が必須であると考えています」(p.53)
「くつろげる関係性を他者ともてるかどうかということが、回復のうえで大変大きなカギを握っているのです」(p.69)
「コフートによれば、最も望ましい発達は、青年期や成人期を通じて支持的な対象が持続することです」(p.102)
もちろん「ひきこもり」は単に精神分析だけで解決できるわけではない。それでも「ひきこもり」に対してどんなところを目指して、「ひきこもり」者に対してどこに介入していくのか、そのために周囲が何をすればいいのかの指針にはなるのではないか。少なくとも私にとっては、これまでモヤモヤしていたものが晴れていき、もう少し「ひきこもり」に付き合い続けようと思わせてくれる本だった。